表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/208

神々の世界14

「憐夜も心配だ……。厄にあてられていたらと思うと……」

更夜は憐夜も心配していた。

「……心配はわかるけども、今はこちらを……」

時神の世界に入り、足を白い花畑に踏み入れながらメグは静かに言った。

気がつくと白い花畑から逢夜、千夜が警戒しながら近づいてきていた。


「……お兄様、お姉様……先程は申し訳ありませぬ!」

更夜がその場で膝と両手をつき、深く頭を下げた。

「……なんだかわからぬが……更夜は戻ったようだな……」

千夜は腹を押さえながらため息をついた。先程、更夜の蹴りをくらってから時間が経っていない。突然に更夜が元に戻って帰って来たため、千夜は困惑していた。逢夜の方は眉を寄せると更夜を立たせて胸ぐらを掴んだ。


「……」


弱々しく項垂れる更夜を睨みつけてから更夜の腹を勢いよく蹴りつけた。更夜は吹っ飛ばされ近くの木に激突した。アヤ達は目を見開いて驚き、サヨは声を上げた。

「ちょっ……」

「逢夜!やめないか!」

サヨの声を遮るように千夜が鋭く叫んだ。逢夜の肩が軽く跳ねる。

「お姉様……あいつはお姉様に本気でやりました……。俺は許さない」

「逢夜!やめろ!やめてくれ……」

再び攻撃を加えようとした逢夜に千夜がすがりつくように止めた。


「やめてくれ……。もう……見たくない」

「……っ」

逢夜は千夜の悲しげな顔に顔を歪め攻撃をやめた。


……見たくない。


その一言が逢夜の動きを止めたのだ。今だから仲良くやっているが凍夜の配下にいた時の彼らは残虐非道であった。更夜達はその被害者であり、お互いを傷つける加害者でもあった。それに抗ったのは妹の憐夜だけ。その憐夜は逃げた罰として千夜達が殺してしまった。

逃がした首謀者である少年時代の更夜に酷い仕置きをしたのは逢夜。家族を守っているつもりになっていた逢夜は憐夜を殺さねばならなかった憎しみを更夜にぶつけていた。激昂していた。

この記述は『TOKIの世界書三部又は、折られた可憐な花』で詳しく書いている。


その過去と今の気持ちが同じであった。千夜はそこを指摘し止めたのだ。


「……許せなかったんです。ごめんなさい」

逢夜は千夜に丁寧にあやまった。

「……お前は怒るとすぐ手が出る。頭を冷やせ。そのままでは嫁のルルにまで手を上げそうだぞ」

「それは絶対にありません。大切な女性ですから」

逢夜はすぐに答えたが千夜はため息をついた。

「じゃあ、更夜は大切な弟ではないのか?お前が女に手を上げないのは知っているが弟に手を上げていいわけではない!」

「……申し訳ありません……」

千夜に叱られ逢夜は頭を下げてあやまった。

その間にサヨ達が更夜を助けていた。更夜は全く構えていなかったため、蹴りを直に受けてしまい呻いていた。


「更夜も更夜だぞ。受け身を取らずに逢夜の本気の蹴りをそのまま受けたな!何をやっているのだ!死ぬぞ!」

千夜は更夜にも怒っていた。


「お姉様……これは単純に……防御をすればいいというわけでは……ない問題なのです。すみません……」

更夜は弱々しく千夜につぶやいた。逢夜は更夜の発言に目を細め、頭を抱えた。


……あいつ……俺が殴っていたらいくらでも殴られていたか。防御もなく。ばか野郎……。俺もばか野郎だな。姉は……カタキもケジメも望んでねぇんだ。俺はバカな行為をしたんだな。


