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身売りっ娘 俺がまとめて面倒見ますっ!  作者: エール
第18章 幻の桃源郷

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拓也の回想 その9 ~川上村での再会~

 翌早朝、俺と優は、揃って松丸藩城下町近くの、とある竹林の中へ時空間移動した。


 この時間帯のここなら、まず人と出くわす心配がない。

 ほんの数分歩いただけで、普段なら賑やかな城下町の通りに出た。


 まだ早朝のため人通りは少ない。

 しばらくすると朝市の準備のために、徐々に騒がしくなっていくのだが、今はそれを待つ状況ではなかった。


 なお、今回は安全のため、最初からポチを連れている。

 俺たちなんかよりもずっと早く、山賊などの気配を感じれば吠えて知らせてくれるはずだ。


 この日は天気が良いこともあって、朝日がまぶしいぐらいだった。

 幸いにも、俺たちは西に向かって歩くので、それほど気にせずに済む。

 優と二人っきりでこうやって旅をするのは本当に久しぶりなのだが、それが観光ではなく、非常事態に伴う緊急措置なのが悲しいところだ。


 一度来たことのある道なので、比較的スムーズに進める。

 あれ、どっちだったっけな、と思う分かれ道が二カ所ほどあったが、前回スマホで写真を撮っていたこともあり、それを参考にしながら進んでいく。


 奥宇奈谷に比べれば、川上村はその名前とは裏腹に、割と下流の方だ。

 急げば城下町にも半日ほどでたどり着けるので、辺境、という程でもない。

 なので、川上村に山賊が現れるというのは、かなり珍しい、というか、異常なことなのだ。


 とはいえ、実際に襲撃されたのは事実だ。

 気を抜かないように進んでいると、突然、ポチが激しく吠え始めた。


 山賊か、と、俺と優は身構えた。

 堤上の街道を歩いてくる、槍を持った二つの人影……しかしそれを見て、安堵のため息をつく。


「……前田殿……そちらの方は……」


 そう声をかけてきたのは、川上村で警備をしていた藩士の内の二人だった。


「お役目、ご苦労様です。俺の嫁の、優です」


「初めまして、優と申します」


 そう挨拶して、優は丁寧にお辞儀をした。

 慌てて自己紹介する、藩士の二人。


 なぜ、川上村からこちらに来ているのかを聞いてみると、現在の川上村の様子を城に報告するためなのだという。

 俺も一応確認したのだが、前日からは特に大きな動きはないらしい。

 すでに山賊団の襲撃があったことは城下町にも知られており、誰も来ないと思っていたのに、男女二人連れの人影があったので、おやっと思ったという。


 たしかに、俺たち以外に上流へ歩く人を見かけなかったし、逆に下流に向かってくる人もいなかった。それは、ある意味、巻き込まれる人がいないので安心できることなのかもしれない。

 道中、お互いに気をつけることを確認しあって、藩士たちと別れた。


 俺としては、普通の会話だったのだが、優は幾分、警戒感を深めたようだ。

 そもそも、武装した藩士とすれ違うような状況など、そうそうあるわけではないのだ。

 本当に戦に近い状況なのだなと、俺も改めて警戒心を高めた。


 急いだこともあって、夕刻になる前に川上村にたどり着いた。

 村の入り口では、やはり門番をしていた松丸藩士に対してポチが吠え、そのために警戒されてしまったのだが、俺の姿を見た彼らはすぐに笑顔で出迎えてくれた。


 優を連れてくることは藩士たちには言っていなかったので驚かれたが、如月、皐月と顔見知りで、彼女たちの心を癒やしてくれるだろうと告げると、納得した表情だった。


 俺たちは、出迎えてくれた睦月と短い挨拶を交わし、そして閉じこもっていた姉妹と再会した。

 優の笑顔を見た二人は、彼女にすがるように抱きついて、泣いていた。


 なんか、優が二人のお姉さんに見えた。

 優も、大きなトラブルを何度も経験している。

 傷つき、絶望したことも多いので、落ち込んでいる二人の気持ちも分かるのだろう。


 そんな優の笑顔と、本当に自分たちの事を心配して、危険を顧みずここまで来てくれた、ということが、相手の心が読める如月に伝わった。それで、やっと分かってくれる人が現れた、と大泣きし、それが妹の皐月にも伝わったようだった。


 少し落ち着いたところで、阿東藩への時空間移動の話になった。


 二人には事前に話しておいたが、一人だけならすぐに移動できるが、二人ともとなるとラプターの制約で、かなり待たないといけない。

 ラプターの待機時間は、時代を一往復するごとに三時間だ。

 つまり、


 一人目と一緒に 川上村 - 現代 - 阿東藩

 三時間待機

 優のみ 阿東藩 - 現代 - 川上村

 三時間待機

 二人目と一緒に 川上村 - 現代 - 阿東藩


 と、二人目が移動するには六時間待たないといけない。

 念のため、俺も自分のラプターを使用して同行する。

 なお、一回目のみ、俺はポチを連れて移動することになる。


 どちらが先に移動するか聞いたのだが、ほんのわずか危険が伴うということで、まず姉である如月が向かうと決めていたようだった。


 時空間移動の様子は、他の人にはあまり見られたくなかったので、睦月を含めた三人きょうだいと、俺、優だけで例の神社の裏側へ移動する。


 優は、ここをポイント登録して、如月と離ればなれになることがないように腕をビニールテープでしっかり巻き付けて固定し、緊張させないように、笑顔のままラプターを操作した。


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「身売りっ娘」書影
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