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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第九章 虹の記憶と星の芽吹き
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228話 風は問いかける - 心に揺れる覚悟の声


淡い風が遺跡の広間を満たしていた。

祈りを捧げる仲間たちの足元には光が広がり、祭壇を覆う結界がわずかに揺れる。

その瞬間、アリアは胸に不思議なざわめきを覚えた。


──これは、風の星霊からの応え。


確かにそう感じた次の瞬間、広間全体に声が響いた。


『おまえたち。どこまで進む覚悟がある?』


風に乗るその声は穏やかでありながら、鋭く胸を貫く。問いかけに導かれるように、仲間たちの意識はそれぞれの幻視へと誘われていった。





〈アリアの幻視〉


草原の丘の上に立つアリア。

足元には倒れた仲間たち――マコト、ユリウス、エリオット、ルクス、プエル、イリス、モルン――全員が動かない。

空には光の渦が生まれ、渦巻く風が丘を駆け抜ける。迫る巨大な存在の気配に胸が締めつけられる。


『おまえが命を差し出せば、彼らは救われる。どうする?』


唇が震え、心臓が早鐘を打つ。諦めることは簡単だ。だが、アリアの胸に浮かぶのは別の答え。


「……私は、諦めない。自分を捨てず、みんなと未来を掴む」


声に重みが宿る。倒れた仲間たちは光に包まれ、少しずつ身体を起こす。

光の粒が空中で舞い、丘の風が頬を優しく撫でる。

光は闇を包み込み、未来を紡ぐ力となる。その感覚が全身に広がった。





〈マコトの幻視〉


映るのは、愛する人を守れなかった日の記憶。

血に染まった腕、冷たくなった命、力尽きた自分――膝をつき、拳を地に叩きつける。過去の痛みが体中に刻まれている。


『また繰り返すかもしれない。それでも進むのか?』


胸が締めつけられ、目の奥が熱くなる。


「……二度と同じ思いはさせない。弱くても、この手で守る」


背に差し込む光が、重く圧し掛かっていた記憶を溶かす。遠くで風が木々を揺らす音が、まるで応援するように聞こえる。胸の奥で守るべきものへの覚悟が光となり、静かに燃え上がった。





〈エリオットの幻視〉


目の前に現れたのは、小さな少女――亡き妹ミア。

怯えた瞳が胸を抉る。息が止まりそうになる。


『どうして助けてくれなかったの……?』


膝をつき、手が震える。後悔が押し寄せる。


「……ごめん。取り戻せないけど、その悔いは忘れない。今度は仲間を守る」


幻影は微笑み、光の粒となって消えていく。

静かな風が頬を撫で、胸に覚悟の温もりを残した。

涙を拭い、エリオットは深く息を吸い、決意を胸に刻む。





〈ユリウスの幻視〉


荘厳な王宮の回廊に立つユリウス。

歩み寄る兄ルシウスの姿。父の無念、王家の責務、過去の自分――すべてが問いかけてくる。


『王家に戻るのか、それとも旅を続けるのか』


胸が張り裂けそうになる。だが、ユリウスの瞳は揺らがない。


「過去に囚われず、選んだ居場所は仲間と共にある」


満足げに頷く兄。回廊に差し込む光が、過去の重みを溶かし、胸に新しい希望を注ぐ。風が髪を揺らし、星の光が天井の窓から降り注ぐ。未来を見据える視線に、迷いはもうない。





〈シュウの幻視〉


柔らかな光の中、母の姿が浮かぶ。

聖女見習いの女性の温かさ、力強さが胸に蘇る。


『聖女の力とは、なんだと思う?』


言葉に詰まりながらも、思いを巡らせるシュウ。


「人を癒し、支えること。その想いが力になる」


母の幻影は微笑み、形見のペンダントをかすかに光らせる。

胸に温かさが広がり、力と覚悟が芽生える。光の粒が風に舞い、彼の心を満たす。





〈ルクスの幻視〉


影だった頃の記憶が心の奥でちらつく。

人を傷つけるしかなかった自分。しかし今は、ルクスという光として生きる。


風が語りかける――

『おまえは、今の光で人を守れるか?』


胸の奥にアリアたちの顔を思い浮かべる。


「わたしは、もう影じゃない。光として、みんなと共に進む」


微かに笑むルクスの姿に、風のざわめきが柔らかく重なる。過去の影は消え、光の自分が立ち上がった。





〈プエルの幻視〉


小さな星霊プエル。まだ幼い自分と向き合う。

かつては影のなりそこないで、何もできなかった。


『本当に、今の自分でいいのか?』


うずくまるプエル。ルクスやアリアの顔を思い浮かべ、心を決める。


「小さくても、学びながら守るんだ…みんなのそばで」


光が包み、成長への自信と希望が芽生える。

小さな手を伸ばし、未来に向かう決意を示す。





〈イリスの幻視〉


過去の虹色スライムの記憶が断片的に呼び覚まされる。



「どうかあの子を守って」


穏やかな年配女性の声が心に響く。



「そなたは我ら虹色スライムの希望の星。未来での活躍を見守っておる」


古代虹色スライム種の長老の声。



「私の子孫を頼んだ」


大きな人の手がそっと撫でる感触。



「守るんだぞ!」


体当たりしてくる兄弟たちの力強い声。



イリスは小さく跳ね、ぽよん、と体が震える。胸の奥に温かな確信が宿った。




#


〈モルンの幻視〉


足を負傷して倒れた過去の記憶が蘇る。守れなかった同族たちの姿が、今も胸を締めつける。力が及ばず、あの日はどうすることもできなかった――その無力さが静かに胸に重くのしかかる。


そのとき、柔らかな気配が近づく。足音でも匂いでもなく、まるで風のように、確かにカメリアの独特な魔力に似ていた。思わず唸り声を上げると、その存在は自然とこちらに導かれ、傷ついた目の前に立った。


目の前の少女は、ただ力を振るうのではなく、心に直接触れる温かさと強さを放っていた。

その瞬間、モルンは自分の役割が変わったことを直感する。


「今度こそ……この子を守る」


過去の痛みと後悔を胸に、モルンは決意を新たにする。背を撫でる風が傷ついた体を包み込み、柔らかく揺れた。痛みは光へと変わり、胸の奥に新たな使命が刻まれた瞬間だった。





やがて、仲間たちは一斉に目を開いた。

祭壇を覆う結界は大きく揺らぎ、砕け散りそうになっていた。


しかし、風の声が再び響く。


『……足りぬ。まだひとつ、鍵が欠けている』


広間に冷たい沈黙が落ちる。仲間たちは顔を見合わせ、それぞれが確かに「答え」を掴んだ感覚を持っていた。

だが、星霊の封印を解くには、まだ何かが必要らしい。


アリアは胸の奥に小さな不安を覚えながらも、結界の奥から流れ込む風の気配を感じ取っていた。

そこに眠る存在が、確かに彼らを見つめている――。






ーーー229話へつづく




✪読んでくださり、ありがとうございます。

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※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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