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学園のまにまに サヨ

挿絵(By みてみん)


「ただいまー!おにぃ!焼き芋あった!化学部が得たいの知れない炎使ってやったやつで……。て、あれ?」

望月サヨは『超常現象大好き部』の部室に入った。


サヨの兄、望月俊也はだらしなく椅子に座って寝ていた。


「もー!おにぃは!!文化祭中なんですけど!誰か展示物見に来たらどうすんの!皆昼食べに行ってるからってこりゃナシリング!マジないんですけどー。萎えたんだわ」


サヨは冷たい目で俊也を睨む。俊也は起きる気配はなく口も半開きだ。まるで魂がないかのように。


「サヨっち、俊也君は悪くないよ。俊也君の魂が連れ去られたんだ。生気がないよ……彼」

サヨの横から顔を出した日高サキが俊也の青白い顔を見つめつぶやいた。

日高サキの後ろから時野アヤも現れ俊也を確認する。


「ドアがあるわ。俊也君のすぐ後ろに……。俊也君、死んでるわけじゃないのよね……。んん……このドア、ライの?」

時野アヤは俊也の後ろにぼんやりとある扉をよく眺め、芸術神ライが夢幻の世界、弐の世界に行くために使用する扉だと結論づけた。


「なになに?」

サヨは興味深々で時野アヤの肩先から顔を覗かせた。


「……ということは……ライが俊也君を夢幻霊魂の世界へ連れて行った……?とにかく生きた魂が入ってはいけない場所よ!追いかけましょ!」


「おにいはなんで霊魂の世界に?……あ!先祖だ!先祖に会いに行ったのかもー」

サヨは別に焦るわけでもなく思い出したように手を叩いた。


「呑気な事言ってられないわよ!」

反対に時野アヤは焦っていた。


「あ、弐の世界に行くのかい?あたしは留守番しとくよ。お客さん来るかもしれないからねぇ」

日高サキもサヨ同様に抜けた返事をした。

時野アヤはため息をついた。


「じゃあ、いこっか!秒で」

サヨが面倒くさそうに投げやりにドアを開けた。


「ちょっとサヨ!慎重に……」

時野アヤが言った刹那、サヨと時野アヤはドアの奥へ吸い込まれていった。


日高サキは吸い込まれたふたりを確認するとゆっくり立ち上がった。

「さあてと……サル。ちょっくら上の神々に挨拶してこなきゃねぇ。友達の尻拭いは大変だよ。学校に通っているのもアヤがさみしくないようにだし」

「では。会議を開くよう報告してくるでござる……」

すぐ近くで男の声だけがし、すうっと気配も消えていった。


「きゃああ!……って、あれ?」

サヨは絶叫をあげていたが我に返った時には白い花畑の真ん中にいた。


「気絶しなかったわね……」

時野アヤはため息混じりに辺りを見回した。


「ここは……夢幻霊魂の世界を守る時神がいる世界……だわね」

時野アヤはすぐ目の前で口をポカンとあけて驚いているライを見つけた。


「やっぱりライ……」

「アヤ!?」

ライは目を丸くして時野アヤとサヨを見ていた。


「アヤ、この人……神だねー。誰?」

サヨは呆れた顔でライを見据えた。


「芸術神ライよ。で、隣にいるのは……」

「うわっ!びっくりした!!」

ライの隣に銀髪で着物を着た青年が眼光鋭くいつの間にか立っていた。サヨは全く気がつかず腰を抜かすほどに驚いていた。

銀髪の青年はなぜか最新の眼鏡をつけていた。


「サヨ、この方はあなたに関係があるわ。望月更夜さん。この世界の時神よ」

「へー。さっきからいたの?全然いたことに気がつかなかったけど。先祖的な人が神ねぇー。まあ、いいや。で?おにぃは?」

時野アヤの説明をてきとうに流したサヨは更夜に俊也の行方を尋ねた。


「あなた、やっぱり軽いわね」

時野アヤが呆れている中、更夜がちらりとライを見た。

ライは更夜を仰ぐともじもじしながら口を開いた。


「えー……その……あなたのお兄ちゃんが先祖に会いたがっていたというのと……直接の先祖さんである千夜さんが会いたいって言ってて……」

「だからって生きてる魂をこちらに入れたらダメでしょ!」

ライに時野アヤは厳しく言いはなった。


「いやいや……アヤだってほら……」

ライはしょんぼりしながら時野アヤの後ろにいたサヨを指差す。

「あ……」

時野アヤは顔を赤くした後、さあっと青くなった。


それを横目で見た更夜は時野アヤとサヨを諭すように口を開いた。


「まあ、お互い様だな。俊也とかいう少年もすぐに向こうに戻す故、あなた達も戻ってよい」


「しかしあれだねー、ハロウィンの真逆だよ。おにぃはー。自ら会いに行ってどーするって感じ?お盆とかも逆にうちらが遊びに行ったりしてー。超ウケるんですけど。アゲポヨだわー。はあ……」

サヨは呆れた顔でため息をついた。全然アゲアゲには聞こえない。


「とりあえず、一度戻るわ。ライ、戻して」

「はーい。俊也君はすぐにそっちに連れてくから待っててー」

ライは申し訳なさそうに言うと筆を取り出し扉を描いた。


「どうぞ」

ライが筆を手から消し、扉に手を差し出した。


「どうもー」

「じゃあ、一回帰るんだ?」

「帰るわよ。下手したらあなた達兄妹とも戻れなくなるわ」

不思議そうにしているサヨを引っ張り、時野アヤは扉を開いた。

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