視界の月夜十話1
「……こほん。もうよいか?」
千夜が抱き合ってキスをしている逢夜とルルに言いにくそうに言葉を発した。
千夜の声により、逢夜とルルは驚いて体を離した。
「おうっ……お、お姉様っ!」
「せ、千夜!」
逢夜とルルは顔を真っ赤にしながらあたふたとしていた。
「逢夜……まがりなりにも忍だった男が私の気配に気がつかないとは……。」
「も、申し訳ありませぬ……。」
千夜の呆れたため息に逢夜はがっくりとうなだれた。
「お、お兄様……。」
ふと横を見ると憐夜が顔を真っ赤にして更夜の影に隠れ恥ずかしがっていた。
「お兄様、憐夜にあまり刺激的なものをお見せにならないでください。」
「す、すまん。」
更夜の無機質な声に逢夜は慌ててあやまった。
「あ、あのー……それで……千夜?どうしたのって聞くのも変だけどどうしたの?」
ルルが顔を真っ赤にしながらしどろもどろで声を発した。
「そうだな。逢夜とイチャラブするのはすべてが終わってからにしていだたこう。」
「いちゃらぶ!?」
千夜からそんな言葉が出てくるとは思わなかった残りの三兄妹は目を丸くした。
「いちいち反応するでない……。言った方が恥ずかしいではないか。ま、まあいい。ルルのシステム改変に移行するぞ。」
千夜は若干頬を赤く染めると残りの弟、妹達をそれぞれ見回した。
「はい。」
千夜の一声で逢夜達は顔を引き締め、しっかりと頷いた。
「システム……変換?」
ルルはちょっと前の事を思い出していた。逢夜がシステム変換は失敗すると消滅する可能性が高いと言っていた。もしくはまったく違う神になってしまうとも言っていたような気がする。
「……ルル。」
逢夜はルルが震えている事に気がつき、そっと肩を抱いてやった。
「や、やっぱり……そっちになるんだね。」
「ルル、それは違う。こないだ言った案とは全く違うんだ。実は、さっき、更夜から話を聞いて……これは俺にも危険が及ぶ。万が一消えるなら……一緒に消えようぜ。」
逢夜がルルにほほ笑んだ。
「……。」
ルルはまだ不安げな顔をしていた。
「……ルル、俺の姉、弟達を信じてくれ。これを行えるのは運命かもしれないんだ。」
「……どういう事?」
逢夜の言葉が理解できなかったルルは不安げな顔のまま尋ねた。
「更夜が……俺の弟がたまたま、視界の、弐の世界の時神過去神なんだ。……だからできる事だ。」
「どういうことかわかんないよ……?」
ルルが何かを聞き返そうとした時、千夜が逢夜の話を切った。
「逢夜、ルル、やるぞ。……更夜!」
「お任せください。」
千夜の掛け声に更夜が素早くしっかりと答えた。
作戦はルルが詳細を聞く前に始まった。




