21話 束の間の休息 - 王都の日常
封印の準備が佳境に入る中、アリアたちは束の間の休息を取ることにした。張り詰めた糸を少し緩め、心身をリフレッシュするためだ。
「少し、息抜きをしましょう。王都の市場へ行ってみませんか?」
アリアの提案に、皆が賛同した。
活気あふれる市場は、色とりどりの商品と人々の熱気で溢れかえっていた。石畳の道を歩けば、香辛料の匂い、焼き立てのパンの甘い香り、そして活気ある売り子の声が耳を楽しませる。
「わあ、美味しそうな匂い!」
レオンが目を輝かせ、屋台に駆け寄った。彼の視線の先には、湯気を立てる肉まん、香ばしい焼き鳥、そして色とりどりの果物が並んでいる。
「どれも美味しそうですね」
エレノアも楽しそうに微笑んだ。
普段は冷静沈着な彼女だが、今日は年相応の少女のように目を輝かせている。
アリアたちは思い思いに買い物を楽しんだ。
レオンは珍しい香辛料を、エレノアは美しい刺繍のハンカチを、エリオットは古代の書物を、ルシウスとユリウスは王宮へのお土産を選んでいた。
仲の良い兄弟であるルシウスとユリウスは、幼い頃からの思い出話に花を咲かせ、時折、顔を見合わせて微笑んでいた。
買い物を終えると、広場の一角にあるカフェで休憩することにした。
「ふう、少し疲れましたね」
アリアが椅子に腰かけ、温かい紅茶を一口飲んだ。
「でも、楽しかったですね。市場の活気は、私たちに元気を与えてくれます」
エリオットが笑顔で言った。
「たまには、こういう時間も必要だ。張り詰めてばかりでは、良い結果は生まれない」
ルシウスが穏やかな表情で言った。
カフェでは、様々な人々が思い思いに過ごしていた。楽しそうに話す家族、恋人同士、一人で読書をする人…。そんな日常の風景を見ていると、アリアは心が安らいだ。
(この穏やかな時間が、ずっと続けばいいのに…)
アリアは、ふとそんなことを思った。
占い処に戻ると、いつものように悩みを抱えた人々が訪れていた。アリアは一人一人と向き合い、丁寧に占い、言葉を贈った。そして、手作りのお菓子を人々に配った。
「これは、私が作ったお菓子です。少しでも、皆さんの心が安らぎますように…」
アリアは、そう言って微笑みかけた。
古代の怨念の影響は、街の人々にも少なからず出ていた。
アリアは、一人でも多くの人がその影響から逃れられるように、と願いながら、お菓子を配っていた。
翌日、アリアたちは王都郊外の公園へピクニックに出かけた。
「天気が良くてよかったですね。まるで、私たちの心を映しているみたい」
アリアが青空を見上げると、白い雲がゆっくりと流れていた。
レオンが手作りのサンドイッチやフルーツ、そして特製のピクニックバスケットを広げ、皆でテーブルを囲んだ。
「いただきましょう!」
レオンの元気な声で、ピクニックが始まった。
食事をしながら、アリアたちは互いの過去や夢について語り合った。
エレノアは幼い頃に両親を亡くし、王宮で女官として育てられたこと。
エリオットは幼い頃から書物に囲まれて育ち、古代の謎を解き明かすことを夢見ていること。
レオンは世界中を旅して、様々な料理を研究したいと思っていること。
ルシウスとユリウスは、幼い頃からの思い出を語り合った。実の兄弟であり、幼馴染であり、そして親友である彼らの間には、言葉では言い表せない深い絆があった。
アリアは、自身の過去、そして占い師になった理由を話した。皆、真剣な表情でアリアの話に耳を傾けていた。
「アリアさんの過去は、とても辛いものだったんですね」
エレノアが静かに言った。
「でも、アリアさんは、それを乗り越えて、私たちの希望の光です」
エリオットが力強く言った。
「アリア、私たちはいつもあなたの味方です。どんな時も、あなたのそばにいる」
ルシウスが優しく微笑んだ。
アリアは、ルシウスの言葉に、胸が温かくなるのを感じた。彼といると、なぜか心が安らぐ。まるで、ずっと昔から知っていたような、そんな不思議な感覚があった。
(ルシウスさんとユリウスさん…)
アリアは、二人の姿を交互に見た。彼らといると、幼い頃の記憶が蘇りそうになるけれど、いつも寸前で思い出せない。
夕方、アリアはルシウスと二人で庭園を散歩していた。
「今日は、楽しかったですね」
アリアが言うと、ルシウスは穏やかに頷いた。
「ああ、たまには、こういう時間も必要だ。それに、アリアとこうして話すのは、心が安らぐ」
ルシウスの言葉に、アリアはドキッとした。彼もまた、同じように感じているのだろうか。
「ルシウスさんは、どんな子供だったんですか?」
アリアが尋ねると、ルシウスは少し考えてから答えた。
「私は、ユリウスといつも一緒にいた。実の兄弟だが、幼い頃からの親友ような存在だ」
ルシウスは、幼い頃のユリウスとの思い出を語り始めた。いたずらをして先生に叱られたこと、秘密基地を作って遊んだこと、夜空の星を眺めながら夢を語り合ったこと…。
「ユリウスは、昔から優しい男だった。困っている人がいると、いつも放っておけなくて、助けに行っていた」
ルシウスの言葉に、アリアはユリウスの優しさに触れた気がした。
「ルシウスさんとユリウスさんは、本当に仲が良いんですね」
アリアが言うと、ルシウスは少し照れくさそうに笑った。
「ああ、私たちは、互いのことをよく理解している。これからも、ずっと一緒にいるだろう」
ルシウスの言葉に、アリアは温かい気持ちになった。
庭園には、夕焼けの光が優しく降り注ぎ、花々が美しく咲いていた。アリアは、ルシウスと共に、しばし静かな時間を過ごした。
21話:終わり
〈登場人物〉
* アリア:主人公。王家の血を引く占い師。封印の準備の合間に、束の間の休息を楽しむ。
* エレノア:王宮の女官であり、実は王宮魔術師団の団長。アリアたちと共に休息を楽しむ。
* エリオット:王宮の書記官であり、アリアの協力者。書庫での情報収集を担当。アリアたちと市場やピクニックを楽しむ。
* ルシウス:王宮騎士団 副団長。アリアの王宮への出入りを許可し、警備を強化する。アリアとは幼馴染。
* ユリウス:王宮騎士団の一員。ルシウスと共に王宮内の警備を担当。ルシウスと実の兄弟であり、アリアとは幼馴染。
* レオン:大商会の跡取り息子。アリアの協力者。儀式に必要な道具や材料の調達を担当。ピクニックの準備をする。
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※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。
作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。
あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。




