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第23話 うどん

「今日は髪型が違うのだな」

「うん。ノノとお風呂入ったから、ちょっとあっつくて」


 夜。

 風呂上りで暑かったこともあって、髪の毛をアップにしてリボンでまとめてくれたんだけど、珍しかったらしくて街行く人にすっごく見られた。

 ロンドさんの用意してくれたキッチンスペースに移動したところで待っていたアーヴァインにも指摘されたんだけど、そんなに変かな?

 今も、遠目にちらちら見てる人がいっぱいいるもん。あ、でもこのキッチンスペースを見てるってことは私じゃなくてノノの料理に興味がある人かも。


 料理に興味ある人筆頭のロンドさんもちゃっかり座ってたりする。


「アーヴァイン、顔が赤いけど風邪? 回復魔法いる?」

「……風邪ではないが回復魔法は欲しい。あとノノ、こんな姿で街を歩かせたのか?」

「はい。何か問題でも?」

「いや、なんだ、その、うなじが……変な奴に目をつけられたらどうするんだ!」

「例えば無断で辺境に来て毎晩ご飯をタカる皇族とかですか?」

「ぐっ……! 材料費と手間賃くらいは払うぞ?」

「払っても変な奴なのは変わりませんが」

「うるさいな。万が一マリィに何かあったら困るのは間違いないだろうが」


 話し込んでないでご飯にしようよ。お腹減った。

 椅子に座って足をぶらぶらさせてたら、ロンドさんが果汁だけのジュースを出してくれた。水とかで薄めてなくて、すっごく美味しいんだって。

 魔法で小さな氷をいくつか作っていれると、ストローでかき回して飲む。


「んーっ! 美味しいっ!」

「パイナップルという果物だそうです。暑い地方でしか取れない貴重なものです」


 口の中がぎゅっとするくらい酸味と甘みがすっごく濃いけど、氷で冷やしたこともあってするする入っていく。

 火照(ほて)った体に染みていく感覚が何とも心地よかった。


「さて、今日はさっぱり系の冷たい麺料理を作ろうと思います」

「おお!」

「うどん、という料理なんですが、お嬢様に色々お手伝いしていただかないといけないんですよ」

「うん、手伝うよ!」


 小麦粉に少しだけ塩を入れて、水を加えて練っていく。

 べたべただった生地がまとまったところで私の出番だ。


「これを魔法で殴打(おうだ)していただけませんか?」

「……おうだ? こねるとか混ぜるじゃなくて?」

「ええ。うどんという料理は麺のコシが命。殴打するくらいの気持ちで生地をド突き回すことが美味しさの秘訣なのです」

「分かった! がんばるね!」


 汚しちゃったりするわけにはいかないので、使うのは風魔法。

 拳のような空気の塊で生地を跳ね上げる。

 空中に舞った白い塊に、左右上下あらゆる方向から魔法をぶつけていく。


——ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!


 途中で何度かノノに加減を見てもらったけれど、無事にうどん生地が完成した。

 アーヴァインがあんぐりと口を開けてたけど、もしかして私が回復魔法以外も使えるって知らなかったっけ?

