12話 影の追跡と商人の情報網
王都セントラルは、今日も活気に満ちていた。
しかし、アリアの占い処には、いつもの穏やかな雰囲気とは異なる、緊張感が漂っていた。
「最近、どうも体調が優れなくて…」
レオンは、疲労の色を濃くした顔で、アリアに向かって言った。彼の表情は、以前の自信に満ちたものとは程遠く、不安と焦燥に満ちていた。
「具体的には、どのような症状ですか?」
アリアが尋ねると、レオンは少し考え込んだ。
「遠方への買い付けに行っている時は、体調も気分も良いんです。でも、王都に戻ってくると、途端に体調を崩したり、精神的に不安定になったりするんです。」
レオンは、原因が分からず、困惑している様子だった。
「…もしかしたら、何か良くないものが憑いているのかもしれないと思い、アリア先生に相談に来ました。」
レオンは、不安そうに言った。
「…そうでしたか。では、鑑定してみますね。よろしいですか?」
アリアは、レオンに許可を求めた。
「はい、お願いします。」
レオンは、頷いた。
アリアは、レオンの手に触れ、彼の記憶を辿り始めた。
レオンの記憶の中に、王都での幼少期の記憶が蘇る。
賑やかな市場、美しい王宮、そして…暗い路地裏で、一人怯える幼いレオンの姿。
「…あの日、僕は、大切なものを失ったんです…」
レオンは、記憶の中の自分を見つめながら、呟いた。
「大切なもの…?」
アリアが尋ねると、レオンはゆっくりと語り始めた。それは、彼が幼い頃、王都で体験した、悲しい出来事だった。
「…僕は、幼い頃、両親と離れて暮らしていたんです。ある日、両親が王都に来てくれることになったんですが…」
レオンは、そこで言葉を詰まらせた。
「…両親は、僕に会いに来る途中、事故に遭って…」
レオンの声は、震えていた。
「…その時、僕は、両親を失った悲しみと、自分を責める気持ちでいっぱいになったんです。そして…」
レオンは、そこで再び言葉を詰まらせた。
「…そして?」
アリアが促すと、レオンはゆっくりと顔を上げた。
「…そして、僕は、王都を、憎むようになったんです…」
レオンの言葉に、アリアは息を呑んだ。影は、レオンの心の闇、王都への憎しみが具現化したものだった。
「レオンさん…」
アリアは、レオンの肩に手を置いた。
「あなたは、もう一人ではありません。私たちで共に影と戦いましょう。」
アリアとレオンは、協力して影と対峙した。アリアは占いの力で影の動きを封じ、レオンは自身の過去と向き合い、トラウマを克服しようと試みた。
影は、レオンの心の奥底に潜む、幼い頃の悲しみと憎しみを映し出していた。レオンは、過去の記憶に苦しみながらも、必死に影に立ち向かった。
(僕は…僕は、もう逃げない!過去の悲しみに、憎しみに、縛られたままではいられない!)
レオンは、心の中で叫んだ。
(両親の死は、僕のせいじゃない。王都を憎んでも、何も変わらない。僕は、前に進まなければならないんだ!)
レオンは、過去の自分に語りかけるように、言葉を紡いだ。
「僕は、両親の死を乗り越え、前に進むんだ!過去にとらわれず、今を大切に生きるんだ!それが、より良い未来へと繋がるんだ!」
レオンの強い意志が、影を徐々に弱めていく。影は、レオンの心の葛藤を映し出し、彼の憎しみを増幅させようと囁きかける。
「お前は、この王都を憎んでいる。両親を奪ったこの場所を、決して許すことはないだろう?」
影の声が、レオンの心に響く。しかし、レオンはもう、その囁きに惑わされることはなかった。
「違う!僕は、憎しみに支配されたくない!僕は、自分の未来を、自分で切り拓くんだ!」
レオンは、心の底から叫んだ。その瞬間、影は光に包まれ、完全に消え去った。
影の事件が解決した後、アリアはレオンに優しく語りかけた。
「レオンさん、あなたは素晴らしい心の持ち主です。過去の悲しみや憎しみを乗り越え、自分の未来を切り拓こうとするあなたの姿は、多くの人に勇気を与えるでしょう。」
アリアは、レオンに微笑みかけた。
「私の故郷では、こんな風に言われています。『良いことがあれば悪いこともあり、その逆もまた然り』って。人生は、良いことと悪いことが交互に訪れるもの。だから、過去の悲しい出来事にとらわれず、今ある幸せに目を向けることが大切なのです。」
アリアは、レオンに語りかけた。
「あなたは、素敵な婚約者のエマさんがいます。彼女は、あなたの心の支えであり、共に未来を歩むパートナーです。彼女との絆を大切にし、共に幸せな未来を築いてください。」
アリアは、さらに続けた。
「それにね、今の自分に満足し、感謝することも大切なの。そうすることで、心は穏やかになり、幸せを感じることができる。あなたは、商家の跡取り息子として、裕福な生活を送っています。でも、お金だけが幸せじゃないわ。心の豊かさも大切にしてくださいね。」
レオンは、アリアの言葉を真剣に聞いていた。
