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身売りっ娘 俺がまとめて面倒見ますっ!  作者: エール
第18章 幻の桃源郷

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拓也の回想 その15 ~命がけのスマホ捜索~

 幼女「お宮」を救うときに、スマホを置いてきてしまったのは痛恨事だった。

 なんとか取り戻したいが……その場所は、山賊団が拠点としている「廃村」だ。


 おまけに、ドローンも上空にホバリングで待機させたままにしていたので、どこかに墜落してしまっているはずだ。


 現代での通信機能は「無くした」といって買い換えれば済むのだが……いろいろとデータが保存したままであり、バックアップも取っていないので、このままでは精神的ダメージが大きい。


 松丸藩士の集団に攻め込んでもらえれば一番良いのだが、ただでさえ襲撃のあった川上村と片山村の護衛のために戦力が分散している状況だ。

 まあ、そういう事情を知っているからこそ、山賊団「山黒爺」は神出鬼没の襲撃作戦を繰り返しているのだろう。


 さて、どうしたものか。

 そう悩んだところで、ふと、ある思いつきが頭をよぎる。


 山賊団にとっては、お宮が救出された(奴らにとっては、奪われた)時点で、すでに誘拐作戦は失敗に終わったことになる。

 ただ、山賊団はそれで納得しているだろうか。


 お宮が泣き叫んだことにより、かんしゃく玉の破裂音によって村はずれに移動していた奴らは、慌てて帰ってきた。

 そして小屋の中を確認したところ、そこは「もぬけのから」になっている。

 それを、どう考えただろうか。


 神隠しか、あるいは、(しのび)などによる隠密作戦が決行されたのか……。

 いずれにせよ、気味悪がっているに違いない。


 ならば、あの廃村のことはあきらめて、とっとと別の拠点に移動しているのではないか……。

 そう考えたら、スマホを取りに行っても大丈夫な気がしてきた。


 ただ、お宮がいたはずの場所に、この時代に似つかわしくないスマホが落ちていたのを見て、山賊たちがどう思ったのか気にはなったが……持って行かれたところで、指紋認証のロックが外せるわけもないし、そのへんに捨ててしまっているかもしれない。


 とはいえ、山賊の拠点になんの警戒もなしに乗り込むのはさすがにちょっと怖い。

 一応、ツインラプターシステムは現代と江戸時代、一往復に限って、瞬間的に実施することができる。

 なので、あの小屋を出現場所に選び、移動した時に誰もいなければそのままスマホを捜索、誰かいたならば即座に現代に帰るように準備した。

 それも、深夜に暗視ゴーグルをつけての時空間移動だ。


 しかし、それだけでは何か不安な気がしてきた。

 たとえば、刀を抜いた状態で待ち伏せされていて、出現した瞬間に斬りかかられればひとたまりもない。


 常識的に考えて、そんなことはあり得ないのだが、念を入れるに越したことはない。

 そこで、丈夫なヘルメットに防刃ベスト、手足にはプロテクターを装着。

 暗視ゴーグルはそれ自体が顔と目を保護する役割を担う。

 これで万一斬りかかられても、即死は免れるだろう……多分。


 ドキドキしながら、現地時間の丑三つ時(深夜二時頃)を見計らって、時空間移動を決行した。


 出現した瞬間、ギシリ、と小屋の床が音を立てた。

 一瞬焦るが、それ以上の音はしない。

 ゆっくりと暗視ゴーグルで小屋の中を見渡すが、誰も居ない。

 まあ、この時間なら当たり前か、と安堵する。


 だいたい、俺が時空間移動で何もないところから突如出現するなんて、誰も想像できないはずだし、万一それを想像したとして、いつ現れるか分からない者を、刀を構えて待ち続けているわけがないのだ。


 とはいえ、油断は禁物。

 すぐ隣の建物で、誰かが寝ているかもしれないし、この廃村内を巡回している者がいるかもしれない。

 あと、スマホがどこにあるかも分からない。


 あんな目立つものが、少女が消えた場所に落ちていて目に付かないわけがないし、そのまま放っておくとも思えない。

 めずらしいものとして、どこかに持ち去っているかも……と思いきや、部屋の隅の方に、それらしきものが放置されていた。


 ゆっくりと近づいてよく見てみると、間違いなく、俺のスマホだ。

 たぶん、何に使うものかわからないから、放置していたんだな、と安堵して、それを拾った瞬間だった。


 バチン、という音がして、何かが迫ってくるのを感じた。

 胸と背中に、かなり鈍い痛みを感じて、思わず呻いた。

 何が起きたのかわからず、思わず片膝をついたところで、


「……かかったぞ!」


 というような、男の大声が聞こえてきた。

 やばい、と直感した俺は、


「バ〇ス!」


 と緊急離脱キーワードを発動、自分の部屋に帰ってきた。

 スマホも手に持ったままだ。


 心臓が、異常なぐらいに早鐘を打っていた。

 大量の冷や汗が噴き出してきた。


 鈍い痛みは、まだあった。

 急いで防刃ベストを確認すると、貫通こそしていないものの、胸部と背中に、はっきりと小さなくぼみが残っていた。


 シャツも脱いで見てみると、胸と背中に、じんわりと血が滲んでいる。


「……矢か、それとも、棒手裏剣か……」


 何らかの攻撃を受けたことは確実だった。

 嫌な汗が止まらぬまま、暗視ゴーグルに搭載されていたカメラ機能のSDカードを抜き出し、PCにセットして再生してみた。


 すると、そこに映っていたのは、上方から弧を描くように迫ってきた短刀だった。

 おそらく、天井に細い紐で吊るしておいて、スマホが動いたら仕掛けが発動し、振り子の要領で落ちてきたのだろうと推測した。


 映ってはいないが、多分、後方も同じような仕掛けだったのだろう。

 もし、丈夫な防刃ベストを身につけていなければ、今頃は……。


 俺は、山賊団「山黒爺」の恐ろしさを再認識したのだった。

 

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「身売りっ娘」書影
― 新着の感想 ―
[良い点] さすがにこれは、迂闊すぎるのでは 精神的ダメージ程度で、命の危険を顧みないなんて‥
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