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学園のまにまに十二話2

十四時からのコンサートに間に合うようにサヨと俊也は電車に乗っていた。

「しかし、無料でチケット配布するって意味あるのかな?」

「人数制限したかったんでしょ。たぶん。人気のアゲアゲ歌手たんだから」

「なるほど!」

そんなてきとうな会話をしていたら降りる駅になった。二人は素早く電車から降りて改札へ向かった。


……この改札もやっぱ通った気がするんだけどなあ……。


改札はカードで出る改札口の方が多かった。少し田舎な駅だが新しい設備はしっかり整っているようだ。


「おまたりおーん! 」

「おまたりおん!?」

ぼうっとしてた俊也はハッと我に返った。

気がつくとサヨが待ち合わせていた日高サキ、時野アヤに手を振っているところだった。


……あの独特な言葉……。

……やっぱり聞いたことがある!


「俊也君?どうしたんだい?」

気がつくと日高サキが不思議そうな顔でこちらを見ていた。


「あ、え?い、いや……なんでもない」

「なんか顔色悪いわよ?」

時野アヤも心配して顔を覗きこんできた。


「あ、あのさ、これ前にもなかった?」

「はあ?」

俊也の意味不明な発言にサヨが呆れた顔でため息をついた。時野アヤは俊也の言葉の意味を考えているのか黙り込む。


「えーと、なんでもない」

「……」

俊也の発言にこっそり眉を寄せたのは日高サキだけだった。

そんな微妙な空気を無くしたのはサヨだ。


「あー、ちょっとトイレいきぽよー!まだ開始まで少し時間があるから!」

「そっちじゃないわよー!トイレの場所わかってるの?ついていくわ。サキ、俊也君、ちょっと待っててね」

サヨがてきとうに走って行ったため時野アヤは慌てて追いかけていった。


「おけー!」

日高サキは手で丸をつくると手を振って送り出した。


「で……、ちょうどふたりきりになったから……」

日高サキはすぐに俊也の方を向いた。


「な、何?」

俊也は一瞬まさかと思ったが日高サキが俊也にアタックしてくるとは考えにくかったのですぐに呼吸を整えた。


「あんた、『向こう』とリンクしてんじゃないのかい?」

「はい?」

俊也が訝しげな顔で首を傾げたので日高サキは慌てて言葉を繋げた。


「えーと……同じ事をやってるなーとか思ったりしてるかい?」

「あ!」

日高サキが突然に確信をついた事を言った。


「思ってる!思ってる!」


「やっぱり……。ああ、説明するとねぇ、世界は二つあるのさ。こちらと向こうがね。この二つの世界は昼夜が逆転しているだけで同じ世界なんだよ。今、こちらが昼だから向こうは夜なんだ。でねぇ、こちらと向こうには同じ人間が同じ事をしてる。つまり、同じ人間がふたりいるのさ。俊也君はなぜか向こうの世界も経験し、こちらの世界も経験しているという不思議な現象を体験してるわけだ。向こうの世界で起きたことは次の日こちらで起きる。昼夜が逆転しているからね。こちらはバックアップの世界とも言われてるけどどうだかねぇ」


「はい?」

俊也はもう一度首を傾げて同じ言葉を吐いた。日高サキが言ってることはほぼわからない。


「だから、君は異常なことにもうひとりの自分が体験することをダブってしてるってことかな?」


「ど、どゆこと?本来は僕がふたりいるって言いたいの?」


「そういうことだね。あたしは太陽神で太陽と共に生きているから単体なんだ。向こうで太陽が沈んだらこちらで太陽が出る。つまりあたしは向こうとこちらの両方の結末を知っている。あたしはふたりいない。この現象に君がなっている。まあ、一過性のもんだと思うよ。今日だけ君のデータがおかしいんだろう。明日になれば夢としてバグの修正がされるだろ」


「は、はあ……」

俊也は呆然としながら目を丸くした。いきなり世界が二つありますと言われて頷けない。


「ま、今を楽しみな!ちなみにサヨもアヤもあっちの世界のふたりじゃなく『こちら』のふたりだから君が体験した話をしても知らないよ」


「僕が知ってるふたりじゃないってこと?」


「君は向こうでもこちらでも同じように生きていたから人間関係は一緒さ。だから普通にしてたらわからないんじゃないかな?」


「ふ、普通にか……。なるほど……」

なにがなるほどなのかわからないがこれは夢だと割りきることにした。とりあえず、新鮮な気持ちで普通を心掛けるようにしよう。


パラレルワールドに入り込んでしまったみたいである。なんだか神々を見るようになってから得たいの知れない現象ばかりだ。

これぞ、超常現象……。

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