「アリア先生、ありがとうございます。先生の言葉で、心が軽くなりました。僕は、過去の悲しみにとらわれず、今を大切に生きていきます。」
レオンは、アリアに感謝の言葉を述べた。
「レオンさん、あなたはもう一人ではありません。何かあれば、いつでもご相談ください。」
アリアは、レオンに微笑みかけた。
その後、アリアとレオンは互いの情報を交換した。
「レオンさんは、王都以外の各地の情勢にも詳しいのですよね?」
アリアが尋ねると、レオンは頷いた。
「ええ、商売柄、各地を回りますから。王都以外の情報も、ある程度は把握しています。」
レオンは、商人の情報網を活かし、王都以外の情勢や、古代魔法に関する情報をアリアに提供した。
「私の情報網は、各地の商会やギルド、そして旅の吟遊詩人など多岐にわたります。彼らは、各地の情報を集め、私に提供してくれるのです。例えば、最近では、東の国境付近で、古代魔法の遺跡が発見されたという情報や、南の都市で、王宮の紋章が入った謎の荷物が頻繁に取引されているという情報を得ています。」
レオンは、具体的な情報を挙げながら、アリアに説明した。
「王都に戻ると体調を崩す原因が、王宮の影の部分と関わっているのではないかと推測しています。王宮の地下には、禁じられた書物や、古い魔法具などが保管されているという噂もあります。もしかしたら、古代魔法の力が、王都に悪影響を及ぼしているのかもしれません。」
レオンは、アリアに警告した。
「王宮は、古代魔法の力を独占しようとしているのかもしれません。レオンさん、あなたは、王宮について何か知っていますか?」
アリアが尋ねると、レオンは少し考え込んだ。
「…王宮は、昔から、何かを隠しているような気がします。特に、地下には、何か秘密があるという噂を聞いたことがあります。」
レオンの言葉に、アリアは目を細めた。
「やはり、王宮の地下に…」
アリアは、レオンから得た情報を元に、王宮の秘密を暴くための新たな決意を固めた。
「レオンさん、ありがとうございます。あなたの情報、とても役に立ちました。」
アリアは、レオンに感謝の言葉を述べた。
「いえ、僕も、あなたには感謝しています。あなたのおかげで、僕は、過去のトラウマを乗り越えることができました。」
レオンは、アリアに微笑みかけた。
「…アリアさん、あなたは、王宮の秘密に深く関わろうとしていますね。それは、とても危険なことです。どうか、気をつけてください。」
レオンは、アリアを心配そうに見つめた。
「はい、ありがとうございます。でも私は、真実を知りたいんです。」
アリアは、レオンの言葉に頷きながら、空を見上げた。夕闇が迫り、星々が瞬き始めていた。
「前回現れた影と王宮の秘密が繋がっている可能性が、高まってきましたね。」
アリアは、呟いた。
「…アリアさん、もし、何か困ったことがあれば、いつでも僕を頼ってください。私は、商売を通して得た情報や人脈を活かして、あなたをサポートします。例えば、王宮内部の情報を探るための協力者を紹介したり、危険な場所へ潜入するための道具を用意したりできます。」
レオンは、アリアにそう告げると、占い処を後にした。
アリアは、レオンの背中を見送りながら、呟いた。
「…ありがとう、レオンさん。あなたの優しさに、感謝します。」
アリアは、自身の運命が大きく動こうとしていることを感じていた。そして、幼い頃から見る夢が、その鍵を握っているような気がしてならなかった。
(…私は、必ず真実を突き止める。そして、私の家族の無念を晴らす。)
アリアは、そう心に誓い、夜空を見上げた。星々が、アリアの決意を祝福するように、優しく輝いていた。
12話:終わり
〈登場人物〉
* アリア:主人公。占い師として、レオンの影の謎を解き明かす。東洋哲学の思想をレオンに伝え、トラウマ克服を促す。
* レオン:王都でも指折りの商家の跡取り息子。過去のトラウマに苦しむが、アリアの助けにより克服する。情報網を活かし、アリアに王都内外の情報を提供する。
〈読者の皆様へ〉
12話では、レオンが過去のトラウマと向き合い、克服する姿を描きました。アリアの言葉を通して、過去にとらわれず、今を大切に生きることの大切さ、そして自分の未来は自分で切り拓くものであるというメッセージを込めました。レオンから提供された情報により、王宮の秘密が徐々に明らかになっていきます。アリアの冒険はまだまだ続きます。次回の展開にご期待ください。
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※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。
作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。
あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。




