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旧作(2016〜2024完結)「TOKIの神秘録」望月と闇の物語  作者: ごぼうかえる
本編「TOKIの神秘録」望月と闇の世界
128/208

望月の世界4

サヨ達が外に出ると不思議な少年と明らかに忍者かなと思われる二人の少女が楽しそうにボール遊びをしていた。


「あ!いたっ!!」

サヨは少女二人よりも少年に目がいった。ユニフォームのようなものを着たあまり表情のない少年だ。橙色の短髪というかなり挑戦的な髪型。よく見ると彼の足には近未来的なウィングがついていてユニフォームについている数字とともに何かデータを出していた。


つまり、ユニフォームの数字とウィングの電子数字が連動して動いていたということ。


「変な人だねー?」

サヨの言葉で遊んでいた三人がこちらに気がついた。


「ああ!君がサヨちゃんか!」

少年はウィングを広げてこちらに飛んできた。現代の技術ではこんな簡易なウィングで空を飛ぶことは難しい。


「えー……」

「あいつがトケイだ。弐の世界の時神未来神、んじゃあ、行くぜ」

逢夜は固まっているサヨを引っ張りトケイの前に突き出した。


「もしもーし!!荒いんですけど!!そんなんじゃ女の子逃げちゃうぞ!萎えたんだわ」

サヨはバランスを崩したがなんとかトケイの前で止まった。


「悪かったな。乱暴で」

「あー!やだやだ。絶対モテナイでしょ!ダメンズ!ダメンズ!」

「はあ……俺は既婚だ……。妻がいるぜ……」

逢夜はため息混じりに答えた。


「えーっ!誰々?」

「聞いてもわかんねーだろ。女子のノリで聞くんじゃねーよ……」

「けっちー!けっちーツネダだ!!」

「誰だよ……」

「あのー……逢夜?」

サヨと逢夜が関係のないことで会話をしているとトケイが不安げにこちらをうかがっていた。


「……あ、すまねぇ。望月サヨを連れてきた。これから俺達三人で父の居場所を探す」

「あ!ついに動くんだね!よーし!」

トケイは表情には乏しいが声には感情がしっかりこもっていた。

表情を出すのが苦手らしい。


「ねー、ねー!その羽パネルみたいなやつ、どこで買ったの?うちのごぼうちゃんにつけたいんだけど!めっちゃかっこよすよす!」

「あ、ありがとう?ごぼうちゃんってなに?野菜なの?」

がっつくサヨにトケイは怯えつつ尋ねた。


「ノンノン!カエルのぬいぐるみ!」

「は、はあ……」

「んなこたぁいいんだよ……。とりあえずさっさといくぜ……」

逢夜はため息混じりにサヨを引っ張った。

事前に話が伝わっていたのかトケイは状況がわかっていた。すぐにウィングを広げるとサヨに「乗って!」と促した。


「おー!おんぶ?飛行機乗る感覚ー。ちょーウケるー!」

「……のんきなやつだ……」

トケイの背に嬉々とした声を上げて乗るサヨに逢夜は頭を抱えた。


「じゃあ飛ぶよ」

トケイはウィングをトンボの羽のように動かし空へ舞い上がった。


「うわー!すごー!!」

気がつくと逢夜がもう近くにはいなかった。彼は霊体なため消えてもおかしくない……のか?

