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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第1章

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33.リオンと任務 あるいは冒険者と依頼③/リオン視点

 それはともかくとして、一見した感じ、アリアちゃんは普通の女の子だった。

 しかも、ちょっといい家の娘さんだろう。

 実家が王都であることや、奴隷とはいえ従者を連れていることからもわかるが、生粋の平民冒険者と違って、動作や話し方に品がある。


 王都の地価は高い。

 その一角に実家があるというだけで、身分の上下を問わず、裕福な家柄の出身であることが想像できる。


 実際、いるのだ。

 表向き身分は隠しているが、貧乏貴族の三男坊とか、子爵・男爵家辺りの五男坊・六男坊とか、もっと上の爵位(ほう)でも、庶子だとか、非嫡出子だとかで実家に拠り所がない奴とか、世知辛い諸事情で冒険者に身をやつしている貴族階級の子弟が。


(俺も他人のことはとやかく言えないが……)


 冒険者には、出自や過去を詮索されないという利点がある。

 ただ単に、タブーだからという理由だ。なんの強制力もないマナーみたいなものだが、それをありがたく思う奴らもいる。


(元貴族は、平民に(くだ)ったとしても、噂は付いて回るからな)


 ちなみに、女性の場合は政略結婚の道具として使い道があるとされているので、冒険者として市井(しせい)に出てくることは滅多にない。


 たとえ潤沢な魔力や有用なスキルがあっても、貴族出身の女性が在野の冒険者としてクエストに出るには、何かと課題が多いのだ。


 まず、最底辺の衣食住環境に馴染めない。

 野宿は無理。安宿で男どもと雑魚寝も無理。ダンジョンに潜りっぱなしで、何日も風呂も行水もなしという事実に耐えられない。二日以上、同じ服を着る生活には発狂寸前。


(まあ、貴族の女性ってのは、美しく装うのが仕事みたいなものだからな……)


 そもそも、侍女がいないと生活全般のことが壊滅的。野外料理が作れない食べられない。そのくせ食事が携帯食だけとかあり得ないと駄々をこね始める。

 魔物の解体までしろとは言わないが、剥ぎ取りも魔石を抜く作業も、汚れるからと嫌がる。


(なんか、思い出したら腹立ってきた)


 前に受けた護衛依頼――とある貴族令嬢の、社会勉強という名の物見遊山に付き合わされるという、最悪な依頼を思い出した。

 彼女は「冒険者」というものを体験してみたいと言い、聖女のジョブでパーティーに加わってきたが、なんと驚きの侍女と従僕同伴での参加。全部で十人以上の大所帯になった。

 もはや冒険者のパーティーではなく、ちょっとした商隊(キャラバン)だった。


 これも“しがらみ”ゆえに断れなかった依頼の一つだ。

 確かに支払い(ペイ)は良かったが、二度と関わりたくないと思ったものだ。


貴族令嬢っての(あれ)は、同じ女でも平民の女とは全く別の生き物だよっ)


 その点、貴族出身でも男連中の場合はまだマシだ。軍務や兵役、騎士学校での共同生活、剣術の鍛錬などで一応は泥臭いことにも慣れている。

 身分を隠したまま冒険者家業を続けていられるのが、その証拠だ。


(同じ境遇の者が見たら、意外とわかるものだけどなっ)


 高レベルの冒険者を金で雇って、パワーレベリングをやりたがる貴族根性丸出しの連中もいたが、そんなのでも“貴族令嬢”という種族よりは全然マシだ。


(あの護衛依頼のときは、相棒(クロス)の機嫌が最悪で)


 道中のいざこざで心労が絶えないというよりは、クロスがいつキレるかと思うと、生きた心地がしなかった。

 それもあって、貴族出身の女性とはあまり関わりたくはなかったのだが、少なくともアリアちゃん自身は貴族ではなさそうだ。


 まともな家格の貴族なら、自分の娘を辺境へ奉公に出したりはしない。


(しかも、あの辺境伯(・・・・・)のところだぞっ)


 辺境へやるくらいなら、身分は低くても縁のある貴族に嫁がせたほうが、よほど互いに幸せだろう。

 とにかく辺境は辺境(・・)なのだ。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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