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視界の月夜八話2

 ルルは空虚な目をしたままぼうっと逢夜と手を繋いでいた。ルルの世界から離れ、先程の宇宙空間のような場所に戻っていた。

 逢夜はルルの変貌を心配したがあえて何も言わなかった。

 なんとなくルルが考えていることがわかったからだ。


 ……私はひとりか……。もし……この件が上手く行ったら……俺は……。

 逢夜は首を振った。


 ……今は考えるな。ルルを救えるかどうかすらわからねぇんだ。

 逢夜は表情を歪ませながら姉弟がいる世界へと無言のまま入り込んだ。


 ルルはうつむきながら逢夜の後をついてきた。


 逢夜の姉弟がいる世界は白いきれいな花に覆われた世界だった。白い花畑の真ん中に瓦屋根の日本家屋が一棟建っている。


 「ルル……。」

 「……大丈夫……。」

 心配そうな逢夜にルルは頷いて答えた。表情に生気を感じられなかった。


 「やっと来たか。」

 日本家屋の玄関に立った時、銀髪の小柄な女が少し柔らかめの表情で声をかけてきた。

 子供のような外見の彼女は逢夜の姉、千夜である。

 昔、男として育てられたため服装は羽織に袴と男性の格好をしている。


 「千夜お姉様、ルルを連れてきました。」

 「……その生気がない娘がルルか。」

 千夜はルルを見て首を傾げた。


 「はい……少し色々とありまして……。」

 「まあ、入れ。中に更夜と憐夜もいる。他の時神達は今は旅行中でいない。」


 千夜は逢夜とルルを家にあげた。千夜が言った時神というのはこの世界の住人で弐(視界)の時間を管理している神である。現代神のスズという少女、そして未来神のトケイという少年、それから逢夜の弟、更夜の三人が時神だ。時神達は今、逢夜達と同居している。

 今回は関係がないので説明を省く。


 千夜は逢夜とルルを連れて和室の一室へ案内した。障子戸を開けると逢夜にそっくりの弟更夜、そして末の妹の憐夜が座っていた。更夜は憐夜の人形遊びに付き合わされている所だった。辺りにはままごとで使ったらしい子供用の玩具が散らばっている。


 「憐夜、例の子……ルルが来たようだ。少しだけお姉様達とお話させてくれ。」

 「はい。更夜お兄様、遊んでくださってありがとうございました。」

 憐夜は更夜に満足そうな笑みでお礼を言うと脇にそれて座った。


 「憐夜、更夜に遊んでもらってたのか。更夜じゃつまんねぇだろ。今度、俺も遊んでやるよ。」

 逢夜は憐夜にほほ笑んだ。しかし、憐夜はじっとルルの方を見つめていた。


 「……?憐夜?大丈夫か?」

 「逢夜お兄様……ルルさんはどうして悲しそうな顔をしているのですか?」

 憐夜は逢夜によく似た水色の瞳で心配そうにルルを見据えていた。


 「……。」

 逢夜は憐夜にどう言うか迷っている雰囲気だった。しばらく黙り込んでいた逢夜はやがて決心をし、憐夜と千夜を視界に入れ、重たい口を開き話はじめた。


 「……千夜お姉様、憐夜……今は俺じゃあルルの心に入れない。こういう話は女の子同士の方がいいんだ……その……ルルは……」

 「わかった。」

 逢夜の言葉を千夜が途中で遮った。


 「本題より先にルルの方が心配だ。私と憐夜がルルの様子を見る。逢夜、更夜は少し外に出ていろ。……それから逢夜、お前も更夜とよく話せ。お前の顔色も悪いぞ。」

 千夜は逢夜が言おうとしていた事のすべてがわかった。

 そして見抜いた。ルルと逢夜が共に苦しんでいることを。

 何で苦しんでいるのかもわかってしまった。


 「……お姉様、私は大丈夫です。」

 逢夜は千夜に丁寧に答えたが千夜はゆっくり首を振った。


 「こっちもルルの話をちゃんと聞いてやりたい。少し時間がかかる故、逢夜もちゃんと自分の気持ちを固めろ。私には女心はわかっても男の心はわからん。まあ、いいからちょっと出ておけ。」

 千夜は逢夜に諭すように言うと更夜と共に外へと追い出した。

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