表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/288

35.魔法使いと猫/クロス視点

「うわごとだったのかよ……」

 リオンが呟いた。

「すまん。体調が悪かったんだろうに、全然気づいてやれなかった」

 リオンの馬に乗っていた少年が、意識を失って落馬した。


 慌てて馬を止めて、少年の様子を見に降りるが、オレの後ろに乗っていた少女は、馬が完全に止まるのも待たずに飛び降りて、倒れている少年に駆け寄った。

「おい、危ない。勝手に降りるな」

 足元だってろくに見えていないくせに――いや、あれは見えているのか。

 とっくに日は暮れた。ここは森の中で、月明かりもほとんど届かない。光源はオレの光魔法だけのはずだった。

 だが少女は、夜の闇に躊躇することもなく、駆け戻って従者の少年を抱き起こそうとした。


 オレは光魔法で作り出した光球を手元に呼び寄せ、自分たちの周囲に灯りを集中させた。

 これでは、魔物のいい標的だ。光を恐れないどころか、光に吸い寄せられる種類の魔物もいるのだから。


「レッド!」

 アリアと名乗った少女は、少年の傍らに(ひざまず)き名を呼び続ける。

「待て、あまり動かすな」

 仕方がないので様子を見てやると――まったく、こういう貧乏くじはいつもオレだ――少年の体温が異常に高い。人間なら普通に熱が高い、と言い切るところだが、生憎、猫族獣人の平熱を知らない。

 種族特性として、普段から体温が高めなのではないかと推測するが、人間と比べて判断が難しい。


 すると、傍でアリアが治癒魔法をかけると言って、魔力を練り始めた。

「治癒魔法をかければ、きっとよくなるわ……」

 そう言いながらも手が震えている。

 オレは少女の肩に手をやって止めた。

「やめておけ。これ以上、治癒魔法を使うな」


 馬上で聞いた話によると、途中でずいぶんな無茶をしたらしい。

 乗っていた馬車が盗賊に襲われ、乗客の大半が犠牲になったのだという。普通ならまとめて殺されていたところだが、アリアには獣人族の従者――レッドがいたため、彼に守られながら他の乗客たちとは別に逃げることができた。

 少年はアリアを守って怪我をし、その度に治癒魔法を使って治しながらここまで来たのだろう。


 それなら話が通らなくもない。

 沼蜥蜴(リザード)と交戦して死んだ冒険者たちは、馬車の護衛だったのだろう。不利な状況でも逃げなかったのは、乗客たちを守るためだ。

 だが、護衛の主力が離れた隙に、馬車は盗賊に襲われてしまった。

(十中八九、陽動だろうな)

 たかが盗賊に、沼蜥蜴(リザード)を使役できる術者がいるとは思えないが……。


「ここに来るまで、何回くらいこいつに治癒魔法(ヒール)をかけた?」

「……」

「覚えてないわけないよな」

 この娘は、予想以上に高い魔法知識を持っている。

 魔力残量の把握のため、使った魔法の種類と回数を数えていないはずがない。

 アリアは、(うつむ)いたまま首を振った。

「本当に覚えてないの……。十三回目までは数えていたけれど……。たぶん、その倍以上はかけてると思う……。上級と最上級を含めて」

 さすがのオレも、ため息しか出なかった。


「わかった。なら、もう絶対、自然回復するまで治癒魔法はかけるな。これ以上、こいつに魔力を流し込めば、最悪、魔素中毒で死ぬぞ」

「!」

 顔を上げた少女の目は――左右の色が違って見えた。光の加減かもしれないが、まるでハーフエルフのような虹彩(こうさい)だ。

 やめろ。そんな顔をしてこっちを見るな。

 魔力中毒に治療法はない。自然に過剰な魔力が抜けるか馴染むかするのを待つしかないんだ。


「とにかく、早く村に行って、ちゃんとした場所で休ませるしかない。――リオン、そいつ(レッド)を前に乗せてやれ。オレは、こいつ(アリア)を抱えて走る」

「ああ」

 意識の無い奴は、前に乗せて抱えるしかない。馬に乗り慣れない女も同様だ。後ろに乗せていたら、早駆けした瞬間に振り落とされるだろう。

 アリアに拒否権はない。

 言葉を(つむ)ぐ間も与えず、オレは自分の馬にアリアを乗せた。さっきまでと同じ横乗りの体勢だが、今度は自発的に掴まっていてもらうだけでは不安である。片手で抱き寄せ、体が密着するまで抱き締めてから馬を飛ばした。

「喋るなよ。舌を噛むぞ。――どこでもいい、しっかりつかまっていろ」

 慣れた奴なら馬のたてがみにでも掴まらせておくが、女と子供は仕方がない。

 仕方がないんだ。

「邪魔だ。頭も下げてろ」

 アリアがきゅっと身を縮めて、オレの胸元に擦り寄った。

 光魔法の光球を整列させ直し、道の両脇を真っ直ぐに照らす。ついでに光球自体もいくつか追加してやった。

 これで日中とほぼ同じ速度で走れるだろう。

 途中で何体かのはぐれウルフを跳ね飛ばしたが、無視して駆け抜けた。


 横のリオンを見ると、同じような体勢で猫族の少年を抱えて走っていたが、どことなく不満そうだった。

「どうせ抱えるなら、俺、アリアちゃん(そっち)がよかったー!」

「言うと思ったよ」

ここまでお読みくださってありがとうございます。

よろしければ、下の方の☆☆☆☆☆☆を使った評価や、ブックマークをしていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