拓也の回想 その22 ~ 嵌められた!? ~
山賊団員達は、面白いように捕まった。
上空から大きな網が音もなく降ってきて、立てなくなるほどの電撃を浴びせられるのだ、無理もないだろう。
狩人衆達は、電流を放出し終わった網から山賊達を引きずり出し、さすまたで押さえ込み、後ろ手にして縛り上げた。
捕えられた者達は、ぐったりと崩れ落ちる者もいれば、泣きわめく者もいる。
中には、気を失った者もいた。
追撃の投網から運良く逃げ延びた者もいたが、そこは上空から赤外線カメラでバッチリその姿を捕えていることもあり、狩人衆や松丸藩から来た侍達に指示を出し、先回りして待ち伏せしてもらう。
そこに出くわした奴らは、あっけなく次々と武器を捨てて投降していった。
あれほど恐れられた山賊団、山黒爺も、訳の分からない仙界の攻撃には心を折られたか……そう思った。
しかし、何かおかしい……簡単に事が進みすぎている、とも考えた。
捕えたのは、全部で二十人に満たない。
ひょっとしたら、廃村内の建物に、まだ立てこもっているかもしれない。
俺はその可能性を無線で狩人衆達に告げて、慎重に一件ずつ、建物の内部を調べてもらった。
しかし、結果から言えば、すでに捕えられた者達以外は、誰もいなかった。
「……何だ、こいつら……全員、腑抜けばかりじゃないか……」
狩人衆の猛者、クロウが、捕えられている者達を見て、吐き捨てるようにそう言った。
ハグレ (睦月)が負傷により奥宇奈谷村に留まっているため、彼が狩人衆の現時点でのリーダーだった。
「そ、そうだ……俺たちは下っ端だ! だから、一度捨てたはずのねぐらに戻るように命じられただけなんだ!」
「その通りだ……俺たちはなにも悪いことはしていない! 脅されて、無理矢理奴らの仲間にされて、荷物運びとかさせられてたけで……」
必死に弁明する、捕えられた山賊。
「……分かった。じゃあ、おまえらを脅したっていう奴ら、今、どこにいるんだ?」
「それは……知らねえ」
縛られた男の返答を聞いたクロウは、俺の方を向いた。
「……こいつの腕、へし折ってもいいか?」
その声に反応したのは、俺ではなく、クロウに腕を捕まれた若い山賊だった。
「いや、待ってくれ、本当に知らないんだって! さっき言っただろう? 俺たちは下っ端だって!」
明らかに狼狽している……うん、たしかにこいつは下っ端だ。
他に話ができる数人に事情を聞いてみたが、みんな同じような返答だった。
そうこうしているうちに、空が白み始めた。
あたりが明るくなり、その男達の顔がはっきりと見えてきた。
走ることもできないんじゃないか、と思われるかなりの年配の者や、ほんの若造、頼りない顔つきの中年の男……明らかに、戦力外……つまり、捨て駒要員のようにしか見えなかった。
その状況に、ぞっとした。
今、ここには、狩人衆や、それ以外の奥宇奈谷の猛者達が集っている。
さらに、松丸藩の役人までもが揃っている。
にもかかわらず、山黒爺の主力は、誰一人として捕えられていない――。
「……まさか……」
俺の表情の変化を感じ取ったのか、クロウが口を開く
「……罠、だったか……俺たちは、囮の方に戦力を集めすぎた」
「……じゃあ、主力の者達は、一体どこに行ったんだ?」
俺の声は、震えていただろう。
「追っ手が来ないと分かっているんだ、大きな村が襲われるかもしれない……いや、ひょっとして……」
その彼の言葉に、俺も嫌な予感がした。
クロウは言葉を続ける。
「奴らとずっと敵対していながら、攻めるには難攻不落の村がある……このところずっと、崖崩れでたどり着くことすらできなかったが、便利な隧道ができて、ずっと近道できるようになった場所……」
「まさか……奥宇奈谷!? いや、それはない。たしかに、隧道ができて便利にはなったけど、あそこは荷物を持った男が一人、やっと通れるぐらいの広さしかない。それに、入り口と出口に、鍵のかかる丈夫な金属製の格子扉を取り付けているし、門番もいる。そこ以外に奥宇奈谷に入る術はない」
「たしかにな……だが、もしその扉が破られればどうなる?」
「考えにくいけど、万一そんなことになれば……狩人衆や、多くの猛者をこちらに集めすぎ、手薄になっているところを攻め込まれる……やはり、嵌められたのか!?」
俺は思い出した……山賊団である山黒爺の若き首領は、恐ろしく狡猾であることを。
そして睦月が嵌められ、川上村が襲われ、俺も罠によって殺されかけたことを。
「くそっ……警告だけでもしておかなければ……間に合ってくれ!」
俺は祈るようにそう叫ぶと、クロウや他の狩人衆の眼前ではあったが、躊躇せず時空間移動装置・ラプターを起動させたのだった。





