如月の想い
日中の陽光を受け、凪いだ海面がキラキラと輝いている。
「やっぱり、海って大きくて、素敵ですね……奥宇奈谷では小さな川しかありませんでしたから。もっとも、その川も小さいとは思っていなかったのですが」
如月が、自身の緊張をほぐすかのように笑顔でそう話す。
しかしその笑顔は、やはりどこか作ったもののように見える。
今、俺と如月は、砂浜で二人きりだ。
一連の事件による男性恐怖症は、俺が相手でも払拭できているものではない。
「ああ、そうだな……でも、ここに見えている範囲だけでもほんの一部だけで、本当は遙か彼方まで続いているんだ」
若干、俺もうまく話せていないかも知れない。
俺でも分かる……彼女が、俺に対してでも警戒感を持っていることが。
「それで……お話しって、何でしょうか?」
如月の方から、先に切り込んできた。
俺がどういう判断をしたとしても、それを受け入れる覚悟なのかも知れない。
「その……こんなこというと、ちょっと誤解されるかも知れないけど、俺の正直な気持ちを言うよ。如月には、俺のお嫁さんに加わって欲しいんだ」
単刀直入にそう言った俺の言葉を聞いて、さすがに如月も目を見開いて驚いた。
そしてまじまじと俺の目を見つめる。
如月は、ある程度人の心が読める。俺が本気であることも分かってくれただろう。
「……ありがとうございます、嬉しいです。同情してくれているのかも知れませんが……本気で私なんかとのことを考えてくれているようなので」
「そんな、同情なんか……」
全くないと言えば、嘘になる。そしてそれは如月には通じない。
しかしそれでも、俺が本気で嫁に加わって欲しいと思っていることは伝わったと思う。
「……でも、既にお嫁さんになっている方たちは何ておっしゃっているんですか?」
「みんな、納得してくれているよ。如月なら大歓迎だってね」
これも本当の事だ。俺は前日の内に、今の嫁達全員にその意思を伝えていた。
「ありがとうございます……では、拓也様が本音でそうおっしゃってくださっているので、私も本当の気持ちをお知らせしますね」
如月はそう言うと、真っ直ぐに俺の目を見つめた。
出会ったばかりの優に似た、清楚で、優しさを感じる眼差しだった。
「私も、拓也さんのお嫁さんになりたいと思っています……でも、最初に出会った時と同じ、古来からの奥宇奈谷の伝統に従って……一夜限りのお嫁さんに、です」





