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視界の月夜四話2

 「んん……。」

 太陽の光と鳥の鳴き声でルルは目を覚ました。


 「……あれ?また私、知らない内に寝ちゃったの?」

 ルルは寝ぼけ眼をこすりつつ辺りを見回した。机にキッチン、テレビと積まれている本……。


 「ここ、私の家……。」

 ルルは自分の家で布団をひいて眠っていたようだ。


 「おかしいな……布団を引いて眠った記憶がないんだけど……はっ!逢夜は!?」

 「ここにいるぜ。昨日も同じ会話したよな。」

 ルルが逢夜を探し始めた時、すぐに近くで逢夜の声がした。よく見ると高く積まれた本に隠れるように逢夜が座っていた。手には本を持っている。


 「逢夜、また本読んでいたの?」

 「ああ。俺は本好きだからな。」

 ルルは立ち上がって大きく伸びをすると逢夜の方へ歩いて行った。


 「何読んでいるの?」

 「厄神の仕組みについてだ。もうちょっと厄の事を知ろうと思ってな。」

 「そ、そう……。……ね、ねえ?私ってまた何かした?」

 ルルが逢夜の顔色を窺いながら尋ねた。


 「別に何もしてねぇよ。昨日行ったあの湖でお前がウトウトと眠そうだったんであの湖付近の歯科医院の厄除けの神に鶴を呼んでもらったんだ。鶴が引く駕籠の中でお前が気持ちよさそうに寝ちまったから起こさないようにそこの布団に寝かせたってわけだ。」


 逢夜は本を閉じると伸びをして立ち上がった。


 「また私が迷惑かけたんだ……ごめん……。」

 「あやまるこたぁねぇよ。疲れてたんだろ。」

 ルルは申し訳なさそうに下を向いたが逢夜は全く気にしていないようだった。


 「はあ……役に立ちたいって言ったけど何の役にも立ててないね。私……。」

 「いや、そんなことはねぇよ。この大量の本とルルのおかげでここまで調査が進んだ。」

 逢夜は軽くほほ笑むと眩しそうに太陽の光を手で遮った。


 「逢夜は忍だから日の光とか苦手なの?」


 「いや、別にそういうわけじゃねぇけど眩しいぜ。朝に起きるのはやっぱり普通なんだな。俺はいつも夜動いてたからなあ。ああ、朝飯とかどうする?あるもんで俺が作ろうか?」

 逢夜が台所へ向かおうとしたのでルルは慌てて止めた。


 「あ、じ、自分でやるから大丈夫!逢夜はお腹すかないんだよね?じゃあ、私だけだから朝ごはんは自分でやるよ!」


 「あー……ちょっと俺にやらせてくれ。現世の台所を使ってみたいんだ。」

 ルルが何かを言おうとしたが逢夜が止めた。そのまま逢夜は台所へと行き、何か料理を始めた。


 ……ルルに厄の原因について話すべきか……このまま言わないで裏で何とかするか……。

 逢夜は考え事をしたいがために台所に立った。料理を作っている間に結論を出すつもりでいた。


 弐の世界、視界(霊魂夢幻の世界)で現世の調理道具は扱った事があるので別に珍しいわけではなかった。


 逢夜がサクサクと何かを料理しているのでルルは首を傾げた。


 「お、逢夜……フライパンとか使い方わかるの?逢夜が亡くなった時にはなかったと思うんだけど……。さ、サラダ油も……。」


 逢夜がフライパンに油をひきコンロに火をつけ、フライパンを温めている。ルルは逢夜が現世の調理器具を何一つ知らないだろうと思っていた。色々と聞いてくるかもしれないと構えていたが逢夜は何一つ聞いてこなかった。


 逢夜はフライパンを温めている間、手際よくキャベツやニンジンなどの野菜を切った。


 「……は、はやい……。」

 ルルは知らずの内に逢夜の横に立っていた。包丁さばきの早さに目を丸くしながらルルは逢夜の動きに見入っていた。


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