暗殺少女と蒼眼の鷹 二話
やがて使いの者だと思うが、ひとりずつ顔から身体から眺めまくっている男が現れた。選別しているらしいなと私は思った。弾かれた女は涙を流し、別の男に連れて行かれる。
……この中で素直に家に戻れる女がいるかな……。ここで弾かれたら自殺するしかないね。
……それか……
私は連れ去って行く男を睨みつける。
……あの男どもが手をつけてから別の所に売るか。あの男達に殺されるか……。
まあ、いい選択肢はないね。
「なんだ? 生意気な顔をしているな。」
「はっ!」
私は選別の男が前に立っている事に気がついてなかった。
……しまった……
「お前、まだ子供だろう? ……まあ、長い目で見ればありか……。ふむ。体はそこそこ。顔は上々。」
男はそれだけ言うと隣の女へと行ってしまった。私は他の男に連れ去られる事はなく、その場に残された。気がつくと残されている女はたった三人。他の女はすべて弾かれたらしい。
私達三人は男に無造作に担がれ、樽の中へ押し込まれた。
……なるほど……正規ではなく、贈答品とかと混ぜて城に入れる気だね。
私は樽の隙間から外を伺った。牛車に乗せられているらしく揺れが激しい。前に樽が二つ。おそらく私以外の女。後は刀とか食べ物とか兜とかそういうのだ。
城に入ったところで前二つの樽は担がれて城の内部へと消えて行った。しかし、私の入っている樽は一向に担がれない。他のよくわからないものもどんどんと城の内部へ吸い込まれていく。
不思議に思っていると樽の蓋がパカッと開いた。
「……?」
私は上を向いた。眩しい太陽の光をさえぎって先程の男がこちらを見ていた。
「お前はまだまだ殿に奉仕できる女じゃないからな。城に入る前だ。」
「……。」
私は怯えたような顔をする。平気な顔をしていたら怪しまれるからね。
なんとなく見えてきた。
……お父様はこれを狙っていたんだ。ここの城のつくりは覚えている。城の近くの屋敷には名のある武将が住み、城の遠方にある屋敷には地位はそれなりだが手柄が多い武士が住む。つまり、城主が要注意人物と思っている人間か、裏切る可能性が高い人間をこちらに住まわせているって事。
手柄が多いのに地位をそれなりにしているって事で予想がつく。
この城から遠い所にある屋敷は少し特殊で個人で屋敷を持っていない。つまり沢山の武士が缶詰状態にされているって事。故にお手伝い兼、夜の秘め事用に女が多数住み込みで働かされている。かなり特殊な屋敷だ。
……蛇と鷹は城の中じゃない……ここにいる……。
少し身震いしたが冷静な面持ちで樽から外に出る。
「怖いか?」
「……。」
男の問いかけに私は怯えて声も出せないフリをした。男はニッと下品に笑うと私の手を引いて歩き出した。
……下品な男……。
私はそう思いながらも男に素直について行った。
そして一つの屋敷の前にたどり着いた。城からかなり離れていたがけっこう大きな屋敷だ。
「じゃあな。後はここの女どもに聞いてくれ。」
男は乱暴に私を突き飛ばした。私は受け身をとろうかとも思ったがやめて素直に転んだ。
男はそれを満足そうに眺めると私に背を向け歩いて行った。
……中に入ってまず、蛇と鷹の居場所を突き止めるのが先だね。
私は身体についたほこりを払うと屋敷内へと足を運んだ。




