学園のまにまに八話2
次の日、眠い目をこすり、寒さに凍えながら俊也は終業式に出ていた。体育館で行う終業式はとても寒い。半分寝ながら校長の話を聞き流し、学校はすぐに終わった。
なんとなくすべてが普通の俊也は期末テストの結果も平凡で可もなく不可もなくであった。
故に補習もなく、赤点でもない。つまり、今日から冬休みである。ちなみにサヨも平凡だ。きっと彼女は頑張ればもっといけるだろうがなんせやる気がない。
ふたりは無事冬休みを向かえられた。時野アヤと日高サキも特に問題はないだろう。
彼女らはなぜかいつもワンツートップである。
少し前の一年全国模試でトップだったふたりにどうしてそんなに頭が良いのか聞いてみたことがあった。時野アヤは努力だと言ったが日高サキは意味深な事を口走った。
「え?そりゃあ、毎回同じだからねぇ。ここ十年くらいオンナジだし」
……ここ十年くらい同じとは……一体。
よくわからなかったので流すことにした。俊也の悪いクセである。
話を戻そう。
俊也は日高サキが待ち合わせ場所として指定した校門前で三人を待っていた。三人はすぐに現れた。
「同じクラスなんだから教室から一緒に行けば良かったねぇ」
日高サキは呑気に手をヒラヒラ振りながら俊也の前まで来た。
「おにい!昨日、話の途中でリダったでしょ!既読スルーだ!せめてスタしてってよー」
何を言っているのかわからん妹に俊也は苦笑いを浮かべ、とりあえずあやまっておいた。
おそらく昨夜、俊也が眠気に勝てずに寝てしまった事を言っているらしい。
……リダったとは離脱かな?スタとはなんだ?
「ああ、スタンプ押すってことか。最近はOK!とかおやすみ!とかキャラクターが可愛く描かれたイラストを絵文字代わりにのせるとか」
俊也はふむふむと頷いているとサヨが呆れたため息をついた。
「おにぃ、そんな事も知らなかったの?ジョーシキじゃん」
「サヨ、あまり俊也君を怒らないの。疎くてもいいじゃない」
時野アヤがどうでも良さそうにサヨに言った。
「まあ、いいけどー。私が作ったわけじゃないし、えらそーに言うのもなんか変だしー」
サヨはやれやれと手を振ると日高サキに目を向け尋ねた。
「で?どこいく?」
「ふふーん。あたしはついに見つけたんだよ!あんた、見えないもんが見えるって言ってただろ?先祖だと思われる忍者に会いたくないかい?」
日高サキは悪巧みをしているような不気味な笑みをサヨに向けた。
「え!?会えるの!?会いたい!見たい!でも、幽霊ならこの世に残っちゃってるじゃん!自縛霊とかじゃん!危なくない?」
「大丈夫さ!彼は神になっていたからねぇ」
「神!すごいっ!」
サヨの瞳がキラキラに輝いていた。
「ちょっと待ちなさい!そのために集まったの?俊也君まで呼んで……。やめなさいよ!」
時野アヤは日高サキに鋭く叫んだ。しかし、日高サキはどこ吹く風であった。
「だってこれ、超常現象大好き部じゃないかい?超常現象を楽しまないとー!」
「ないとー!!」
日高サキの言葉にサヨが便乗して一緒に叫んでいた。
時野アヤは本格的に頭を抱えてしまった。
「あ、あの……時野さん。僕は大丈夫だよ。元々そういう部活だし。僕がこういうのに興味を持ったのは僕には見えないものが見えていたサヨの影響なんだ。それとも時野さんはこういうのダメ?だったら無理しなくても……」
俊也は時野アヤを心配して声をかけた。
「無理はしてないわ。ただめんどくさくなりそうだと思っただけよ。いいわ。私も行くから……」
時野アヤはため息混じりに答えた。
……なんだ。時野さん。実はすごく行きたいんだ!かわいいっ!!
女の子のそわそわした感じいいなあ……。
俊也は時野アヤをほんわかした気分で眺めていた。しかし、時野アヤの方は本当に面倒くさいと思っていたようである。俊也はそれに全く気がついていなかった。




