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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第1章

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58.白の証明/クロス視点

「それなら、確信は“白”ってことでいいんだな」

 リオンが念押しする。

(無罪)(有罪)か、議論するのも馬鹿らしい。冤罪と見るのが妥当だろうな」

 オレも今度こそ、誤解が生まれないようにきっちり答える。

 安心したようにリオンが破顔した。

「一瞬、焦ったぞ。お前(クロス)の冗談は(たち)が悪い」


 次にまたやったら怒るからな、と釘を刺された。

 オレにとってはただの言葉遊びだが、リオンにとっては倫理に反することらしい。

 自分が騙された(引っ掛けられた)ことよりも、軽々しく有罪とも取れる発言をしたことを怒られてしまった。

 相手がアリアだからということもあるだろうが、根拠なく人を疑うことはしたくない、と臆面もなく綺麗事を言う。

 そんな調子だからこそ、面従腹背やら権謀術数やらが横行する世界に耐えられなくて、冒険者になったのだろう。

 正義感が強いと言えば聞こえはいいが、(やや)もすると人を信じ過ぎる嫌いがある。

こいつ(リオン)も、アリアとは違った意味で野放しにすると厄介な……)


 魔法は人並みだが、基本的に頭がいいし腕も立つ。持ち前の正義感を振りかざしても、正論を押し通せるくらいの強さはある。男だから無意味に襲われることもない。

 そういう意味では心配はなかったが、平均よりも顔と愛想が良かったため、最初は女絡みのトラブルが絶えなかった。


“市井の女に貴族風の(あしら)いなんかしてたら、無駄に惚れられるだけだろうが”


 叱りつけて矯正した結果、妙に軽薄な遊び人風の冒険者ができあがった。

 遊び人を装っていると、女どもは容易に近づいては来なくなった。堂々と粉をかけてくるのは、商売女くらいのものである。

 泥沼を回避できるようになって、結果的には成功だったが……ちょっとリオンのご両親には顔向けできないかもしれない。


 一見、軽薄そうに見えるようになったリオンだが、中身は昔のままなのだ。アリアのことも、いとも容易く信用した。

(まあ、リオンの“人を見る目”は信頼できるから構わないが……)

 アリアが反逆罪とは無関係だということは大前提として、問題はそれをどう証明するか――だ。


「物証なしで報告を上げたところで、疑いを晴らすことは難しい。このまま監視を続けて、黒幕を探り出すほうが賢明だろうな」

 依頼内容は、対象の身辺調査であって、冤罪事件の解決ではない。

 だが、調査対象――アリアの潔白を証明するに足る証拠がない。


 単純な殺しや盗みの犯人探しとは違って、目撃者の有無や現場に残っていた痕跡から容疑を固めてゆく種類の犯罪ではないのだ。アリバイの有無にいたっては、まるで重要ではない。


 裏で糸を引き、周りの人間を操って後ろ暗い願望を成就させることは、極端なことを言えば監獄内にいてもできるのだ。

 アリアは寄宿学校(ローランド)に入れられていたから何もしていない、という反論は裁きの場では通用しない。

ローランド(あそこ)の出入り規制が緩いのは周知の事実だしな)


 かと言って、何もしていないことを証明することもまた難しい。

 さらには陰謀の企てを疑われた場合、後々まで風評被害が付いてまわる。

 身分のある家柄ならば尚のこと、断罪されるよりも大きな痛手を受ける場合がある。アリアのような若い女性の場合、良縁が遠のくことは間違いない。

 体面がかかっている貴族の場合、疑われたが最後なのだ。

 だがアリア本人は、嫌疑をかけられていることにさえ気づいていない。


(どうしたものか……)


 こちらは偶然を装って接触している以上、過剰なお節介はあらぬ疑いを招く。

 辺境まで送り届けてやりたくても、荒野の谷を越えるには、今のオレたちでは力不足だ。

 しかしこのまま放っておけば、遠からず誰かの罪を着せられて、身代わりに断罪されるだろう。

 辺境に行く羽目になっている時点で、すでに十分、陥れられているようにも思える。

 手っ取り早く、誰もが納得行く形で決着をつけようとするなら、アリアの無罪を証明するのではなく、黒幕を引っ張り出して糾弾するしかないが……。


「それなら、やっぱり一緒に辺境まで行くしかないよ」

 思案していると、突然リオンが言い放った。


「お前が“力不足だから送ってやれない”ってさっきアリアに言っただろうが」

「そのためにこれがある!」


 リオンが、ギルドで受けた「原初のダンジョン(仮)」の調査依頼書を取り出した。

「これを理由にすれば、一緒に辺境まで付いて行っても不自然じゃないだろ。Aランク冒険者を雇うなら、俺らとアリアちゃん側で折半すればいいし」

「採用」

 悔しいが名案だった。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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