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13 精霊の試験

「彼女に一体何をした!」


 アベリアを抱き寄せ、フェイズが周囲の光の粒を睨みつける。すると、光の粒から声が聞こえてきた。


——フフフ、ハハハ

——何をしたってフェイズ、わかっているだろう、我ら精霊による試験さ


(精霊による、試験?)


 どうやら周囲を漂っている光は精霊のようだ。驚いてキョロキョロと辺りを見渡すと、フェイズはアベリアを抱きしめたまま怒ったように言った。


「試験はまだしないはずだろう、約束が違う!」


——我らの気分が変わった。それだけだ

——それに良いではないか、合格だ、喜べ

——我らはその女が気に入った

——女、フェイズと結婚しろ

——精霊に気に入られたら最後、その言葉を無視することはできない、拒否権はない

——フェイズもその女を気に入っているのだろう、何も問題ない


 周囲からいろいろな声が聞こえてくる。アベリアが精霊の言葉に驚いてフェイズを見上げると、フェイズが顔を赤らめて慌てたように言う。


「な、何を勝手に……!」


——それではな、また会おうフェイズの婚約者、未来の妻となる者よ

——フフフ、ハハハハハ


 そうして、周囲をただよっていた光の粒は消えた。呆然とするアベリアと、顔を真っ赤にしたままアベリアを抱きしめているフェイズがその場に取り残される。


「フェイズ様、今のは、一体……?」

「う、今のは……ってすまない!」


 アベリアを抱きしめていたことに気がついたフェイズは慌ててアベリアから離れる。そして、ふうっと大きく息を吐いた。


(フェイズ様に抱きしめられてしまった。まだ、抱きしめられた腕の感触が残ってるし、温かい……)


 さっきまでの状況を思い出してアベリアも顔を赤くする。そしてそんなアベリアを見てフェイズは両目を見開いて口元を手で覆った。


「あ、あの、嫌ではなかったので大丈夫です」

「……嫌ではなかった?本当に?」

「はい」

「それなら、よかった」


 アベリアが微笑むのを見て、フェイズは顔を赤くしながら目線を逸らす。


「あの、それでさっきのは一体?」

「ああ、あれは、精霊の試験だ。俺が精霊公爵と言われているのは、精霊を使って(まつりごと)に関わっているからなのは知っているだろう?ハイルトン家は代々精霊と契約を交わし、その力を国のために使ってきた。結婚する相手も、精霊によってこの家にふさわしい人間かどうか試されるんだ」


 つまり、先ほどの失礼な男性は精霊が化けた姿で、アベリアを試していたと言うことになる。


「精霊に認められられず、むしろ気に食わないと思われてしまった場合は危害を加えられることもある。だから、精霊による試験は俺がアベリアと一緒にいる時にしてくれと約束していたんだ。それなのに、気が変わったからって俺のいない時に勝手に試すなんて……アベリアが無事で本当によかった」


 ホッとしながら眉を下げフェイズは微笑んだ。フェイズのアベリアを気遣う様子にアベリアの胸はときめく。


「それにしても、人嫌いで気難しいあの精霊たちに気に入られるなんてアベリアはすごいな」

「そうなんですか?」


 先ほどの精霊たちの会話は随分と楽しそうだったから意外だ。アベリアが不思議そうに尋ねると、フェイズは苦笑しながら言う。


「俺自身が人嫌いなのももちろんだけど、精霊も人との関わりを好まない。だから精霊公爵は政に関わっていても決して表舞台には姿をあらわさない。そのせいで、いろいろな噂が勝手に流れてしまうんだが」

「なるほど」


 納得してアベリアが頷くと、フェイズは不安そうな顔でアベリアを見つめる。


「フェイズ様?」

「……君は精霊に気に入られた。精霊の言う通り、君に拒否権はない。拒否すれば精霊に危害を加えられ、最悪命の危険もある。もうこの家から逃げることも許されないんだ。こんなことになってすまない。君の気持ちを無視するような形になってしまって……本当は、君の気持ちを確認してから精霊の試験を行うつもりだったんだ。精霊の試験を受ける前であれば、婚約を解消することも、この家から出て行くことも可能だ。でも、もうそれも叶わない。君がどう思おうと、俺と結婚しなければならないんだ」


 神妙な顔で、フェイズはそう言うと俯く。フェイズはアベリアの気持ちを尊重しようとしてくれていた。それが嬉しくてアベリアは思わず頬を緩める。


「フェイズ様、お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫です。私はこちらに来る時に覚悟を決めてきました。どんな場所であれ状況であれ、その場所で幸せを見つけてみせると。それに、ここは私にとって実家よりも安らげる場所なんです。フェイズ様の婚約者になれてよかったと今では心から思っています」


 アベリアがそう言って嬉しそうに微笑むと、フェイズは目を大きく見開いてアベリアをじっと見つめる。そして、いつの間にかアベリアを抱きしめていた。


「ありがとう、そんな風に言ってくれて。俺も、アベリアが婚約者で、俺の結婚相手で本当によかった。ありがとう」


 アベリアは驚いたが、すぐに微笑んでフェイズの背中にそっと手を回して優しく抱きしめ返した。





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