 いや、知ってるはずのロンドさんも何か変な汗かいてるけどさ。


「ありがとうございますお嬢様。……これで変な奴も手出しできないでしょう」

「うん! ……うん?」

「何でもありませんよ」


 生地を休ませている間に他の具材やお(つゆ)の準備だ。


 ごまがたくさん入ったすり鉢はいつも通りにアーヴァインの元へ渡して、ノノは鶏肉を蒸したり野菜を切ったりと具材を用意していた。


「ノノ? アーヴァインも一応は皇太子なんだけど、その扱いで良いの?」

「……マリィよ。一応(・・)とか言われると俺もちょっとショックなんだが」

「えっ!? あっ、ごめん!」

「手伝いに関しては面白いとも思っている。気にするな」


 ……なんか本当にごめん。でも皇太子って普通は気軽にご飯食べに来ないと思うんだ。


 すり終わったごまに醤油、砂糖、マヨネーズ、酢と調味料をどんどん入れていくノノ。


「あ、お味噌だ」

「さすがお嬢様です。よくお分かりになりましたね。当たったので景品として具材をちょっと豪華にします!」

「やった! ありがと!」

「……ふむ、唐辛子の後に追加したのはごま油だな?」

「その通りですが、何か?」

「……景品は?」

「入れるとこ見てたじゃないですか」

「くぅぅぅっ! わかってたけど扱いが露骨すぎる! マリィにだけ甘いっ!」

「当たり前です! 可能ならばもうとろっとろに甘やかして差し上げたいくらいなんです! これでも我慢してるんですよ!?」


 嬉しいけど何にもできないのは困るし、ノノも大変じゃないのかなぁ。今だってたくさんやってもらってるのに、まだまだだったのか。

 でも自分でも動けるようになりたい。


 私が葛藤してるうちに生地の休憩時間(ベンチタイム)も終わっていよいよ麺の形にしていく作業だ。片栗粉を振ったまな板の上でぐんぐん伸ばしていく。

 のぺーっとしたところで折りたたんで包丁で細切りにして完成だ。沸騰したお湯にほぐしながら入れて、時々かき混ぜながら様子を見ていく。


「あ、お嬢様。冷水が欲しいのですが、氷をお願いできますか?」

「はーい」


 ノノが構えた金属のボウルにカラカラと氷の欠片を生成していく。


 茹で上がった麺はしっかり洗ってから氷水で(シメ)る。カット野菜や蒸した鶏肉と一緒に盛り付けて、上からごまだれを掛けて完成だ。


「お、美味しそう……!」

「麺の白に鮮やかな野菜が映えるな。濃いめのごまだれは差し色としても見事だ」

「聖女ごまだれに聖女うどん……!」


 ロンドさんが不穏なこと言ってるけど絶対そんな名前にさせないからね!?

 というかまずは食べないと!


 がーっと混ぜてから麺をちゅるっと吸う。濃厚なごまの香りに、しゃきしゃき野菜の歯ごたえが楽しい。

 そして肝心のうどんはすごかった。硬い訳じゃない。どちらかと言えばしっかり茹でてもちもちなのに、簡単には噛み切れないくらいに弾力があるのだ!

 これがノノのいうコシってやつなんだろうか。


 ごまだれが絡んだ麺は噛めば噛むほど小麦の甘味が引き立って、どんどん美味しくなる。

 魔法でお手伝いした甲斐があった。


「……あいかわらず、幸せそうに食べるな」


 だって美味しいもん。口の中にまだおうどんが入ってるから反論しないけどね。


 ちなみにルビーには小盛にしたものをそのまま出している。

 ……はずなんだけど、どう見ても私が食べてるのと同じくらいの量がある。絶対おかしいよ!

 体のサイズが全然違うのに!


 当のルビーは調理されたものを食べるのは初めてだったのか、最初の一口はおっかなびっくり。だけど二口目からは目にも止まらぬ速さだった。

 さすが速さが特徴のカーバンクル。


 私たちが食べ終わるよりずっと早く完食して、ぽんぽこりんなお腹をさすりながらヘソ天でくつろいでいた。

 ……あのお腹だと速さはきっと出せないね……。


 そうこうしているうちに私たちも完食だ。


「「「ごちそうさまでした!」」」


 ちなみに。

 食後の話し合いを経てメニューの名前が決まった。

 どうしても聖女って入れたいノノと、自分も参加したいアーヴァインが拮抗。最終的にロンドさんが取りまとめて『皇太子公認聖女うどん』と『皇太子公認聖女ごまだれ』になった。

 プッタネスカはもともとの意味合いがあんまり《《私らしくない》》とのことで、『皇太子公認プッタネスカ』だそうだ。


「聖女様の名の元に売り出すだけでもほかの商品とは一線を画しますが、皇太子御用達となれば箔が違いますからね!」

「うむ。俺のお陰でマリィとノノの評価もあがりやすくなったわけだな。利益の一部はきちんとマリィに還元しろよ?」

「もちろんでございます! 古今東西、珍しい調味料やハーブ、香辛料を手あたり次第に集めていますし、食材も高級品を取り揃えておきます」

「ロンド。お主、なかなか分かっているな」


 ……いや、それノノの美味しいご飯がいっぱい食べたいだけじゃん。

 私もそうなんだけど! そうなんだけど何か納得いかない!

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