決闘 ソードブレイカー
この学校、ある意味治安悪いですね(他人事)
決闘のルール。
一つ 使用できる武器は剣のみとする。
一つ 己の持つ肉体、剣技を用いて挑む。
一つ 決闘開始前の魔法の使用は禁止とする。
一つ 死亡、戦闘不能、降参をもって決着とする。
一つ 剣の攻撃で勝敗を決する事は出来ない。
一つ 剣を捨てた者、剣を折られた者は敗者となる。
「以上が基本的なルールになります」
レジーナから決闘のルールを教えてもらう。
まさかこんな事になるとは。
「あのギリアンと言う男、ソードブレイカーと名乗り、今まで決闘していた人達が五体満足でいるということは、剣を折る事で勝利してきたのでしょう」
「クレイさん……申し訳ありません、私がもっと王族としての力があれば、この様な決闘など跳ね除ける事もできたのに……」
「リーナ様、気にしないで下さい、必ず勝って戻ってきますから」
「クレイさん……」
少なくとも大人しくギリアンの所有物になるつもりは毛頭無い。
「ところでリーナ様」
「はい、なんでしょう」
「決闘でもこのメイド服で?」
「当然です」
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指定された場所は校内にある小さな闘技場だった。
闘技場まであるとは、寮と言いこの学校は設備が本当に良い。
噂を聞きつけてたくさんの生徒が観客として集まっている。
クレイは闘技場中央へ向かいギリアンと対峙する。
「公平を期する為に剣はあらかじめ用意されたものを使う、ちゃんと控室から……持ってきているね」
ギリアンの言う通り、お互いに同じ剣を腰から下げている。
「さぁ、準備はいいかな?安心したまえ、君の剣を折って無傷で手に入れるよ」
――公平を期する。
そう言ったギリアンを見る。
ギリアンは軽装だが防具を身に着けている。
それはいい、問題はその防具に魔法が掛けられている事だ。
クレイの目はそれがどの様な魔法かを見通す事が出来る。
身体強化、防御強化、疲労軽減……。
まさかと思い、剣を少しだけ鞘から抜く。
「……」
腐食の魔法。
剣を抜けば発動し、まともに打ち合えばあっという間に折れてしまうだろう。
これが「ソードブレイカー」の正体か。
公平を期すと言いながら、不正のオンパレードだ。
恐らくあの護衛の2人も同じ手を使って奪ったのだろう。
「さぁ、行くぞ!」
ギリアンが剣を抜き間合いを詰めてくる。
ルール上剣を使わなければ勝利を得る事は出来ない、しかし剣を抜けば腐食の魔法で剣が折れて負けてしまう。
――仕方ない。
ギリアンの斬撃を避け、腹に拳を叩きこむ。
「ゴヘァッ!」
ギリアンが壁まで吹っ飛ばされる。
「う……ぐ……」
手加減したとはいえ、あれだけ派手に吹っ飛んだのにギリアンは立ち上がってきた。
防御強化の魔法がかかっているだけあって頑丈だ。
「貴様!剣を抜け!殴るだけでは!剣を抜かねば勝利は無いぞ!」
ギリアンが剣を抜くように促してくる。
まぁ、確かにクレイが剣を抜かないとギリアンの思い描く勝利はやってこない。
「剣は抜かない、抜くと負けるからね、だから君を殴り続ける……降参を宣言するまで」
「クソッ!なめるな!」
闘技場中央に居るクレイにギリアンが襲い掛かり、攻撃を躱され、殴り飛ばされる。
この異様な光景が続き、観客の歓声は小さくなっていた。
ギリアンが立ち上がらなくなった。
どうやら気絶してしまったようだ。
ギリアンの元へ行き、体を揺する。
「ギリアンさん、ギリアンさん、起きてください」
「う……うぅ……うぉあ!はッ!」
ギリアンが目覚めたのを確認したクレイは再び闘技場中央へ戻る。
「立って下さい、まだ決闘は続いています」
ヨタヨタとギリアンが立ち上がり、再び殴り飛ばされる光景が始まる。
しばらくしてついにギリアンが気絶したわけでもなく立ち上がらなくなった。
ギリアンへと歩いていき、拳を振り上げる。
「ま、待て!止めろ!分かった!降参!降参だ!」
「ボクの勝ちですね。約束、忘れないで下さいね」
自分から仕掛けた決闘で圧倒的な敗北。
下手に異議を唱えれば自分の不正が明らかになる可能性がある。
「……くそッ!」
このルールならギリアンの剣を素手で叩き折れば一瞬で決着が付くのでは?
クレイ「あー……」




