二対一でも
※数分間だけですが別の内容が投稿されていましたので修正していますm(_ _)m。
奥宇奈谷狩人衆の筆頭・ハグレ(睦月)の助っ人として参戦したのは、刀鍛冶の河部南雲だった。
その職業柄、刀を扱うことには長けている。実戦で如何に使いやすいか、そして対する敵に深手を負わせられるか。
実用性に重きを置いた奥宇奈刀の価値を高めるために、彼は毎日、何百、何千と真剣を振っていた。
この村に伝わる剣術……奥宇奈流とも言える剣術の型も習得し、その腕前は睦月に引けを取らない。
また、体も大きく、そして刀を鍛えるべく毎日大金槌を振り下ろしており、壮年とはいえ、その筋肉の逞しさは、あるいは睦月をも凌ぐものだった。
「ふっ……面白い……まだこんな奴も残っていたのか……だが、二対一になったからと行って有利になったと言えるか?」
シナドは、相変わらず余裕の笑みを浮かべたままだ。
南雲と睦月は、互いに目を合わせて頷くと、二人同時に斬りかかった。
しかし、シナドは素早く距離を取り、剣の降り下ろしを狙って睦月の腕を狙う。
そこを強引に南雲が詰めるが、ふっと消えるように身を躱し、そのまま睦月に迫った。
睦月は、すんでの所で仰け反ってそれを躱す。
その隙に南雲が、シナドの後方に回り込み、挟み撃ちにしようと企むが、それよりも早くシナドは下がり、そして強烈に南雲の剣をはじいた。
結果、位置的に南雲とシナドは一対一で正面から相対する形となり、すると手数でシナドが勝る。
「こやつ……!」
かろうじて南雲はシナドの剣撃を流して後方に引いた。
そしてまた二対一で対峙する。
「……残念だったな……もっと広い場所だったら大回りして背後に回れただろうが……ここならそうはいかぬ。二対一だろうと、剣の才と殺しの経験に勝る俺の有利は変わらぬ」
シナドは、さらに笑みをおぞましいものに変えた。
三人が戦っているのは、奥宇奈谷の村へと続く小道で、片側は相当下まで続く崖、そしてもう片側は急な登りの斜面だ。
大人が二人並ぶと、それ以上横に移動することができない。
対峙している位置的には、睦月、南雲の二人の方がやや上方に位置するのだが、その有利さをシナドの剣の鋭さが上回っている。
シナドを躱して南雲か睦月のどちらかが後方に回り込み、挟み撃ちにすれば、さすがにシナドを撃つことができるだろうが、それが可能な場所だったならば、シナドは南雲が現れた時点で素早く撤退していただろう。
つまり、今こうやって戦っていると言うことは、シナドは二対一でも絶対に負けない、と自信を持っているということだ。
睦月がケガをしていなければ。
もしくは、南雲が、もう少し若く、全力でこの場まで走ってきた直後でなかったならば。
だが、その仮定は意味が無い。
勝負は一度きり……この場を突破されるか、それとも撃退するかしかないのだ。
しかし、シナドにも懸念点がないわけではなかった。
どちらかに致命傷を負わせるために深く切り込んだならば、必ず大きな隙が生まれる。
そうすると、もう一方から反撃を受ける可能性が高くなる。
故に、迂闊に踏み込むことができない……そう思わせる、策略だった。
ほんの一瞬、シナドが動いた。
素早く、何かを投げる仕草……瞬時にそれに反応した睦月が、右腕で己の顔を防御した。
刹那、彼の右腕に鋭い痛みが走った。
シナドが投げつけたのは、いつの間にかその手の中に隠し持っていた棒手裏剣だった。
致命傷を与えるような武器ではない。
しかし、不意を突かれた睦月、そして予想外のことに気を取られた南雲にも隙ができた。
その隙こそが、シナドの狙いだった。
傷を負った睦月に斬りかかる……そう見せかけて鋭く進行方向をずらし、睦月を庇おうとした南雲に突きを放つ。
この一撃は避けられない……そう覚悟した南雲、そして睦月、シナドの耳に、パーン、という大きな破裂音が響き、全員の動きが一瞬止まった。





