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学園のまにまに八話3

一同は学校を出て近くにある商店街とは逆に歩き出した。

「サキ、こっちは山なんだけどー」

サヨが不思議そうに日高サキを見据えた。


「いいのさ!こっちだよ」

日高サキはどんどん山の方へ歩いていく。今日は一段と寒いので皆マフラーをしている。


「なんだかオカルト系になってきたなあ……」

俊也は軽く苦笑した。


「確かに超常現象よりもオカルトに近いわね。霊とか」

時野アヤは顔を曇らせながら俊也に返した。


……時野さん、怖いのかな?

強がりなのもかわいい……

俊也が妄想を始めた刹那、日高サキが歩みを止めた。


気がつくと整備された登山道の前に来ていた。ここは山というよりは丘に近いかもしれない。この道を少しのぼると自然いっぱいの公園があったはずだ。


しかし、日高サキは登山道へ行くわけではなく、その登山道の近くにあるもう一本の道へ入った。

こちらの道も整備されていて歩きやすい。


「こっちだよ」

日高サキの誘導にとりあえず一同はついて行った。

しばらく歩くと大きな鳥居が堂々と建っていた。掃除もきれいにされていたのでけっこう人が来る神社らしい。


近くに立っていた看板を見ると縁結びの神として夫婦神が祭られているとあった。


「縁結びじゃん!映えるー!」

サヨは学校のカバンからカエルのぬいぐるみを取り出し撮影を始めた。


「それ、学校にまで持ってきてんの!?」

俊也が驚きの声をあげた。

さすが我が家の変人妹。


「それよりも!この社にあんたの先祖がいるよ!」

日高サキは興奮ぎみにサヨに詰め寄った。


「てか、忍者のはずだった先祖がなんで縁結び?チンプイなんだけど」

サヨは首を傾げた。


「えーと、確か稲城ルルが元厄よけの神で望月家の先祖がなんかしらでくっついて夫婦神になって縁結びになったらしいよ」

「はあ?」

日高サキの説明に一同はさらに首を傾げた。


「ま、待って!稲城ルルってまさか……エクレアの子?」

俊也が唐突に思い出し叫んだ。


「お!覚えていたかい?」

日高サキは楽しそうに笑った。


……じ、じゃあエクレアの時に夢で見たあの稲城ルルさんの横にいた銀髪の男性が先祖!?いやいや、夢だし。

もう曖昧だし。

俊也は顔色悪く頷いた。


「ねぇ?俊也君、顔色が悪いけれど大丈夫なの?」

ふと時野アヤが心配そうに俊也を見つめていた。


「だ、大丈夫だよ!時野さん。心配してくれてありがとう」

ビビっていると思われるのは恥ずかしかったので明るく声をあげておいたが上手くいったかはわからない。


「ああ、こんちー!私はサヨ!まさかルルと夫婦だったとは知らなかった。へー、逢夜(おうや)って言うんだー!!忍者?やっぱり!かっこいー!ああ、私とおにぃの先祖らしいよ!」

サヨが突然誰もいないところに話始めた。


……始まった……。僕には何も見えない。でも、サヨには……。


「……本当に見えているようね」

時野アヤがサヨと同じ所を見ながらそうつぶやいた。


日高サキはサヨを細かく観察してはちょこちょこ頷いている。


……まさか、皆見えているのか?


俊也はもう一度、目を凝らして見てみたが影すらも見えなかった。

俊也は唾を飲み込むと話途中のサヨに思い付いた事を言ってみた。


「ねぇ、サヨ、サヨが見ている男の外見って銀髪をひとまとめにしてて鋭い青い目をしている人?」


俊也の質問にサヨは眉をひそめた。そしてこう言った。


「当たり前じゃん。見ればわかるでしょ?」と。


やはりサヨは本物の見える奴だ。

その後しばらく何やら話をしていたサヨは満足げに頷いて笑みを浮かべた。


「満足したようね」

「あー、さっぱりした!でも、直の先祖じゃないみたいだった。うちらの先祖にも会ってみたい!」


「それは無理だわ。逢夜って人以外、皆霊でこちらの世界にはいないから。唯一、神になった逢夜さんだけこっちにいるみたい」


時野アヤの説明にサヨは残念そうに肩を落とした。


「でもいつか会ってみたいー!イタコの勉強でもしよっかなー?」

「やめなさい」

サヨの言葉に時野アヤは即答して切り捨てた。


「とりあえず用件は以上だけど、これからどうするかね?お茶とかするかね?」

日高サキが先程の事がいつもある事のように驚きもせず、次の遊び場を提案した。


「いーね!映えスイーツの店行きたい!」

「なんかキラキラピンクなカワイイは私は苦手なのだけれど」

時野アヤは呆れた顔でサヨを見据えた。


「大丈夫!不思議の国のアリスカフェだから!店員さんの格好とかマジユメカワだから!」

サヨは胸を張ると笑った。


「そのネーミングがそっち系じゃないの……」

「あたしはちょっと行ってみたいよ!コスプレとか見たいじゃないかい!」

日高サキの言葉にサヨは楽しげに頷いた。


一通り話がまとまると視線は俊也にいった。


「ねぇ?俊也君(おにぃ)はどうする?」

三人まとめて同じ事を問われ俊也は戸惑った。

「お、女の子のお店なんでしょ?そこ。僕にはちょっと……」

「じゃあ、行こう!経験、経験!」

控えめに断ったはずだがなぜか行くことになってしまった。


おかしいな……。


主にサヨと日高サキに引っ張られ俊也はアリスカフェとやらに連れ込まれた。


この日はとても寒かった。周りはオシャレな女の子だらけで俊也は心のどこかが寒さで震えていたのを覚えている。


ちなみに女の子達の方は男が一人混ざっていようがいまいが関係なさそうであった。寒さを感じたのは俊也のどこかもの寂しい感情の一部であったのだろう。

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