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学園のまにまに十話2

「えーと、まずはここ」

蝉がかしましく鳴く中、汗をぬぐいながら商店街にある神社に俊也は来ていた。


この神社は時野アヤが入部するきっかけになった場所である。

確かあの時は車が神社前で勝手に避けていくみたいな話があって時野アヤが『なにか』を引っ張って説教したら元に戻ったのだった。


「よし!行こう!」

スーパーの裏手にある神社。ひとりは不安だったがとりあえず神社の階段を登ってみる。

汗をかきつつ、温度が一度くらい違う社内に入ったら社の屋根に金色の髪が見えた。


「ん?キツネ?」


金髪の赤いちゃんちゃんこを着た青年が間抜けにも口をぽかんとあけて寝ていた。


……あ、キツネじゃないや。人間?か?


俊也はなぜキツネと間違えたのか疑問に思っていたがやはり見間違いではなかったようだ。彼の頭からキツネの耳がぴょこぴょこ動いていた。つまり、キツネ耳を生やした金髪の青年だった。


……キツネ耳!人間じゃない!もしかして時野さんに引っ張られてたのは……。


そこまで予想した時、神社の階段を誰かが登ってくる足音がした。

冷静に考えればただの参拝客なので慌てる必要はなかったのだがこの時の俊也は冷静ではなかった。なぜか慌てて茂みに飛び込み隠れた。


……あれ?隠れる必要はなかったよな?


首を傾げて元の位置に戻ろうとしたが歩いてきた人物を見て出ていくのをやめた。


……あれは、時野さんと……日高さん。


そういえば日高サキはこの神社で突然消えた。それを時野アヤは平然と眺めていたのを覚えている。

ふたりは本当にいつもの事のようにこの神社に現れた。


「じゃあまたね。サキ。今日は俊也君部室に来なかったわね。なんか心配だわ」

時野アヤは心配そうな顔で日高サキを見ていた。


……おお!時野さん、心配してくれてる!あ、いやいや、心配させちゃったか。明日はちゃんと部活に出よう!


「まあ、大丈夫だと思うけどねぇ……」

日高サキはやれやれと手を振ると手を横に広げた。


これは夢かと疑うような光景が次の瞬間現れた。日高サキは体からオレンジの燐光を放ち、突然に神々しい姿に変身した。頭に太陽を模した冠をかぶり、中国の王朝あたりが着ているかもしれない赤い着物に身をつつんでいた。


それはどこか……。


……昔の人が描いた神々しい神様の絵のような……。


……太陽神!太陽神だ!あの独特な冠!


気がついた時には日高サキの前にいままでなかった鳥居が見えた。鳥居の先は階段があったがどこまでも続いているように見えた。


日高サキは当たり前のように時野アヤに手を振ると階段をのぼっていった。


……あ!


瞬きをした直後、鳥居はもうそこにはなく、階段も日高サキの姿も元々なかったかのようになかった。

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