如月の回想 その4 ~ 嫁達との会話 ~
別作品集中投稿のため少し間が空いてしまいましたが、連載再開していきますので、よろしくお願い致しますm(_ _)m。
阿東藩を訪問した私たちは、拓也さんのお嫁さんたちと、いろいろ話をすることになり、拓也様が経営されているという食べ物屋「前田美海店」に招待されました。
(ただ、睦月兄さんは女性ばっかりになっているのが苦手のようで、この町では護衛も必要ないだろう、ということで、一人でぶらぶらと町中の見物に行ってしまいましたが)
まだ朝の早い時間帯なので、「前田美海店」も準備中でした。
そこで私は、奥宇奈谷の「しきたり」について、話をしました。
村に新しい血を残すために、その土地を訪れた者を、一夜限りの婿として、共に過ごさなければならない……。
村では当たり前だと思っていたことですが、お嫁さん達は絶句していました。
どうやら、少なくとも阿東藩では全く考えられない風習のようでした。
お嫁さんの一人、私たちより年上に見える凜さんという方が、
「……私たちは、自分が望み、『前田拓也』という理想の方の嫁になることができました。でも、相手を選ぶこともできず、しかも、子供ができたとすれば、父親がいない状態で育てていかなければならないなんて……しきたりとはいえ、つらい役目なのね……」
と言いました。
それに対して、
「いえ……子供ができたとすれば、その子は村の宝として大事に育てられます。それに、私自身が子供の頃からそういうものだ、と教わってきたので、抵抗はないですよ」
と答えしました。
「……それで、さっき言っていた、拓也殿に相手にされなかったというのは……」
ナツさんという凜々しいお姿の方が、そう尋ねてきました。
「はい、その……村のしきたりで、そういうのがあることをお話したのですが……前田様は、『自分には嫁と子供がいるから、そのしきたりに従うことはできない』とおっしゃられて……ですので、前田様がおっしゃるとおり、本当に何もなかったのですよ」
すると、凜さんが
「……拓也さんらしいですね。そこまで私たちに気を遣ってくれるなんて……」
と言い、さらにナツさんが
「まったくだ。そういう話なのであれば、ばれなければいい、と考える者がいてもおかしくないし、手を出したとしても、私たちも気づくことなどないだろうに……いや、義理立てしたのは、優に対してか……」
と話しました。
優さん、という方はこの場にはいないようでしたが……。
「それで、あの……如月さんは、今までに、他の男の人とそういう経験……あるのですか?」
涼さんという名前の、やはり綺麗な方が、興味深そうに尋ねてきました。
「いえ……その、私が『しきたり』の対象の歳になった頃は、山賊とかが出るようになってあまり商人の方が来なくなっていて、そのうちにあの崖崩れが起きて、閉じ込められましたから……」
そう答えると、ナツさんが
「……ということは、その『しきたり』ができるようになって初めて会った男の人っていうのが、拓也殿だったっていうことか……」
と驚いたように口にしました。
「はい、そうなります……でも、繰り返しになりますが、本当に何もなかったのですよ」
私は再度、念を押すようにそうお話しました。
「ええ。それは、貴女がとてもいい娘だってことですよ……自分ではなく、ここまで必至に拓也さんのことを庇おうとしているなんて……まあ、拓也さんだからかもしれませんけどね?」
凜さんは、私が拓也さんに抱いている淡い思いに気づいている……。
ある程度、相手の方の心を読める私ですが、逆に自分の拓也さんに対する好意に気づかれていると分かって、顔が熱くなるのを感じました。
「……一晩ぐらい、拓也殿を貸してあげてもいいかもしれないな……」
「「えっ!?」」
ナツさんが、ぼそっと呟いた言葉を聞いて、私と同じぐらいの歳のユキさん、ハルさんが声を上げました。
……と、そのときに、ガラガラと店の引き戸が開かれる音がしました。
そこに現れたのは、荷物を背負い、小さな子供を抱いた、美しい女性の方でした。
「……この方が、優さんですか? ……すごく綺麗……」
女性の私でさえも、彼女の姿に見惚れてしまうほどでした。





