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身売りっ娘 俺がまとめて面倒見ますっ!  作者: エール
第17章 漆黒の幽霊船

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第255話 厳重警備の前田邸

 手倉海岸で一悶着あった後、俺達は、徹さんが言っていた、彼等と薰の正体を聞くために、前田邸へと案内することにした。


 彼等に取っては、まだ正体を明かしていない自分達に、俺が本拠地を紹介することを驚いていたが、どうせ前田邸の場所は藩内の多くの人が知っている。秘密でもなんでもない。

 それに、案内するにはそれなりの理由があった。


 前田邸は、小さな山の中腹にあって、そこに続くのは細くて急な坂道のみだ。

 そしてその坂道の始まり付近には、小さな小屋というか、建物というか、そんなものが一つ立っていた。


 広さはほんの二畳ほどのその建物、実は警備員の詰め所だ。

 小さなガラス窓があって、警備係の若い侍が椅子に座っている。

 彼は、俺達の姿を見つけるとすぐに立ち上がり、扉を開けて出てきた。


「拓也さん、お帰りなさい。今日はお客様もご一緒なんですね」


 愛想良くそう話しかけてくる、二十歳ぐらいの青年。

 こう見えて、彼は剣術道場でもトップクラスの腕前だ。


「ああ。俺達が一緒だから、通行証は不要だよ……あ、あと、わざと警報を鳴らすことになると思うけど、まあ、点検みたいなものだから」


「警報の点検、ですね。わかりました。皆に伝えておきます。ごゆっくり」


 彼はそう言って頭を下げた。

 俺達も軽く頭をさげ、皆でぞろぞろと坂道を登っていく。


「なるほど、門番ですか。警備は万全、ということですな」


 徹さんが感心したように頷く。


「まあ、確かにあの人が門番というか、警備要員には違いありませんが、実際はもっと厳重なんですよ」


「もっと? 普段は人が多い、ということですかな?」


「いえ、そうではなくて……実際にやってみましょうか」


 俺はそう言って、懐に入れていた、小型の平らなタマゴ型オブジェクトの安全紐を引き抜いた。

 そのオブジェクトからジリリリッ、という大きなベル音が発生し、徹さん一家三人はビクッと肩をすくめた。

 次にどこからともなく響き渡る「プオーォー」という大きなサイレン音に、徹さん一家三人は、さらに警戒して身構えた。


「……これは……この物の怪が吠えるような声は、一体……」


 薰に至っては、驚きを通り越して怯えており、俺の腕を掴んでいる……ちょっと女の子らしくて可愛いし、頼りにされているようで嬉しい。


 俺が引き抜いた紐(正確には、その先に突いていた細い金属キー)を差し込むと、ベル音が止まり、そして警報音も止まった。


「これが、本来の警報の仕組みです。このベル……鈴のような音はこの小さな機械から発せられた。それはすぐ分かってもらえたと思いますが、あのうなり声のような大きな音は、もう少し複雑です。簡単に言うと、さっきの警備員から許可証を受け取っていない者が侵入してくると、自動であの大きな音が響き渡る仕組みにしているんです。この近くで、これと同じ道具から紐を引き抜いたときも同じ。要するに、近所で緊急事態が発生すると、さっきの大きな音で周囲に知らされるんです。今日は点検、と言ってきましたからなにも起きませんが、普段なら、待機している侍達がワラワラと出てくる段取りとなっています」


「……なんと厳重な……それも仙界の御技、ですかのう……」


 徹さんは目が点になっていた。

 実際は、ワラワラっていうほどでもないけど、そう言って警戒させておいた方がいいだろう。


「ついでに言うと、俺とお蜜も、このすぐ近所に住んでいる。特に夜中はずっとそこに居る。さっきの大きな音が鳴ったら、真っ先に俺達が駆けつける手はずになっている」


 三郎さんが、少し不敵な笑みを浮かべながらそう話した。

 これは本当の事で、忍である二人が夜間、ずっと近所にいてくれるのは心強い。


 ちなみに、この仕組みは自動車のキーレスシステムようなものと、防犯ベルと、人感センサーによる警報を組み合わせたものだ。警備員から、微弱な電波が発生する許可証を受け取らないまま侵入してくると、人感センサーにより反応して、あのような警報が鳴る。


 常時スマートキーを持っているのは、俺と嫁達、三郎さん、お蜜さん、源ノ助さんのみ。

 啓助さんやその他顔なじみの商人であっても、許可証を毎回受け取り、返してもらっている。


 あまり顔なじみでない者が来た場合は、通行を許可しないか、警備員が一人同行することになる(その場合は別の警備員を無線で呼ぶので、詰め所が無人になることはない)。


 また、夜間の防犯についてもう一つ、前田邸の敷地内には離れが存在し、そこには源ノ助さんが常駐していることも告げた。

 初老ながら彼の強さは、剣術道場師範ということで既に十分理解している三人は、ますますこの拠点が、俺にとってどれほど重要視されているか、理解しつつあるようだった。


 警報が鳴り止んだところで、さらに坂を登っていく。

 すると今度は、


「ワンワンワンッ!!」


 という犬の鳴き声が聞こえてくる。


「……ほう、番犬も飼っておられるのか……」


 登さんが、今度のは分かる、とばかりにそう話しかけてきた。


「ええ。犬はやっぱり優秀ですし……まあ、みんなの家族みたいな感じでもありますので」


 ようやく屋敷が見えてきたところで、庭で放し飼いにされているポチとユリが、開閉式のゲートに近寄ってきた。

 ちなみにこの二匹、よくしつけているので、ほとんど逃げ出すことはない……たまにいなくなるけど、すぐ帰って来る。


 ゲートはちょっと開けるのが面倒。

 ただ、人が通るだけなら、通用口のように小さく、軽く開けられるので、そこから入っていく。

 ちなみにゲートは鉄製。高さは俺の頭ぐらい、大して高くないので掻きついて登ることができるが、それをするとまた警報が鳴る。


 ちなみに、通用口も、スマートキーを持っていないと開けることができない。

 とりあえず、


「通行証がないと、普通にここを通れないし、無理に通ろうとするとあの警報が鳴る」


 とだけ説明しておいた。

 なぜこれほど警備が厳重なのか、という問いに対しては、単純に


「以前、強盗に入られた事があるんです。人的な被害はなかったけど、警備を厳重にしています」


 と応えると、納得したように頷いてくれた。


「さすがは阿東藩の大人物、厳重なのは分かりますが……それにしても、仙界の御技とは、こうも凄まじいものなのですな……」


 現代に生きる俺達からすれば、ありきたりの技術を組み合わせているに過ぎないのだが、この時代に生きる人達からすればまさに仙術、ということなのだろう。

 これで、さらに防犯カメラ、録画システムなんかがあることを説明したら、もっと驚かれるんだろうな……そこまでは言わないけど。


 あと、とっておきの究極最終手段(しかも、この時代のアナログな技術)、「緊急脱出トンネル」が存在するのだが、もちろんそれを話すつもりは無い。


 それだけの仕掛けや警備システムを通過して、ようやく、優が出迎える『前田邸』の玄関に辿り着いたのだった。

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「身売りっ娘」書影
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