17話 怨念の兆候 - 絵に秘められた記憶
ルシウスとユリウスとの会話から、王宮の秘密に深く関わる気配を感じたアリアは、エレノアに協力を仰ぐため、手紙を送った。
数日後、エレノアから返事が届き、アリアは王宮の一室で彼女と再会した。
「アリア様、お久しぶりです。手紙の内容、拝見いたしました。私も、王宮で起こっている異変について、深く憂慮しております。」
エレノアは、いつものように穏やかな口調で言った。
「エレノア様、お忙しい中、お時間を作っていただきありがとうございます。実は、地下迷宮の奥で、古代魔法の実験施設らしきものを発見しました。そして、ルシウス様とユリウス様の態度から、彼らが王宮の秘密に深く関わっていることを確信したのです。」
アリアは、エレノアに地下迷宮で得た情報と、ルシウスたちとの会話の内容を伝えた。
エレノアは、アリアの話を真剣な表情で聞いていた。
「地下迷宮に、そのような施設が…やはり、王宮で起こっている異変は、古代魔法の影響なのでしょうか。」
エレノアは、少し考え込んだ後、
「王宮では、最近、原因不明の怪奇現象が頻発しているのです。例えば、夜になると、誰もいないはずの廊下から足音が聞こえたり、突然、部屋の明かりが消えたり…。そして、何よりも気がかりなのは、人々の様子が以前と変わってきていることです。」
「人々の様子、ですか?」
アリアが尋ねると、エレノアは頷いた。
「ええ。以前は穏やかだった人々が、些細なことで激昂したり、逆に、感情を失ったように無気力になったり…。まるで、何かに操られているかのように。」
エレノアの言葉に、アリアは背筋が寒くなるのを感じた。
「それは…やはり、怨念の影響なのでしょうか。」
アリアが尋ねると、エレノアは頷いた。
「おそらく…。古代魔法の実験によって生み出された怨念は、長い年月を経て、徐々に力を増しているのでしょう。そして、その力が、王宮の人々や環境に影響を与え始めているのだと思われます。」
エレノアは、アリアに王宮の過去と怨念の危険性について語り始めた。
「古代魔法は、かつて王宮で禁忌とされていた魔法です。その力は強大である一方、制御が非常に難しく、少しでも扱いを誤れば、大きな災厄をもたらすとされています。アルベール家は、代々、王宮の魔法研究機関を担っていましたが、古代魔法の研究が行き過ぎたために、悲劇的な結末を迎えたと伝えられています。」
アリアは、エレノアの言葉に、アルベール家と王宮の秘密が深く関わっていることを確信した。
「アルベール家…やはり、彼らは過去の過ちと向き合わなければならないのですね。」
アリアが呟くと、エレノアは頷いた。
「ええ。そして、私たちも、過去の過ちから目を背けてはなりません。怨念の力を封印し、王宮の人々を救うために、力を合わせましょう。」
エレノアの言葉に、アリアは決意を新たにした。
「はい、エレノア様。私も、必ずや、王宮の秘密を解き明かし、怨念を封印してみせます。」
二人は、王宮の異変調査を開始し、怨念の力を封印する方法を探るため、情報交換を行った。
情報交換を終えた二人は、気分転換に王宮の庭園を散歩することにした。
「アリア様、少し庭園を歩きませんか?美しい景色を見ると、心が安らぎます。」
エレノアがそう提案し、アリアもそれに同意した。
庭園には、色とりどりの花が咲き乱れ、心地よい風が吹いていた。
二人は、美しい景色を眺めながら、さらに親睦を深めた。
アリアは庭園を歩きながら、どこか懐かしいような、不思議な感覚に包まれていた。
「この庭園…まるで、私が幼い頃から見ていた夢の庭園にそっくりだわ…。」
アリアは、思わず呟いた。
「夢の庭園、ですか?」
エレノアが尋ねると、アリアは頷いた。
「ええ。私は、幼い頃から何度も同じ夢を見ていたのです。美しい庭園で、自分とよく似た少女が、悲しそうな表情で佇んでいる夢を…。この庭園と、夢の庭園は、まるで双子のようにそっくりなのです。」
アリアは、庭園の中央にある祭壇を見つめた。
「特に、あの祭壇…夢に出てきたものと、全く同じだわ…。」
アリアの言葉に、エレノアは驚いたような表情を見せた。
「アリア様…それは、一体…。」
エレノアが何かを言いかけた時、庭園に不気味な風が吹き荒れた。
「これは…怨念の気配…!」
エレノアは、警戒するように周囲を見渡した。
アリアも、夢と現実が交錯するような、不思議な感覚に戸惑いながらも、警戒を怠らなかった。
「エレノア様、気を付けてください!」
アリアがそう言った瞬間、二人の背後から、黒い影が迫ってきた。
二人は、咄嗟に身をかわし、影の攻撃を回避した。
「やはり、怨念は、私たちを邪魔しようとしているのね…!」
エレノアは、手に持った杖を構え、警戒した。
アリアは、咄嗟に防御の魔法障壁が薄く張られたような感覚に包まれた。
「アリア様、ここは私に任せてください!アリア様は、夢の庭園について、何か手がかりがないか探してください!」
エレノアは、アリアにそう言い残すと、黒い影との戦いを始めた。
アリアは、エレノアの言葉に従い、夢の庭園との類似性を探すため、庭園を駆け回った。
「夢の庭園…一体、何が隠されているの…?」
アリアは、夢の中の少女の姿を思い浮かべながら、庭園を調べ続けた。
その時、アリアは庭園の一角に、ひときわ強い怨念の気配を感じた。
「ここ…!」
アリアは、気配のする場所に近づくと、そこには、地下へと続く階段があった。
(この階段は…?)