逢夜は更夜の意図がわかったが何も言わなかった。


「お前達の考えていることはわかるが戦力が減っては困るのだ。今は特にな」

千夜は弟達の上をいく回答をしてきた。逢夜も更夜も納得してしまい二人して下を向いた。


「あ、あの……更夜さん大丈夫?」

アヤが背中をさすっていたが更夜はゆっくり起き上がった。

「……すまんな。先程、俺にやった事を二人にやるんだろう?協力する」

「……どーゆー心境なわけ?」

サヨがアヤを見る。アヤも首を傾げていた。

「……また俺達の力を使うんだろ?」

話が一段落ついた頃にミノさんがメグに尋ねた。


「……ええ。二人の呪縛に猫夜はいない。簡単なはず。ただ……」

メグが息を吐いた時、家から狼夜が出てきた。

「……傷がある程度塞がりました。加勢致します。……ん?」

てっきり戦っていると思っていた狼夜は拍子抜けしていた。


「ああ……狼夜……。大丈夫、あれは味方だ。たぶんな」

千夜がメグ達を見て疑問いっぱいの狼夜にそう答えた。

「……そうですか。オイ!サヨ!後で説明しろよな!」

「はあ?なんであたし単体なわけ?超偉そう!四歳のくせに!」

サヨはわかりやすく「イーッ」とかわいくない顔を向けた。

「四歳じゃねーよ!!黙れ!小娘が!」

「……狼夜……話が進まん……」

千夜に言われ狼夜は顔を青くすると「すみません」と引き下がった。


「……彼……狼夜に関しては大変かもしれない」

メグが先程の言葉を続けた。

「……とにかく、またアイツが来るかもしれねぇから早くやろうぜ……」

ミノさんが疲れた顔をメグに向けた。メグは軽く頷いた。

「……皆、準備はいい?」

「うん」

メグの問いかけにアヤ、サヨは同時に答えた。


「……まず、逢夜からいく。……逢夜、動かないで」

「……?なんで俺の名前をし……」

逢夜が途中で言葉を切った。

メグに引き寄せられたアヤ達が弾丸のように逢夜に飛んできていたからだ。

「なっ!」

「動かないで!……弐の世界の管理者権限システムにアクセス!『介入』!!」

メグの言葉を最後に逢夜の前からアヤ達皆、光に包まれて消えた。


「……消えた……」

逢夜、狼夜はわけがわからず呆然としていたが千夜にはなんとなくわかった。

「……逢夜の過去をいじる気か……」

「その通り……」

「!?」

千夜の言葉に返答してきた声があった。三人はそれぞれ素早く構える。忍の彼らが全く気配を読み取れなかった。メグ達は逢夜の中に入り込んでいない。声をかけてきたのは部外者だ。


「誰だ……」

「猫夜か!!」

千夜の問いかけに逢夜が答えた。

銀色の髪が揺れる。姿がぼんやりと現れて猫夜が現れた。額になぜか包帯をしている。


「……お、お姉様……」

狼夜は戸惑いの声を上げた。

「……猫夜か……その包帯は……」

千夜はどこか悲しげに尋ねた。聞かなくてもわかるが千夜は尋ねてしまった。


「ああ、これ?殴られて床に倒れた時に額を少し切っちゃった」

「……」

逢夜、千夜、狼夜は暗い顔をしている猫夜を悲痛な表情で見つめた。


「なあ……お前、こちらに来ないか?傷の手当てしてやるよ。俺達の妹だろ?そして憐夜を返してくれ……」

逢夜が猫夜に優しく声をかけるが猫夜は首を横に振った。


「……そっちにはいけないわ。お父様に何をされるのか怖いの……。だから行かない。そして私はね、あなた達を邪魔しにきたのよ」

猫夜はそう言うと少し後ろに下がり頭を下げた。


「……?」

千夜達が警戒をしていると突然に黒い渦が鋭く辺りを切り裂き、中からはなんと凍夜が現れた。


「はっ……まずい!!逢夜!狼夜!逃げるぞ!!」

千夜に言われ冷や汗をかいていた二人は素早く世界から離脱した。

千夜も後を追って消えた。


「……追うぞ」

「はい」

黒い禍々しいものを纏った凍夜は猫夜を引っ張り千夜達を追った。

『時神達の世界』には黒い砂漠が広がり白い花畑はただの黒い砂へと姿を変えた。


そこへ現在鎮圧システムであるトケイがウィングを広げて飛び込んできた。おそらく凍夜を追ってきたのだろう。辺りを見回して再び凍夜を追い、黒い砂を撒き散らして飛び去ろうした刹那、三体の人形が現れてトケイを『瞬間移動』させた。


トケイは凍夜を追いかけることは叶わず全く知らない場所へと飛ばされてしまった。


おそらく凍夜、猫夜はこうやって追いかけるトケイをかわしていたのだろう。トケイがいなくなった黒い砂漠の一部はごっそりとなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