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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第十章 果てなき砂と星の狭間で
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245話 岩場の待ち伏せ - 守護獣の咆哮


 村を後にしてしばらく進むと、周囲の景色は砂の海から岩場へと変わっていった。

 鋭く尖った岩が突き出し、ところどころ細い道が蛇のように連なっている。砂漠の風が岩肌にぶつかり、低い唸りを響かせていた。


「……嫌な地形だな」


 マコトが低く呟く。


「敵が潜んでいたら、一気に囲まれるぞ」


 ルクスは冷静に分析し、視線を岩陰へと走らせた。

岩壁の影が昼間でも濃く、そこに何かが潜んでいる気配を漂わせている。


 その直後――乾いた叫び声と共に、岩陰から砂漠の盗賊たちが飛び出した。粗末な布で顔を覆い、錆びた刃を振りかざしている。その背後からは、怨念にとらわれた戦士たちが濁った瞳をぎらつかせ、呻き声をあげながら迫ってきた。


「来たっ!」


エリオットが剣を構え、アリアの前に立つ。


「怨念持ちも混じってる……気をつけて!」


 シュウが声を上げ、治癒の力を展開できるよう掌をかざす。


 敵が雪崩れ込んでくる瞬間、モルンが低く唸った。

次の瞬間、その体は大きく膨れ上がり、岩場の道を突進する巨体へと変わる。


「モルン、無茶すんなよ!」


 マコトが叫ぶが、モルンは振り返らず、ただ前を見据えて走る。


 岩場を駆け抜けるモルンの動きは重くも俊敏だった。体当たりで盗賊を弾き飛ばし、怨念を纏った戦士の足をすくって地面に叩きつける。その咆哮は岩壁に反響し、敵の心を揺さぶった。


 土煙の中、イリスが「ぽよん」と跳ね、飛び散る穢れを吸い取るようにして仲間を守る。その姿に、敵の戦士でさえ一瞬動きを止めるほどだった。


「数が多い! 岩場の上にも!」


 エリオットが警告を発する。


「……やはり地形を熟知している。こちらが不利だ」


 ルクスが小さく眉を寄せる。だが、その声は落ち着いていた。


「じゃあ、不利をひっくり返せばいい!」


アリアが短く言い、祈りを込めた光を矢のように放つ。怨念の気配が一瞬ひるみ、仲間の動きが軽くなる。


 その隙を逃さず、マコトが盗賊の武器を弾き飛ばし、エリオットが背中を守る。

 シュウは一人倒れるたびに迅速に治癒を施し、戦列を崩さぬよう支えた。


 そして最後に――モルンの巨体が突き進み、岩場の敵を一掃する。岩の上に潜んでいた盗賊も、その咆哮に怯み、砂煙と共に逃げ散っていった。



 静寂が戻ると、モルンは大きく息をつき、その体を小さく縮めていった。

ぴたりとアリアの足元に戻ったその姿は、いつもの小さな相棒だったが、呼吸は荒く、体は熱を帯びていた。


「モルン!」


アリアがすぐに駆け寄り、その体を抱きとめる。


「かなり消耗してる……」


シュウが膝をつき、モルンの脈を確かめるように触れる。柔らかな光が彼の掌からあふれ、小さな体を包み込んだ。


「大丈夫、傷はない。ただ、エネルギーを使いすぎただけだ」


シュウは安堵の息を吐く。


 イリスが「ぽよん」と跳ねてモルンの横に寄り添い、まるで「よく頑張った」と伝えるように小さく揺れた。


 アリアはその姿に胸を締め付けられながら、そっと囁く。


「……ありがとう、モルン。みんなを守ってくれて」


 モルンは目を細めるように瞬き、念話で短く返した。


 ――だいじょうぶ。まだ、たたかえる。


「無理すんな」


 マコトが真剣な顔で言う。


「消耗は大きいが、致命傷はない。休息を取れば回復するだろう」


 ルクスの冷静な言葉に、アリアたちはようやく胸を撫で下ろした。



 戦場の余韻がまだ漂う中、彼らは改めて互いの存在の大きさを確かめ合う。

こうして一行は、砂漠の岩場での突然の襲撃を退けたのだった。




ーーー246話へつづく



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