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学園のまにまに十二話4

時野アヤは俊也の後ろを心配そうについてきた。

……心配させてる僕も僕だけど……かわいいよな……時野さん……。

……じゃなかった。


「あ、あの……」

「!?」

俊也は金色の髪の少女絵括神ライに声をかけてみたがライは突然人間から話しかけられたので腰を抜かすほどに驚いていた。


「あ、ライ、彼は見えるわ」

時野アヤがさらりと言った言葉でライはほっとした顔を向けた。


「びっくりしたー……。突然人間さんに話しかけられたから頭真っ白になっちゃったよ。でも白っていい色だよね」

ライが先を続けようとしたので時野アヤが止めた。


「それよりね、彼がお話したいみたいよ。……ライは絵の関係の話をするととっても長くなるのよ」

時野アヤがライに要求をさっさと話すと俊也に向かい小声でそう言った。


「そ、そうなんだ。ま、まあいいけど、お話いいかな?」

「お話……?いいよ」

俊也にライは快く頷いた。妹の音括神セイは不安げな顔で様子をうかがっている。


「実は先祖の話なんだけど……」

俊也は不安げに立っているセイを横目で見つつ、ライに口を開いた。


「僕の父、望月深夜が君が望月憐夜(もちづきれんや)って方と関係があるらしいと言っててね……」

「ああ、望月家!?深夜さんの子供!?」

ライは俊也の父を知っているようだ。


「父さんを知ってるの?」

「え?有名だよ?神々の中だと私達が見える!って」

「そ、そうなんだ……」

俊也はライの発言におされながら父が有名ならサヨはもっと有名なんだろうと思った。


「妹も見えるんだけど……」

「妹?そうなの?」

俊也は試しに聞いてみたがライは知らないようだった。


……妹は有名じゃないんだ……。


「あ、あの、それで望月家が私になんの……」

ライは戸惑いながら俊也に声をかけてきた。


「あ、えーとその憐夜さんって直接の先祖だったりするのかな?」

「ないと思う……けど。憐夜さんは十歳だったし……」

俊也の問いかけにライは首を横に振った。


「逢夜さんとは兄妹なんだったよね?」


「うん。妹よ。四人兄弟の一番下が憐夜さん。そこにいるアヤは三番目の更夜(こうや)さんと関係があるの。更夜様……あ、更夜さんは霊や生物の心の世界の時間を守る時神さんなの……って、わかるかな?」


「わからない……すんません。わかりません……」

「つまり……夢の世界の時間管理をしてるのが更夜様……更夜さんなの」

ライは話して良かったのかと時野アヤを見た。


「ライ、人間にしゃべりすぎよ。それから更夜さんのファンになりすぎだから。なによ、様って……」

時野アヤはあきれた顔をしていた。彼女達は俊也の先祖について昔から知っているようだ。


……何を言ってるのかはわからないけど。


「じゃあ、その更夜さん?って人?人なのか?が先祖なのかな?」


「なんでそんなに先祖にこだわっているのかわからないけど、たぶん更夜さんじゃないわよ。彼にはたぶん、正式な子供はいないわ。生前に隠し子とかはいたかも知れないけどわからないわね」

俊也の質問に答えたのは時野アヤだった。


「ていうか、時野さん、僕達の事、知ってたの?望月家についてやたら詳しいけど……」


「……更夜さんについてしか知らないわ。彼は夢、霊魂の世界の方で時神になったから私は知っているの。あなたのお父さん、望月深夜さんは有名だから知ってるけどね」

時野アヤはさらりと言った。


「ちょっと待って。霊魂の世界?と、言うことは……霊に会える世界があるんだね」

なにげなく言った俊也の言葉に時野アヤは固まった。


「……口を滑らせたわね」

「どうやって……」

俊也が言いかけた時、何かが引っ付いてきた。


「あーそーぼー!」

「あら、イナじゃないの」

時野アヤに言われて俊也はズボンに引っ付いている小さな女の子を見る。


……ああ、本当に同じことが起こるんだなあ……。


変な感心を覚えてからもう一度ライに目を向けた。

しかし、ライと妹のセイはいつの間にかいなかった。コンサートははじまり、辺りが賑やかになった。手が寒くなったのでなんとなく上着のポケットに手を突っ込む。


「……ん?」

俊也はポケットに紙が入っていることに気がついた。取り出すと丁寧に四つ折りになっていた。

広げてみる。


紙にはライからのメッセージがかわいらしい絵とともに書かれていた。


……私はアヤ達の文化祭に遊びに行く予定だからその時に先祖の件は考えてあげるね。

文化祭は夢みたいな時間を過ごせる行事だから……。


と、意味深なメッセージが残されていた。

俊也は首を傾げたがコンサートが本格的に始まるとそちらに意識がいってしまっていた。

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