アリアは、階段を見つめながら、呟いた。
「アリア様!危ない!」
背後から、エレノアの声が聞こえた。
アリアが振り返ると、黒い影が、こちらに向かって突進してくるのが見えた。
アリアは、咄嗟に身をかわし、階段の奥へと飛び込んだ。
「アリア様!」
エレノアの声が、階段の上から聞こえたが、アリアは振り返らず、階段を駆け下りた。
階段の先には、薄暗い通路が続いていた。アリアは、通路を奥へと進んでいくと、やがて、大きな扉の前にたどり着いた。
扉の前には、見覚えのある紋章が刻まれていた。
「この紋章…エリオットさんが言っていた、秘密の部屋の紋章…」
アリアは、扉を開け、中へと入った。
部屋の中央には、巨大な水晶が安置されていた。そして、部屋の奥には、古代魔法の実験施設らしきものが広がっていた。
「やはり、ここが秘密の部屋…」
アリアは、部屋の中を調べ始めた。以前、猫に導かれてきた時よりも、怨念の力が強まっているように感じた。
(この水晶…以前来た時よりも黒い霧が濃くなっている…)
アリアは、部屋の中央にある巨大な水晶を見つめた。
「この水晶が、怨念の力を増幅させているのね…」
アリアは、水晶に手を伸ばそうとした時、部屋の一角に飾られたルシウスの子供の頃の絵が目に留まった。
「この絵…」
アリアは、絵の中に描かれた祭壇と、幼いルシウスとユリウスの姿をじっと見つめた。
(この絵…夢で見た庭園の祭壇とそっくり…)
アリアは、絵に引き寄せられるように、祭壇の前に立った。
その瞬間、アリアの脳裏に、幼いルシウスとユリウスの記憶が蘇ってきた。
祭壇の前で、幼いルシウスとユリウスが「いつも一緒にいよう」と誓い合っていた光景。しかし、ある出来事をきっかけに、二人の道は分かれてしまったこと。
(ルシウス様とユリウス様…あんなに仲が良かったのに、一体何があったのだろう…)
アリアは、二人の過去に思いを馳せながら、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
アリアは、ルシウスに話を聞きたいと思った。しかし、あの時のことを蒸し返すのは、ルシウスを傷つけることになるかもしれない。アリアは、葛藤しながら、絵から目を離した。
その時、アリアは部屋の中に、ひときわ強い怨念の気配を感じた。
「これは…!」
アリアは、気配のする場所に近づくと、そこには、巨大な水晶があった。水晶は、黒い霧のようなもので覆われ、不気味な光を放っていた。
「この水晶…怨念の力を増幅させている…!」
アリアは、水晶に手を伸ばそうとした時、背後から声が聞こえた。
「アリア…!」
振り返ると、そこには、ルシウスが立っていた。
「ルシウス様…!」
アリアは、驚いてルシウスを見つめた。
「なぜ、ここに…?」
ルシウスは、アリアに近づくと、水晶を見つめた。
「この水晶は…」
ルシウスは、何かを言いかけた時、水晶が激しく光り始めた。
「まずい…!」
ルシウスは、アリアを庇うように抱き寄せた。
その瞬間、水晶から放たれた光が、部屋全体を覆い尽くした。
アリアは、意識を失い、ルシウスの腕の中で倒れた。
17話 :終わり
〈登場人物〉
* アリア:
* 主人公。王宮の秘密と自身の過去を解き明かそうとしている。
* 幼い頃の夢と現実の庭園の類似性に戸惑う。
* ルシウスとユリウスの過去に触れ、彼らの関係性に心を痛める。
* エレノア:
* アリアの協力者。王宮の異変について深く憂慮している。
* 古代魔法と怨念の危険性をアリアに伝え、共に調査を進める。
* 黒い影との戦闘を行う。
* ルシウス:
* 王宮の秘密に関わっていると思われる人物。
* アリアが怨念に触れようとした際に庇う。
* 秘密の部屋でアリアと再会し、水晶について何かを言いかける。
* ユリウス:
* ルシウスとともに、王宮の秘密に関わっていると思われる人物。
* ルシウスとの過去が絵を通して示唆される。
* 黒い影:
* 怨念の力によって生み出された存在。
* アリアとエレノアを襲撃する。
✦✦✦✦✦
*ポイント評価(☆)・リアクション(絵文字)・感想・イチオシレビュー全て受付けしております。
*特にポイント評価☆•リアクション(絵文字)ブックマークしていただけると、とても嬉しいです。よろしくお願いします。
✦✦✦✦✦
※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。
作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。
あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。