飛び上がったトケイを下からアヤ達が眺めていた。


「鈴、よろしくね」

アヤは十歳足らずの少女鈴に挨拶をした。鈴は全身真っ黒な衣装で瞳も黒、髪も黒の本当に真っ黒な少女だった。ただ髪飾りが赤色と金色なのでやたらとそれだけが目立つ。


「うん。現代神同士仲良くしましょ。私はこっちの世界の現代神で幽霊だけどー。私は女忍で霧隠の家系!役に立つわよー!」

鈴は忍らしくない元気な声で跳び跳ねた。


「やっぱり忍んでないわよね……。心配だわ」

「だ、大丈夫!鈴ちゃんは強いよ……」

アヤの言葉に小さく反応した声があった。気がつかなかったが鈴の近くにもう一人の少女がいた。

銀髪に弱々しい瞳、まるで小鹿かウサギのような印象の少女。

印象がないからか近づいていることに気がつかなかった。


「えーと……あなたは……」

「ああ、望月憐夜(もちづきれんや)だ。俺達の末の妹」

戸惑うアヤに更夜が静かに答えた。やはり忍か。歩く音すらないわけだ。


「憐夜ちゃんは千夜さんから指示なかったみたいだけど……」

「ああ、妹は忍じゃないのだ。抜け忍なんでな。忍のような事は一切できない。憐夜は俺達が留守の間、お姉様とこの時神の世界を守っていてくれ」

更夜が優しく憐夜に声をかけた。厳しい顔つきの彼からこんな優しい表情が出るとは思わなかった。

アヤは少々驚いた。


「はい。お兄様。少し怖いですが……頑張ります……」

「深く考えなくてよい。お姉様とおままごとでもして遊んでいなさい」

「はい。わかりました」

憐夜は素直に更夜に頷くと千夜がいる家に帰っていった。


「ずいぶんと他と対応が違うのね」

「……まあ、末の妹故な……」

「あらそう……それで……行くのかしら?ちなみに私は霊体ではないから無限にある世界を渡れないわよ」

「問題ない。望月静夜(もちづきせいや)を使う……」

「え……?誰よ……」

「俺の隠し子だ」

「えーっ!?」

更夜の言葉に目を丸くしたのは鈴だった。


「隠し子いたのー!!」

「……ま、まあ……お姉様しか知らないのだが……隠す必要もない故……」

更夜は戸惑いの表情を浮かべる。


「ねぇ、それでも私は生きている魂だから霊体には運べないわよ」

アヤはさらりと更夜に答えた。


「……静夜は娘だったが俺の父に酷い暴行を受け精神的にやられていた。見かねた俺は娘を忍とは関係ない武士の家系に嫁がせたのだ。まだ八つだった」


「なんてこと……。でも……あなたのお父さんが忍を武士の家系に嫁がせるのを了承したの?」


「なんとかな。重要な任務を遂行中に、ある武士の暗殺をしなければならず、それに使うと説得した。嫁いだら幸せそうだった故に夫の家系を壊すことはできなかった。俺は命令違反の罰を覚悟し動いていた最中、忍の任についていた鈴とぶつかり、鈴を殺し、国の城主まで殺した。その後は人間に溶け込んで生きていた時神過去神、白金栄次(はくきんえいじ)とぶつかり俺は戦の終わりに死んだのだ。そして静夜の家系、武士の家系であった木暮家が江戸を生き延びて今、娘が農家の家系だった小川家とくっついた。それが……お前が居候している家系だ」

更夜はアヤを指差し言った。


「え……あやちゃんの家系……」

アヤは現在、同じ名前の娘がいる小川家に居候中だ。

この辺の記述は「TOKIの世界書」に書いてある。

今回は関係はないので、さらりと流す。

ついこの間、一緒に住もうと誘われてなんとなくついていったら本当に住むことになってしまった。


まだ幼い娘の名前が「あや」。

そして彼女の父が(けん)


この健とあやが不思議な能力の持ち主だ。

彼らは「K」と呼ばれる「世界の状態を見守るデータ」を持つ特殊な者達だ。人間と共に生活しているが人間とカウントしていいのか謎の存在である。


この世界には動植物、人間、神もしくは怪異、神々の使い、霊魂……そして「K」、「Kの使い」が存在している。「K」と「Kの使い」に関しては沢山おり、霊体だが望月家の中では憐夜と千夜が「Kの使い」である。


常に平和を願い、争いを好まないのが「K」の特徴だ。


「そうか……Kなら……」


「Kの使いである憐夜が静夜を通じてKである『あや』に連絡をとってくれた。Kならば生きた魂を連れて弐の世界を回れるはずだ。世界を監視するというデータがあるからな。しかも連絡が取れたのは生きた魂を持つKだ。霊体になっているKではないので生きた者を運べる」


「……考えたわね」

「来たぞ」

更夜が白い花畑の真ん中を指差した。光が集まり、やがて幼い少女が浮かび上がった。


「アヤ、皆、遊びにきたよ」

「あや……本当に迷うことなく入りたい世界に入れるのね……」

幼い少女はアヤの言葉に軽く笑った。


「世界を監視するデータがあるからかな」

「あや、こちらのアヤを運んで世界を渡れるか?」

更夜は確認で尋ねた。


「うん!特殊なKの使いを使えばいけるよ。メメちゃん」

あやが声をかけるとテディベアが現れた。


「わっ!かわいいわね」

鈴が目を輝かせて突然に現れたクマのぬいぐるみを見つめた。


「僕が連れてくね?あやは戻っていいよ」

なんとぬいぐるみが話した。


「あんた、しゃべれるの?」

「Kの使いだからね。Kの使いは人形だったりぬいぐるみだったり小動物だったり色々。平和を願うKはだいたいが女の子だから、かわいいものばかりが使いになるよね。僕はあやちゃんの使いだからちゃんと現世で生活してるよ」

驚く鈴とアヤにメメちゃんとやらは満足そうに頷いた。


「じゃあ、私は帰るね。後はメメちゃんがやるから。私の力があるからメメちゃんは私と同じ。更夜さん……静夜さんは木暮家と小川家の真ん中にいるよ。二つの家系を守りたいんだって。守護霊的な?守護霊は生き物の魂内にいるからね。つまり、弐の世界のそれぞれの心の世界に住んでいるわけだね。あなた達だって現世にいる時神未来神の心の中にいるんでしょ?」


「まあな。ここは未来神の心の中の世界だ。静夜はもう望月家から完全に離れているか」


「うん。木暮静夜と名乗っているよ。ちなみに木暮家も忍の家系みたいだね。武士だけど。……優しい守護霊が個人の心に多いと現世の人間は幸せに生きられるよ。ま、とにかく帰る。バイバイ」

「そうか。ありがとう」

更夜は消えゆくあやにお礼を言い、頭を下げた。

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