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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第1章

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79.調査報告(と言う名の推理パート)①/三人称

 どんな令嬢でも、貴族として普通に暮らしていたならば、獣人奴隷の少年と手を取り合って夜道を行くなどという経験はできない。

 しかも、これから屋外で魔鳥を焼いて食べるという――いわゆる焼き鳥パーティーに招待されている。


 それはきっと、どんな夜会のご馳走よりも美味しいだろう。

 レッドと手を取り合って田舎道を歩むのは、どんな舞踏会のダンスにも比べられない経験だ。

 どんなパーティーのエスコートにも、勝るとも劣らない。


 だから、今のまま――属性があってもなくても、何も変わらないままでいるのも、悪くない。


 ところで、レッドはこの村に着いてからほとんど寝込んでいたし、わたしも宿から離れた場所までは足を運んでいない。

 暖かい状態で食べられるように、持ち帰り用の食事を購入する店は、できるだけ宿の近くを選んでいた。魔法で温めることもできたけれど、やはり出来立てのほうが美味しいのだ。


 つまり、はっきり言って広場の場所がわからなかった。レッドも、広場の調理設備を借りるとは聞いたものの、場所まではしっかり聞いてはいなかったのだ。


「大丈夫。広場とか集会所みたいなのは、だいたい、村の真ん中にあるし。明るくて美味(うま)そうな匂いのするほうに行けば正解さ!」

 レッドはそう言ってわたしの手を引いた。


 * * *


「で、いったい何を言ったんだ? お前(クロス)が毒舌なのは承知しているが、泣かせるなんて、ちょっと捨て置けないぞ」


 広場には、焼き鳥を摘まみながら飲んだくれる二人の冒険者がいた。

 魔鳥の肉を捌き終わったクロスにリオンが合流し、流れでサシ飲みが始まったのだ。

 レッドから事情を聞いた後、リオンは自分の出る幕はないと判断し、後をレッドに任せて宿を出てきた。


 幸い、魔法鞄(マジックバッグ)に隠し持っていたワインはまだ残っていた。

 手際よく肉や野菜を串に刺し、ついでに焼いてしまえと調理が始まり、ついでに軽く一杯やるかとリオンがワインを取り出した。いつにも増して口が重いクロスから事情を聞き出すため、という思惑もある。


「夜中まで火を(とも)していても、村人の迷惑になる。焼ける分は先に焼いてしまおう。温め直すだけなら、魔法でもできるだろう?」

「そうだな……」


 クロスはそう言ったきり、しばらく黙って串に刺した肉を焼き、焼けた端から食べ、飲み、ほどよく酔いが回ったところでポツリとこぼした。

「腹が立ったんだ」


 すかさずリオンが「何に?」と問い返した。

あの娘(アリア)が、才能を粗末にしていることに」

「無茶言うなよ。アリアちゃんだって、好きで“属性なし”になったわけじゃないぞ」

「それだよ」

 クロスが、自分のカップにワインをなみなみと()ぎ足した。


「“鑑定の儀”なんかを頭から信じて、せっかくの才能を無駄にして」

「誰でも普通、信じるだろ。鑑定魔法の精度を疑うなんて、お前(クロス)みたいな変人だけだ」

「そりゃ、リオンは体制側だもんな。鑑定魔法の真実について、言及されたら困るよな」

「……教会の司祭たちには、親父と兄貴から厳重に注意しておいてもらうよ」

 むす、とした調子でリオンが言った。


「アリアの両親も、なぜ“属性なし”という鑑定結果なんかを受け入れた? 親なら、他の教区に駆け込んででも、望んだ結果が出るまで鑑定し直すものだろう。娘の人生がかかっているんだぞ? 伯爵家なら、金を積んで虚偽の鑑定結果を出させることだってできたはずだ。貴族なら、たいがい()ってるだろうが」

「幼少時の“鑑定の義”は慣習として、ほぼ義務化されているけど、それ以外の鑑定は任意だからね。それに彼女は、ハーフエルフだと思われていたようだし……」

 幼少期から(うと)まれていたのだろうね、と言いづらそうにリオンは続けた。

「忌み子にかける金はない、ってか」

 クロスが吐き捨てる。


「なんていうか、その件については複雑なんだよ、あの家(ヴェルメイリオ)は」

「どうせ、その辺りの報告も上がっているんだろう?」

「まあな。結局のところ、真実は彼女(アリア)の実の母親にしかわからないことだが……」


「実の?」

「今、あの家で伯爵夫人を名乗っているのはレナード(アリアの父親)の後妻だよ」

「調査過程で名前が出ていたシャーリーンというのは」

「連れ子だな。アリアとは腹違いの妹ということになる」

「そうか……」

「少しは頭が冷えたか? とにかく、アリアちゃんを責めるのはお門違(かどちが)いだよ」


「……手遅れだ」

「まさか、それで泣かしたのかっ?」

「否定はしない。無知は言い訳にはならない、と色々……」

 クロスはうなだれ、リオンは呆れて天を仰ぐしかなかった。

 血の(つな)がらない母と、腹違いの兄弟姉妹と暮らすことになった子供が、どのような苦労を強いられるかは、昔からわかりきっている話だ。それこそ、おとぎ話の中にまで浸透している。


「クロス、また報告書ナナメ読みしただろ」

「他人の家庭環境に興味はない」

「一応、仕事だぞ。真面目にやれ」

「オレが頼まれた仕事は、お前の“お()り”だ」

「屁理屈をこねるなっ」

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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