閑話:番外編001「王都からの特別便」
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砂漠の夕暮れ、淡い橙色の光が砂丘を染めていた。
アリアたちは小さなオアシスに足を止め、体を休める。熱に疲れた体に、泉の水は少量でもひとときの潤いを与えてくれた。
「はぁ……今日も長かったね」
イリスがぽよん、と跳ねながら砂の上に座り込む。
「びよん……あつい、おみずうれしい」
モルンは砂の上でしっぽを振って水を飲み、少し落ち着いた表情を見せる。
その時、アリアの肩の上で千里鏡が光った。
「……王都からの映像か?」
ユリウスが眉をひそめて覗き込むと、画面にエレノアとカイルの顔が映った。
「おや、みんな元気そうね」
エレノアが微笑む。
「昨日の晩に発送したの。今日か明日には届くと思っていたのよ」
「……通信機?」
ルクスが静かに画面に手を伸ばす。
「その通り。さっそくお披露目するわ」
カイルが手元の工具箱を示しながら言った。
「それぞれの個性に合わせて作ったんだ。無茶はするなよ」
アリアが笑った。
「ハヤブサ便、すごいね……まさか砂漠まで一晩で?」
「ええ、ちょっと驚いたよ」
ユリウスもつぶやく。
モルンはしっぽを振って「すごい!」の意思表示。
*
《開封・装着》
ルクスのペンダントは立体カットされた三日月型のイエロークオーツ。
「……きれい。ありがとう、エレノアさん」
胸に下げると微かに魔法陣が浮かび、指先で触れると光が揺れる。ルクスは柔らかく微笑み、魔法の感触を楽しんだ。
イリスは体内に内蔵するタイプ。虹色の光がぽわりと揺れ、七色に反射する。
「びよん!にじいろ、うれしい!」
弾むたびに光が柔らかく踊り、砂の上に小さな虹の残像を残す。
プエルは星型のペンダントを手に取り、キラキラ光る様子に目を輝かせた。
「わぁ、星だ! きれい……!」
アリアが優しく首からかけ、使い方を説明する。
「緊急時にはボタンを押すと仲間がすぐに駆けつけるんだよ」
プエルは小さく頷き、目をまん丸にして喜んだ。
「わたし……押すときはちゃんとする!」
*
《テスト通信》
アリアが千里鏡を操作して呼びかける。
「エレノアさん、カイルさん、届きました!」
ルクスのペンダントから光の魔法陣が浮かび、魔力を制御する。
最初のテストで光の反応が強く出すぎ、魔法陣が少し揺れた。
「おっと、少し強すぎたかな」
ルクスが苦笑い。
イリスが慌てて後ろに飛び退き、虹色の光が砂の上に小さな模様を描いた。
「びよん……ごめん!」
プエルが胸のペンダントを軽く押すと、緊急信号テスト。小さな光の障壁が彼女を包み、砂に光の反射がちらつく。
同時に千里鏡を通じて全員に通知される。
「わぁ、すごい……!」
「緊急時はこれで助かるんだね」
アリアも感心した。
障壁は少し跳ねてモルンに当たるが、尻尾を振って笑うモルン。
ルクスも微笑み、イリスはぽよん、と跳ねて光に反応した。
*
《イリス光の槍テスト》
「……わたしのやり、ためす!」
イリスがつぶやく。
護身用の光の槍はまだ未使用。万一の時に頼りになるか確かめる必要がある。
ルクスが魔力を補助しながら、軽く前に出る。
「大丈夫、わたしが受け止める」
イリスが魔力を込めて槍を生成すると、虹色の光が一瞬きらめき、砂の上に槍影が浮かぶ。
ルクスはその槍を体で受け止め、魔法陣で衝撃を分散させる。
「わわっ、少し強すぎたかしら」
イリスが慌てて後ろに飛び退く。
ルクスは微笑んでうなずき、光の槍を消す。
「大丈夫、問題なく使えるわね」
「びよん!」
イリスは跳ねて喜び、光の槍をもう一度軽く生成して小さな光を飛ばす遊び心も見せた。
*
《久々の会話と王都近況》
千里鏡を通じて、アリアたちと王都のエレノア・カイルが久々の再会を果たす。
「久しぶりね、みんな元気そうで安心したわ」
「エレノアさん、カイルさんもお元気そうで!」
アリアが手を振る。
プエルはペンダントを握ったまま、小さく手を振る。
ルクスは落ち着いた声で
