265話 オアシスの休息 - 絆と信頼のひととき
こんばんは。
今日の更新遅くなりました。
突然ですが、私占。の連載を明日(火)から26日(日)まで、1週間お休みさせていただくことになりました。
10月27日(月)から、また再開致します。
いつも応援いただきありがとうございます。
再開後もよろしくお願い致します。
夕暮れの光が砂丘を黄金色に染める頃、アリアたちはオアシスの村に到着した。緑の木々と水面が、砂漠の単調な色彩の間に鮮やかさを差し込み、旅人たちの心をほっと和ませた。疲れた体を休めるには絶好の場所だ。
アリアは焚き火のそばに腰を下ろし、イリスを膝に抱えた。イリスはぽよん、と跳ねて小さく光を放ち、「アリアまもる!」と意思表示するように揺れた。アリアは微笑みながら、その小さな体を撫でる。
「イリスも、このオアシスで少しは休めるかな」
隣ではモルンが翼をゆっくりと広げ、砂に足を深く沈めながらくつろいでいる。古代黎明種の彼の体は大きく、まだ完全に地面に伏せると小回りは利かないが、それでも風に耳を傾け、周囲の空気を感じていた。影循環の波動が少しずつ安定し、仲間に念話を直接送れるようになってから、モルンは以前よりも心配事を減らせるようになった。
「……ふぅ、砂漠の風も、少し落ち着いたな」
『気候は穏やかだが、砂嵐の予兆も残る』
「うん、でもここなら大丈夫だろう」
念話でモルンが送った声に、アリアは軽く頷いた。
シュウは焚き火の反対側で、足を組みながら雑談をしている。ラフな笑みを浮かべて、アリアに話しかけた。
「アリア、オアシスってやっぱり落ち着くな。砂漠より、こっちの方が何倍も生きてる気がする」
「うん、そうだね。少しの間でも、心を休められる場所って大事だよ」
シュウは焚き火の炎を眺めながら、しみじみと頷いた。
プエルは小さな人型の姿で、村の子供たちと遊んでいた。笑い声が砂の間に溶け込み、アリアの耳に心地よく届く。人型とはいえ小学生くらいの知能で、無邪気さをそのまま放っているプエルの存在は、仲間たちに安堵を与えていた。
ルクスは中学生くらいに見えるが、長命ゆえの知識量は膨大だ。彼は焚き火のそばで、アリアたちの荷物整理をしながら、時折、旅の途中での出来事や古代遺跡の伝承を語る。
「この辺りには昔、砂に沈んだ祈りの塔があったらしいですね。塔には祈りを形に変える装置があったとか……」
「うん、砂嵐や災害で姿を消したんだって」
モルンが念話で補足する。
『塔の力は、古代の魔力と共鳴することがある』
「それなら、私たちが調べる価値もあるってことね」
アリアは静かに目を細めた。
焚き火の炎が揺れる中、仲間たちはそれぞれの経験や過去を語り始める。
モルンは影循環を安定させる訓練の経過を話し、イリスは断片的だが自分の記憶をぽよん、と跳ねながら語った。ルクスは知識や過去の旅の記録を簡単にまとめ、シュウは自分の医療の経験や父ケイの話を交えながら笑わせる。プエルはおどけたり、質問したりして場を和ませた。
「みんな、随分成長したよね」
アリアは小声でつぶやく。旅を始めた頃に比べ、全員が互いを理解し、支え合う心を持てるようになった。
「モルン、影循環もだいぶ安定してきたみたいだな」
『うむ。風の変化にも敏感に対応できるようになった』
「さすがモルン、頼もしいね」
イリスもぽよんと跳ねて、光で応えた。
その夜、オアシスの星空の下で、焚き火の周りに集まる仲間たちは、静かに信頼と絆を確認する。風の音、砂の匂い、遠くで聞こえる水のせせらぎ。すべてが、彼らの心を落ち着かせた。
「この旅、まだまだ続くけど……」
アリアが小さく息をつくと、シュウが笑った。
「アリア、俺たちなら乗り越えられるよ」
プエルは炎を見上げて
「そうだね!」
と声を張った。
モルンは念話で静かに送る。
『皆の心、確かに感じる。共に歩む、それが力になる』
「うん、そうだね」
アリアは頷き、イリスを抱きしめる。
ぽよん、と小さく跳ねて光が揺れた。
砂漠を越えた先には、まだ見ぬ古代遺跡が待っている。だが今は、仲間と共に休む時間。疲れた体と心を癒すひとときが、この旅の先に向かう力を確かに育んでいる。
オアシスの夜は、砂漠の静けさとは違った温もりに包まれていた。焚き火の光が仲間たちの顔を照らし、遠い砂嵐や旅の不安も、少しだけ和らぐ。イリスの光が優しく夜空に溶け、モルンが翼を小さく畳む。
「明日からも、共に歩もう」
アリアの言葉に、仲間たちは静かに頷く。
――そして、このひとときが、旅の記憶に静かに刻まれた。次なる冒険の準備を、心と体に静かに整えながら。
ーーー266話へつづく
※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。
作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。
あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。




