学園のまにまに 俊也1
十月三十一日。
ハロウィンと呼ばれる行事の真っ只中。
外は秋模様で落ち葉が舞い、なかなかに寒い。
俊也が行っている学校はなぜかこの日に文化祭をやるようだ。
たまたまか否か。
「ハロウィンは先祖の霊が家族の元に帰る日、秋の収穫祭」
俊也はなにか引っかかっている顔で文化祭開催中の部室でボケッと椅子に座っていた。
現在はお昼なため展示物を飾っている『超常現象大好き部』に来ている客はいない。皆昼飯の最中だ。こんな暇な時間に留守番を頼まれ俊也はため息をつきながら展示物を眺める。
いままで起こった謎現象、この世界にいる神々についてをおもしろおかしく紹介中だ。
なんだかオカルト好きや創作物好きのたまり場になりつつあった。
でも、その人達も昼飯の屋台に並んでいる。
「……暇だ。時野さん達どこまで行ったんだろ」
時野アヤ、日高サキ、妹のサヨは今はいない。俊也の昼飯を買ってくるついでに散策しに行ったらしい。
しばらくぼうっとしていたらふわっと金色の髪が見えた。
よく見るとこないだ会話した芸術の神ライだった。
「あ!」
俊也は入ってきたライに声をあげたがよくよくこないだを思い出したら俊也は彼女と会話をしていない。
……日高さんの話だとあれは夢?だったみたいだしあの『やくそく』を知ってるわけないよね。
「あれ?あなたはこないだ見たアヤ達と一緒にいた人かな?」
ライはやはり初対面な話し方をしてきた。
「うん。そうそう。僕達、話したことなかったよね?」
俊也は確認のためにあえてそう尋ねた。
「そうね。話したことはなかったかな?でも先祖を探している子って事は知ってるよ。文化祭だし、ハロウィンだからいけるかもとあなたを探していたんだよ。私が見えるみたいだし」
「ん?」
ライの言葉に俊也は首を傾げた。
「あ、えーと。アヤ達には内緒なんだけど、ご先祖に会わせてあげたいなーとか思って……その……」
「先祖に会える!?何?マジだったの!!」
俊也のリアクションにライは目を丸くして後退りしていた。
「え?何?どういうこと?」
「あ……あ、いや……えーと。たぶん夢?の世界で君に会って先祖に会わせてくれるって約束を……」
「私は今思いついてここに来たんだけど……」
「そ、そっか」
なんだか気まずい雰囲気になった。
……そういえば日高さんがもうひとつの世界が云々って言ってたなあ。よくわからんけど僕が会話した彼女は『もうひとつの世界の彼女』だったらしい。
「ま、まあ、とにかくアヤ達がいない内に先祖に会いに行こう!私もあなたの先祖に関係があるし、何よりあなたの先祖があなたに会いたがっている。アヤ達がいたらあなたをアヤ達から離してこの話を持ちかけようと思っていたの」
「先祖が僕に会いたがっている!僕も会いたい!」
俊也は気分が上がってライにがっつく勢いで言った。
「う、うん。わかったわよ……。連れていくから待ってて」
ライが明らかに退いていたので俊也は咳払いをして「ごめん」とあやまった。
「私は人の心に作用する芸術神。人の心に住む霊のところに行ける。といってもたまたま私があなたの先祖に関わりがあっただけだけどね。あなたの先祖はよく知っているから会わせるのはたぶん容易いよ!」
ライは微笑んでから一本の筆を取り出した。