「私たちは無事に旅を続けています」
と報告した。
*
エレノアが画面越しに笑いながら語る。
「王都は落ち着いてきたわ。私たちも、新体制の王宮の仕事に少しずつ慣れてきたところ。書類の山に埋もれそうになることもあるけれど……」
カイルは苦笑しながら補足した。
「朝は魔導器具の整備、昼は市民との面会、夜は文書整理……エレノアと二人でやってるけど、少しずつ効率も良くなってきた。ちょっと慣れないといけない部分もあるな」
「昨日なんて、私が魔法書を並べ替えてたら、突然巻物が飛び出してカイルの顔に当たりそうになったのよ!」
エレノアが笑いながら話すと、カイルは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「巻物は悪くない……ただ風の方向が……」
「それでも毎日少しずつ平和が戻っていると実感できる」
エレノアが微笑む。
アリアたちは画面越しに頷き、王都の日常の小さな笑いと温かさを想像した。
「ハヤブサ便、まさかこんなに早いとは……」
アリアが感嘆すると、カイルは得意げに胸を張った。
「王都の最新技術だからな。安全で早い」
「でも砂漠まで一晩で届けるとは思わなかった」
ルクスも少し驚いた表情。
会話の間、千里鏡に映る互いの笑顔は、距離を超えて心を温めていた。
離れていても、互いに繋がる絆の証は確かにここにあった。
閑話:番外編001 完
》》》おまけ:通信機見せ合いっこ
砂漠のオアシスで、日が傾きかけるころ。砂に座る4人の周囲には、さっそく届いたばかりの新しい通信機が並ぶ。
「びよん! わたしの光るの!」
イリスが跳ねながら、体内の通信機から柔らかい虹色の光を放つ。光はぽわりと揺れ、砂の上に小さな虹の残像を描く。
ルクスは胸元の三日月型ペンダントを軽く揺らし、魔法陣の淡い光を浮かべる。
「……うむ、なかなか美しい反応だ」と、落ち着いた声でつぶやく。長い年月を生きたような、学者のような眼差しで光を観察する。
プエルは首からかけた星型ペンダントを嬉しそうに指でつつく。
「わぁ、キラキラ! わたし、押すの上手になりたい!」
小さく光る障壁を発動させ、砂の上でパチパチと光が弾けるのを見て目を輝かせる。
モルンは尻尾を大きく振りながら、念話で皆に語りかける。
《見ろよ、この光の反応、俺のと比べてどうだ?》
イリスやルクス、プエルは笑いながら答える。
「イリスの虹色、ふわふわして可愛い!」
「プエルの星型は角度で光るんだね、面白い」
「ルクスの三日月、派手すぎず落ち着いてていいな」
モルンも尾をふりふりしながら光を受けて喜ぶ。
《俺ももっと強く光らせられるか? やってみる》
4人は順番に自分の通信機をテストし、ちょっとしたハプニングも楽しむ。
イリスが勢いよく光の槍を出すと、ルクスが魔力で受け止め、光が砂にきらめく。
プエルは押す力を間違えて小さな障壁が跳ね、モルンの尻尾に当たっても、みんな笑って済ませる。
「びよん! たのしい!」
イリスが跳ねるたび、虹色の光がくるくる舞う。
モルンは微笑み、ルクスは静かに観察しつつも、思わず笑みをこぼす。
プエルは嬉しそうに光を追いかけ、4人の周囲はまるで小さな光の世界のようにきらめいていた。
「みんな無事に使えるね。これで、いざというときも安心だ」
ルクスが静かに言うと、イリスも小さくうなずく。
「わたし……みんなと一緒に使うの、楽しみ!」
プエルが元気よく言い、モルンは尾を高く掲げて応えた。
夕陽に照らされる砂のオアシスで、4人の通信機の光はゆらゆら揺れながら、彼らの絆をさらに確かにしていった。
おわり
※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。
作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。
あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。




