学園のまにまに十話3
次の日。
俊也は頭を抱えつつ超常現象大好き部の部室に入った。今日もうだるような暑さであり、それは夕方になっても変わらずに暑いままだ。特に超常現象大好き部にはエアコンがない。
「俊也君、大丈夫?」
先に来ていた時野アヤが俊也を心配そうに見ていた。
「うん。大丈夫!昨日は行かなくてすんません」
「いいわよ。特に活動してないから」
自分が部長ながらずしんとくる言葉だ。
「よし、なんか考えよう!」
俊也が意気込んだ時、日高サキとサヨが談笑しながら部室に入ってきた。
「考えるって何を?」
「活動をだよ。皆で神様見に行こう!」
俊也の言葉に時野アヤ、日高サキが目を丸くした。ちなみにサヨはほとんどを聞き流し、机にカエルのぬいぐるみゴボウちゃんを並べている。
「神様……ねぇー」
「おにぃ、そこにいるじゃん」
時野アヤと日高サキが顔を見合わせる中、サヨがさも当然のようにふたりを指差した。
「やっぱり……やっぱりそうなんだね」
「うっ……」
俊也に見られて日高サキが詰まった。
「じゃあ、そんなに神が見たいならいっそのこと神を見よう部にしたらいーじゃん?」
サヨの言葉に俊也は眉を寄せた。
「いやいや、それじゃあなんかオカルト集団みたいじゃないか!なんかもっとふんわりした感じがいいんだよ」
「ふんわりも何もはじめからオカルトじゃーん」
俊也とサヨの言い合いを聞きながら時野アヤは日高サキに目を向けた。
「この兄妹、やっぱりまともじゃないわ」
「望月深夜の力かねー」
俊也は日高サキの言葉に眉を寄せた。
「なんで日高さん、父さんを?」
「え?あ、えー、うーん、まあ知ってるだけさ」
なにか曖昧に濁されたが俊也はそれよりも神を見ることに意識がいっていた。
「まあ、いいけど、やっと活動らしい活動ができる!」
「どーもブッ飛んでるねぇ……。普通は怖くないかい?なんでそっち行く!?」
日高サキは半笑いで俊也のぶっとんだ思考に頭を抱えた。
「で?どうすんの?おにぃ」
サヨが興味ありげに尋ねてきた。
「ひとつ考えたんだ。日高さんがハマっているジャパゴってゲームあったじゃない?僕はあれに出てくる神様をこの世界で探してみたいんだよ」
俊也は腰に手を当て鼻息荒く提案した。
「あれはさすがに有名神すぎて見つけても会えないさ。ジャパゴは有名な神々をイケメン化してるからねー」
日高サキが半笑いで俊也を見たが「まてよ……」と考え込んだ。
「サキ、やめた方がいいわよ」
「アヤ、まだなんも言ってないじゃないかい!ジャパゴで出てくるキャラクターの中に天御柱神ってキャラがいるんだけど……」
日高サキが途中まで言った所で時野アヤがストップをかけた。
「だからあの超弩級の厄神をもってくるのはやめなさい!!」
「えー。みーくんはいいやつだよー」
「いいかどうかは人間にはわからないわ!以前、俊也君は倒れたのよ!」
ふたりの会話を聞いて俊也は恐る恐る尋ねた。
「ひょっとすると去年の夏の悪寒は……」
「みーくんが俊也君についてたんだよ。コントローラー動かしてたのはみーくんさ」
「こわっ!」
日高サキの言葉に俊也は軽く震えた。去年の夏はトラウマだ。
「まあまあ、今回は四人だし今年のジャパゴ祭は余裕で一位!そんでグッズゲットさ!!」
「サキ……また出る気?」
時野アヤにあきれられていたが日高サキは胸を張って頷いた。
「そのためにはほら、練習あるのみじゃないかい?ポケット版持ってきたから不安な俊也君から練習いこうか!」
日高サキは俊也の手にポータブルゲーム機をのせた。
「えっ……。やるの?僕は超常現象だけで……」
「いいからほら!今年は優勝するよー!」
俊也は無理やりゲームの大会へ出される事に再びなってしまった。
「えー、おにぃずるいー!あたしもやるー!!」
「サヨ……」
楽しそうな事には全力で食らいついてくるサヨにゲーム機を奪われつつ俊也はジャパゴの英才教育を受けさせられた。
神が神と恋愛できる恋愛シミュレーションゲームの姉妹作の対戦ゲームをやっている。
もうそれだけで超常現象だった。
というかゲームの説明が意味わからなくなった上に自分を自機にするという業をやる神々はさらに意味がわからない。
複雑すぎてだんだんわからなくなってきてしまった。
みーくんこと天御柱神はかなりのゲーマーらしくゲーム内の自分、天御柱神を自機に使うとのこと。
「やっぱり不思議だ!超常現象だ!」
俊也が興奮ぎみに日高サキの教育を受けながら叫んだ。
それを見た時野アヤはあきれながら頭を抱えていた。
「そりゃあ見える人間がまともなわけないわね。私が一番普通だわ」
時野アヤは静かに教科書を取り出すとこっそり宿題をはじめた。
俊也の戦いは続く。




