学園のまにまに十一話2
土曜日になった。
十四時からのライブに間に合うように俊也とサヨはお昼を食べて電車に乗っていた。ちなみに今日は寒い。
さすがのサヨも薄手のコートを羽織っていた。
「しかし、神社でライブなんてしていいのかな?罰当たりな気がするんだけど」
「いーんじゃん?別に。昔から祭りとか神は好きだよ?たまに得たいの知れない奇祭をめっちゃ楽しんでたりするし」
俊也の言葉にサヨが軽く答えた。
「サヨはよく神様が祭りにいるところを見るの?」
「見るってか、テレビのニュースとかで祭りの報道とかしてんじゃん。それにチラ映りしてたりすんの」
サヨが答えた時、目的の駅についた。
俊也は電車を降りながらふと思った。
……じゃあテレビに神様が普通に映ってたってこと!?
「サヨ、いままでのニュース、録画してある?」
突然の俊也の言動にサヨは訝しげに振り向いた。
「はあ?そんなの録ってるわけないじゃん。ニュース録画してストックしてる奴とか見たことないんだけど。頭平気?」
サヨは生意気にも指で頭を叩く仕草をしていた。
「いるかもしれないだろ。失礼な奴だなー」
俊也はムッとした顔でサヨを睨んだ。
「おにぃはそういう顔するとかなり怖いのに、いつもなんで抜けてるのかねー?」
忍の血族とやらが残っているのか俊也が相手を睨み付けるとすぐに怖がられる。
なんというか威圧があるんだそうで。
怖い人に思われるのは女の子にモテないので柔らかくいることにしている。
そういえば、ヤンチャしていた中学の頃に喧嘩をして相手を睨み付けたら怖がられ、その後、どこかで喧嘩を見ていたかなんかの関係ない女子から告白をされた事はあった。
俊也はなんだかわからなかったが邪に喜び理由を聞いた。
女子は
「私、危ない系男子が好きなの。私と付き合ってください」
と言っていた。
危ない系の男子と言われたことに俊也はショックを受け、半泣き状態でその場を走って去ってしまった。
後日、その女子から
「半泣きで逃げるなんてマジないんだけど!弱くてダサい男は嫌!」
と全面的に断られ、俊也はしばらく部屋にこもって号泣したという苦い思い出がある。
まあ、青春の甘酸っぱすぎる思い出だ。
ボケッとそんなことを思い出していると時野アヤと日高サキが駅に来て手を振っていた。
先に到着していたようだ。
この駅は古い駅だが寂れてはいない。都会と田舎の真ん中のような駅である。改札も切符ではなくカードで出る専用改札の方が多い。
「アヤー!サキー!おまたりおーん!」
サヨが飛び跳ねながら定期券で改札を出た。それをため息混じりに見つめながら俊也も改札を出る。
「おまたりおんって……普通にお待たせじゃダメなのか?」
「こういうのは雰囲気!」
サヨの言葉に俊也は再び深いため息をついた。
「サヨ、俊也君、一応場所の確認してきたわよ」
「うん。こっから近いよ」
時野アヤと日高サキはサヨの言葉に反応せず、場所を言い始めた。
「なんか屋台とかも出てるよー!神社は前に行った稲荷神がいた神社あるじゃないかい、あれの分社らしいよ」
日高サキが追加情報を興奮ぎみに語りだした。
「ま、とりあえず現地に向かおうか」
「そうだね」
俊也の言葉に日高サキは頷き、言葉を切ると歩き出した。
「前に行った神社の稲荷神って廃校の裏にあったあの神社の?」
改札を出てかろうじて分かれている歩道と車道の歩道を歩きながら俊也が尋ねた。
「そうそう、廃校になった時に学校が合併したらしいんだけどその新しい学校の近くに稲荷神の分社を建てたらしいよ。今はこっちのがキレイで大きいからこっちのが本社だと思うけどねぇ」
日高サキがケラケラ笑いながら神社のうんちくを語る。
閑静な住宅地を抜けると祭りらしい賑わいの音が聞こえてきた。
コンサートのチケットがなくても屋台でそこそこ楽しめるので子供連れが多い。
「しかもここの稲荷神は子供に人気なのよ。まあ、姿が姿なんだけどね。見えなくても子供は何かに共感するのかしら?」
時野アヤが賑わう親子達を眺めながらつぶやいた。
サヨは話を全く聞いておらずカラフルな屋台をバックにカエルのぬいぐるみ、ごぼうちゃんの写真を撮っていた。
「映えるー!」
「はあ……」
俊也はため息をつくと「会場はあっちかな?」と見て見ぬふりをした。




