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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第十章 果てなき砂と星の狭間で
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250話 小隊包囲突破 - 影循環の芽生え

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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 砂漠の夜明け前、空はまだ深い群青に包まれていた。

 遠く、砂丘の向こうに小さな光が揺れる。敵のたいまつだ。



「……来たな」


マコトが剣に手をかける。

 低く息を吐き、闘志を整える横顔には迷いがない。


 ルクスが砂に掌をかざすと、風が巻き起こり、砂粒がささやくように流れた。


「四方から包囲されつつある。おそらく二十はいるな」


 アリアは仲間の顔を見渡した。夜明けまで持ちこたえれば進路は開けるが、このままでは挟み撃ちだ。


「……突破するしかない。分散して隙を作り、一気に抜けよう」



 短い指示に、皆が頷いた。


 プエルが少し身を乗り出し、小さく手を挙げる。


『わたし、おとりになる! ちっちゃいから、はやく走れるよ』


「プエル……」


アリアが思わず声を強めるが、ルクスが静かに言葉を継ぐ。


「君の役割は大きい。無茶はさせない。イリスと一緒に動けば、きっと隙を作れる」


 イリスは「ぽよん」と跳ねて応える。


『プエル、いっしょ! ぴかぴかで、めくらましする!』


 その無邪気な声が、不安を少し溶かした。



 エリオットが長杖を掲げ、結界を張る。淡い光が仲間を包み、守護の力が温かく広がった。


「まずはこれで安全を確保する。突破口が開けたら、俺が後衛を守る」


 ユリウスは剣を腰に構え、冷たい目を細めた。


「怨念の核に近づくほど、敵は狂暴になる。……俺が先頭で切り開こう」



『待て』


低い唸り声が聞こえた。モルンだった。

 彼は前に出て、大きな影の体を砂上に構える。胸を押さえる仕草をしながらも、はっきりと示す


――『自分が前衛になる』と。



 アリアは唇を噛む。


「モルン、あなた……痛みがあるでしょう?」


 だがモルンは動じず、ゆっくりと首を横に振った。その瞳は、迷いなく仲間を守ろうとしていた。


 その姿に、シュウが前へ歩み出た。


「……無理はさせない。傷が深くならないよう、すぐに手当てする」


 彼は母の形見のペンダントに触れ、光を手に宿した。


 短い沈黙ののち、アリアは深く息を吸った。


「……分かった。みんなでフォローする。絶対に、一人に背負わせない」


 そして戦いが始まった。






 砂が崩れ、敵兵が一斉に押し寄せてきた。

 ルクスが風を操り、砂を巻き上げて視界を遮る。イリスがそこに光を散らすと、煌めく砂壁が現れ、敵は一瞬足を止めた。


「今よ!」


アリアが声を放つ。


 プエルが素早く駆け出し、小さな影がひらりと舞う。敵兵が視線を奪われた刹那、イリスが「ぴかっ」と閃光を放ち、さらに混乱が広がった。


 モルンは前衛で突進する。痛みに体を震わせながらも、巨体を盾のように構え、仲間に迫る刃を弾き返す。

 ユリウスがその隙を逃さず剣を振るい、敵を次々と退けた。


 後衛ではエリオットが結界を張り直し、矢や飛び道具を受け止める。


「突破口を開け! 俺が守る!」


 マコトは剣を振り抜き、敵の攻撃を切り払いながら仲間の背を守った。


「この程度……足止めにもならない!」


 仲間の連携で、包囲の一角に亀裂が生じる。



 だがその瞬間、モルンの背の紋様が強く輝いた。

 黒い紋様は脈動し、敵の怨念を吸い込むように震えている。


「……なにこれ?」


プエルが驚きの声をあげた。


 ルクスが目を細める。


「影が……循環している?」


 モルン自身も戸惑ったように両前足を胸に交差させ、影を伸ばすような仕草をした。


――『変わった』と。



 瞬間、押し寄せる敵兵の怨念が吸い取られ、刃の勢いが鈍った。

 それはまだ不完全だが、確かに「影循環」の兆しだった。


「モルン……!」


アリアが声をあげる。


 敵が怯んだ隙に、仲間は一気に駆け抜けた。砂を蹴り、包囲を破り、夜明けの光が差し込む方角へ。






 戦いが収束すると、モルンはその場に膝をついた。体は震え、呼吸は荒い。


 シュウが駆け寄り、ペンダントに触れて治癒を施す。光がモルンの紋様を包み、脈動は徐々に鎮まっていった。


「……危険な力だ。でも、確かに成長してる」


 マコトが剣を背に収めながら言う。


「砂漠を抜けるまで、モルンはまだ試練の真っただ中だな」


 アリアはモルンの頭を優しく撫でた。


「ええ。でも、確かに前へ進んでる」


 エリオットが杖を地に突き、空を見上げる。


「夜明けまであと少しだ。進もう。砂漠交易の拠点が近い」


 背後にはまだ、怨念の気配が追いすがっている。

 それでも一行は、共に歩みを進めた。


 新しい力と、仲間の絆を携えて。







ーーー251話へつづく


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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