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身売りっ娘 俺がまとめて面倒見ますっ!  作者: エール
第10章 藩主候補

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第百四十一話 決意

 涼姫が室町時代から江戸時代に帰還を果たしたその日。

 彼女と共に時空間移動してきた誠姫も含め、お祝いの宴会をしよう、ということになった。


 この日は前田美海店の『夜の部』は予約がなかったので、自分達の店ながら『貸し切り』として、前田邸の五人と『前田女子寮』一期生、二期生を会わせた、合計二十名近くの女性陣が集まった。


 自分達で準備もしながらのこの宴会、源ノ助さんや三郎さん、良平はどういうわけか誘ったけど辞退したため、男は俺一人だった。


 ここで、涼姫とはほぼ初対面となる二期生の六人が、年齢の高い順に紹介された。


『お(しず)』、数え年で十七歳、満年齢で十六歳。

 元々は岸部藩の武士の娘だが、事情により家族全員で阿東藩に引っ越してきて、飛び込みで『前田美海店』の店員になりたい、と言ってきたのだ。


 何か特技があるわけではなかったが、とにかく真面目で根性があり、真剣に仕事に取り組むために覚えも早く、すぐに戦力となってくれた。

 二期生のなかで一番年上で、同期の少女達の面倒見もよく、リーダー的な存在に成長している。


『お(さわ)』、数え年で十六歳、満年齢で十五歳。

『黒田屋』からの紹介で、女子寮に住み込んで働くことになった女性だ。


 女子寮メンバーの中で唯一、機織りの経験がある。

 まだ機織り機を購入できていないのでその本領は発揮できていないが、他の仕事もそつなくこなしてくれる、明るい性格の女の子。


『お(さと)』、数え年で十六歳、満年齢で十五歳。

 地元では料理の修業をしていたために、『前田美海店』でもその特技を活かして調理の手伝いをしてもらっている。

 おとなしめだが、素直でいい娘だ。


『お(さく)』、数え年で十五歳、満年齢で十四歳。

 裁縫仕事が得意な少女。


 仕事とは直接関係ないが、琴の演奏も練習したことがあるらしい。

 一つのことを根気強くこつこつとやり遂げるタイプの娘だ。


(あんず)』、数え年で十五歳、満年齢で十四歳。

 読み書き、そろばんが一番上手な女の子。


 この歳にして知的なイメージがあり、前田妙薬店の接客も問題なくこなせようになってきている。

 かといって取っつきにくい雰囲気があるわけではなく、可愛い、というよりは綺麗な笑顔を返してくれる、才色兼備の美少女だ。


(さくら)』、数え年で十四歳、満年齢で十三歳。

 二期生の最年少。


 特別何かができる、というわけではないが、良く気が利いてこまめに動いてくれる。

 明るい笑顔で一生懸命接客する姿は、お客さんの間でも評判がいい。


 ……とまあ、みんな一生懸命に仕事をしてくれるいい娘たちだ。


 この日も、わずかな期間とはいえ女子寮に住んでいて、半年間他国に修行の旅に出ていたという、いわば『伝説の先輩』である涼のために、宴会に参加しながらも給仕の仕事を頑張ってくれていた。


 ちなみに、彼女たちは、涼が藩主の娘だということは知らない。


 そしてその涼は、まだ父親から俺に修行として預けられた身分のままだから、という理由で、少なくとも藩主が参勤交代から帰って来るまで、また女子寮で生活したいという。


 もちろん、『前田美海店』や『前田妙薬店』の仕事も手伝ってくれる。

 忙しいこの時期に貴重な戦力として復活してくれる彼女に対して、みんな心から歓迎するということだった。


 涼が室町時代で過ごした貴重な活躍の日々は、体験談として重みがあり、かつ興味深い事柄の連続で、他の女性達も食い入るように話を聞いていた。


 また、逆に『前田』と屋号のつく店舗の躍進、本格的に始まった養蚕業の話などは、相変わらず好奇心旺盛な涼には興味津々だったようで、半年前と同様に目を輝かせながら聞き入っていた。


 そんなこんなで、楽しい宴の夜は過ぎ。

 そろそろお開きの時間となった。


 誠姫は、ラプターを使用して室町時代へと帰って行った。


 後片付けは二期生のメンバーとナツ、ユキ、ハルの三姉妹がしてくれることになり、凛と優は一足先に前田邸に帰って風呂や寝床の準備をすることになった。


 お鈴さんとヤエは天ぷら『いもや』の明日の準備に向かい、そして一期生であるお梅さん、桐、玲は、蚕の様子が気になるので養蚕小屋によってから女子寮に帰る、ということだった。


 こうなると、前田女子寮にそのまま向かうのは、俺と涼、お蜜さんの三人のみ。


 この日は月夜で、ぼんやりと明るく、提灯やLEDランタンの必要もなかった。

 五分ぐらい歩いたところで、お蜜さんが、忘れ物をした、と言って『前田美海店』へ引き返していった。


 ……気がつくと、俺と涼は、二人っきりになっていた。


 しばらくは、綺麗な月だな、とか、そんなたわいもない話をしながら歩いていたのだが、急に彼女は真剣な言葉使いとなった。


「拓也さん……いえ、前田拓也様……お話ししたいことがあります……」


 月明かりに照らされた彼女は、少し恥ずかしそうな、それでいて決意に満ちた、とても美しい表情だった。


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「身売りっ娘」書影
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