45.食事会改め生活魔法講義①
「生活魔法は、現代魔法語で構築されているから難しくて……構文を弄ったことはないわ」
一度、火種を作る着火用の生活魔法を改良して、攻撃魔法にできないかと思ったのだけれど、ボヤ騒ぎが起きそうになったので諦めた。
火を嫌がる獣に対しては、大きい炎を突きつけることができれば牽制になる。
野営で火を起こすときにも、種火より大きな炎を直接生み出すことができれば、時間の節約になる。焚き火が完成するまでの時間が短縮できれば、その分だけ、獣に襲われる危険性が減る。
(……と思ったのだけれど)
わたしの魔法知識は独学だから、基礎はギルドの講習会で習う程度の知識しかない。魔法というのは、暗記させられた初級魔法をそのまま打ち出すだけ、というのが当たり前の世界だった。
新人冒険者と初級ランクの冒険者の間では、それで十分なのだった。理論を学んでも、実戦で使えなければ死ぬだけだ。
いかに早く、強い魔法を打ち出せるかが全てであって、理論について知りたがることは無意味とされていた。
けれど、属性魔法が使えないわたしは、一般的ではない方法を取らざるを得なかった。
ギルドでは、鬱陶しがられながらも魔法言語の文法や構文を聞き出して、借りられる魔法書は全て借りて読み込んだ。
冒険者ギルドだけではなく、魔法使いギルドにも行って魔法書を借りて読んだ。こちらも初級ばかりだったけれど、冒険者ギルドとは違う種類の初級魔法が載っていたから、ほんの少しだけ使える魔法の種類が増えた。
この世では、攻撃用の属性魔法が主流なのだ。それ以外の既存魔法の数は少ない。
だからわたしは、独自に魔法の改良を試みたことがある。
基礎ができていない――現代魔法語を正確には読み解けない――のに、属性のある生活魔法の出力を上げようとして、火事になりかけたのだ。
(安全を考慮してギルドの演習場でやったのに……)
破裂した炎が消えなくて、ギルド屋舎に燃え移りそうになった。
そのときは、当たり前のような顔をして「火魔法の練習をしていて失敗した」と言い切った。
ギルドの演習場では、魔法の失敗に備えて屋舎には防御魔法がかかっている。
初心者が覚えたてのファイアーボールを何発か当てたくらいでは、屋舎が燃えたりはしないものなのだ。
ギルドの人たちは不思議がっていたけれど、知らないわからないで押し通した。
それ以来、生活魔法の改良は控えている。
ちなみに、無属性魔法の改良は成功して、バフとデバフは初級レベルながら最強になった。
「現代魔法語が難しい? 面白いことを言うな」
まあ、普通はそういう反応だよね。
「お前なら、生活魔法くらい造作もなく改良していると思ったが」
それは買い被りです。
魔力移譲の魔法がすぐに理解できたのは、あの魔法の魔法陣が、古代魔法語で書かれていたから。
生活魔法は現代魔法語だけれど、わざと難しく書かれているようで、基礎ができていない者には理解しずらかった。
「わずかとはいえ、火魔法が含まれているから、素人が弄るのは危険かと思って……。構文も完全には理解できないし……」
ボヤ騒ぎを起こしたことは内緒にしておく。
「……まあ、賢明な判断だな」
クロスさんは、いまいち納得できない様子ながらも、わたしの判断を否定しなかった。
「で、どこがわからないんだ?」
えっ!?
ここまでお読みくださってありがとうございます。
よろしければ、下の方の☆☆☆☆☆☆を使った評価や、ブックマークをしていただけると幸いです。




