表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第十章 果てなき砂と星の狭間で
275/338

266話 砂漠の新しい友 - 月の影

こんにちは。

1週間休載しお待たせ致しました。

今日から再開しますので、またよろしくお願いします。



夜明け前の砂丘は、まだ冷たく、静寂が広がっていた。

砂粒の上に朝の光が届く前、風だけがひっそりと音を立てる。

遠くの砂の峰が、淡く青い夜の影を落とし、砂漠の静謐さをより深く感じさせた。


アリアは小さな焚き火に手をかざし、眠そうに目を細めた。

イリスはぽよん、と跳ねて体を丸め、淡い虹色の光を放つ。

その光は砂粒に反射して、まるで小さな星々が砂の上に散らばったかのようだった。


「……おはよう、イリス」


まだ眠そうに“ぽよん”と跳ねて応えるイリス。


『今日も一緒に、進むのだ』

モルンの念話が静かに届く。翼の影が砂の上に伸び、静かな存在感を示していた。

砂の粒が柔らかく光を反射し、夜明け前の青い空と混ざって、砂漠はまるで別世界のような神秘的な色合いに包まれている。



シュウが砂丘に腰を下ろし、ぽつりと呟いた。


「さて、今日も砂漠と友達になるか……アリア」


アリアは微笑み、軽くうなずく。

「うん、みんなで進もうね」

その声に、砂漠の静寂が少しだけ和らぐ。

遠くの砂丘が光を受けて黄金色に染まるのを眺めながら、今日の旅路を思う。

背後で風に揺れる砂丘の輪郭が、朝の光を待っているかのように静かに動いた。


砂丘の向こうから、柔らかな影がひょい、と現れた。

小さく丸まったその体は、毛並みが月光に淡く光り、鋭い瞳がこちらを見据えている。

影は一瞬だけ砂に溶け込むように揺れた。


「……何者だ?」


マコトが慎重に歩み寄る。

その瞳は警戒に光り、手元の武具に自然と意識が向く。


影はゆっくり伸び、体を大きく膨らませると、柔らかく鳴いた。


「……我は月読猫(つきよみねこ)。」


アリアは驚き、思わず息をのむ。


月読(つきよみ)……?」


聞き覚えのある神の名と同じ響きに、胸の奥がざわつく。

風に混じって、猫の毛の柔らかな香りがかすかに漂い、思わず深呼吸する。



ユリウスは目を細め、猫を観察しながら呟いた。


「魔獣…?それとも神獣か…?」


毛並みの光沢や目の鋭さ、体格のしなやかさを見て、どこか神秘的な存在を感じ取る。

体の毛の質感や目の鋭さ、雰囲気のどこか神秘的な感じに、思わず警戒と好奇心が混ざる。



プエルは無邪気に跳ねながら、猫に近づく。


「どこから来たの?しゃべる猫なの?」


純粋な疑問を口にし、顔を輝かせる。

その目には好奇心が弾け、砂粒の上に小さな足跡をつけて駆け回る。



ルクスは少し離れた位置から、冷静に観察し、低く唸る。


「……この猫は、ただの猫ではないな。イリスに似た気配がある……」


長命ゆえの感覚で、普通の生き物とは違うと直感していた。

影の揺れ方、光の受け方、体から放たれる柔らかな光の粒子まで、何もかもが神秘的に思えた。



マコトは眉をひそめ、半信半疑で訊ねる。


「そなた、何用で現れた?」


猫は軽く伸びをし、背中の毛をなびかせ、柔らかく鳴く。


『アリアのそばが居心地が良いと、本能が告げている』


アリアはその言葉に言葉を失った。

会ったこともない猫が自分の名前を知っていて、さらに“月読(つきよみ)”という名を名乗る——その不思議さに、胸が高鳴る。

目を丸くし、思わず手を胸に当てる。心臓の鼓動が砂の静けさに響いた。



「なんでアリアの名前知ってるの?」


無邪気なプエルの鋭い質問が飛ぶ。



イリスが体をくねらせ、ふわりと光を灯す。ぽよん。


「……いっしょにアリアまもる?」


アリアはにっこり微笑み、そっと問いかけた。


「月読さんも一緒に来る?」


猫はちょこんと座ったまま、ゆっくり尾を揺らし、答えるように『にゃー』と鳴いた。

その鳴き声は砂の風に乗り、仲間たちの耳に柔らかく届く。


イリスは再び体をくねらせ、光をふわりと放つ。


『……いっしょ!』



シュウが肩をすくめ、微笑む。


「まあ、面白そうだし。イリスも喜んでるし」


砂の上に座るシュウの影も、光を受けて柔らかく伸びる。



エリオットは小声で笑う。


「……ほんとに、自由気ままな猫だな」


その瞳の奥には、期待と興味が入り混じっていた。



マコトは静かにうなずき、少し口数少なめに言葉を添える。


「モルン、今日も頼むぞ」


『心得ておる』


モルンの念話が静かに響く。

翼を広げ、砂の上で軽く羽ばたくと、砂粒が柔らかく舞った。



砂漠の風が強まり、砂粒が舞う。

影の流れが、徐々に昼の光を迎えるように揺れ動いた。

仲間たちは無言で、砂の上に立ち尽くす。

それぞれの足跡が、砂の海に小さく刻まれた。


アリアは小さく呼吸を整え、仲間たちを見渡す。


「……この先も、みんなで進もうね」


イリスはぽよん、と跳ねて、光をふわりと放つ。


「アリア、ずっといっしょ!」


月読猫はその間を縫うように軽やかに歩き、時折、アリアの肩に体をもたせかけた。

その柔らかな毛並みと、軽やかな足取りが、砂漠の孤独を少し和らげる。


『この者たちと行こう……砂漠の向こうへ』


太陽が砂丘の稜線を照らす頃、影は長く伸び、砂の上に点々と影を描いた。

新たな仲間を迎え、旅は再び動き出す。

砂漠の先に待つ、古代遺跡“砂に沈んだ祈りの塔”へ——。






ーーー267話へつづく


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