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貴族の子ルニスと緊急事態①

もう少し詰め込む予定でしたが、長くなったので区切りました。


※読み返したら誤字があったので修正しました

「依頼のラセンリンゴ持ってきました」

「ありがとうございます、ええと……はい、確かにラセンリンゴですね、この量なら十分足りています」

「あの……これ、食べるんですか?なんと言うか……その、独……特な見た目ですし、確か毒ありましたよね、コレ」

「特殊な加工で毒を抜くことができるらしくて、最近貴族の方々で人気が出てるらしいですよ」

「そ、そうなんですか……コレが……」


――採取クエストで生活する事にも慣れてきた。

少なくとも日々を生きるだけの生活費は稼げている。


「それにしてもクレイちゃん、新米冒険者とは思えない働きですね」

「イッパイ勉強シマシタカラネー」

「何か、硬いですよ」

「そそそんなことないですよ」

「えぇ〜ホントですか〜?」


受付嬢との他愛ない(?)会話も日常の一つだ。

ちなみにこの受付嬢は冒険者登録をしたときの人で、名前はニナであると教えてくれた。


「何故ですか!?なぜ僕に討伐依頼を受けさせてくれないのですか!?」


突然、隣の受付から少年の大声が響いてきた。

クレイとニナが驚いて隣を見ると、そこには身なりの良い少年とお付きの人であろう女性が居た。


「ルニス様、貴方は依頼を受けるには年齢が足りません、どうか適正の年齢になってからもう一度お越しください」

「ルニス様、私からもお願いします、家に帰り鍛錬の続きを致しましょう」


受付嬢と付き人が、どうしても討伐依頼を受けたいルニスという少年をたしなめている……という状況の様だ。


「だけど!姉様は僕の歳で既にモンスター討伐を行っているじゃないか!」

「アレイヤ様は異じょ……特別なのです、もしルニス様に何かあったら旦那様が悲しみます」


ルニスがちらりとクレイを見た。


「見ろ!あんな子供が冒険者として依頼をこなしているじゃないか!」


(少なくともボクは君よりは年上だと思う、多分)

そうクレイは思ったがどうやら相手は貴族の様だ、黙っておく事にした。


「あの娘は冒険者になれる年齢なのです、クレイ様もその歳になるまでどうか……!」

「だけど、フレズガルド家の人間として……!」


その後もああだこうだとやり合い、渋々ルニスは家に戻る事を承諾したようだ。


「申し訳ありません、ご迷惑をおかけしました」


付き人の女性がクレイとニナに謝罪の言葉を述べた。

何となく貴族のその周囲の人々は傲慢なのもだとクレイは思っていたが、どうやらそうではないらしい。


「いえ、何やら大変な様子で」

「気になさらないで下さい」

「では、私達はこれで……ルニス様?」


いつの間にかルニスが居なくなっていた。

ギルド内をニナや付き人と探し回ったが、どこにも居ない。

先に家へ帰ったのだろうか……いや、今までのやり取りからして1人で家へ帰るような子供では無さそうだ。


「まさか!?」


クレイは依頼が貼られたボードへ走った。


「多分手の届く範囲だと下の方……あった!」


乱暴に剥がされたのだろう、上の方だけ、少しだけだが依頼書が張り付いていた。


「管理番号だけ残ってました!ニナさん!この番号のクエストってなんですか!?」

「待ってください!ええと……この街の近く、南のワッカ平原でモンスターの捜索と討伐です!」

「ワッカ平原って、確か数日前にゴブリンが大量発生した所ですね」

「クレイちゃん、よく調べていますね、既にゴブリンは討伐済みですが、残党が居る可能性もありますし、恐らく"原因"があるはずなので、その調査も含まれていました」

「そんな……!もしもゴブリンに襲われる様な事があったら旦那様に顔向けできません……!」

「ボク、行ってきます!」

「クレイさん!貴女では駄目です!ニナさん!」


ルニス達の対応をしていた受付嬢が制止し、ニナに助けを求めた。


ニナは周囲を見渡す。

今は昼過ぎ、戦力になる冒険者達はモンスターの討伐に向ってまだ帰っていない。

採取に向った冒険者も同様だ。

そもそも半日で採取を終えてくるクレイが異例なのだ。

彼女にはそれだけのーー新米とは思えない程の土地勘がある。

それに普通の新米冒険者なら今頃傷の一つ負っても不思議では無いハズなのに、クレイは今まで傷を負って帰ってきた事は無い。

単なる偶然かもしれないが……。


「クレイちゃん、お願いできますか?」

「ニナさん!?」

「ギルド長には後で私から話しておきます」

「でも……!」

「クレイちゃん、お願いが1つあります」

「あくまでルニス君を連れ帰る事が最優先、モンスターとの戦闘は避ける、ですね」

「そうです、くれぐれもお願いします」

「分かりました!じゃあ行ってきます!」


クレイは勢いよくギルドを飛び出していった。

続きを投稿するまでしばらくお待ち下さい。

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