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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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194.エルフになりたい⑤アイリスの話

 元はと言えば、誰もが敬遠していた猛毒の納品依頼を、知らずに受けて平然と納品したわたしの落ち度だ。

 おまけに、出先の村で毒蜘蛛のスタンピードに遭遇し、わたしが使える魔法の中で唯一、攻撃魔法に匹敵する威力の毒魔法で対抗したら、その後から不吉な二つ名で呼ばれる羽目になったのだ。

(だって仕方がないじゃない。自分が盛られた毒(・・・・・・・・)と同じ種類の毒を使った魔法で、村中の蜘蛛が全滅するとは思わなかったんだもの)

 それが、村を襲った毒蜘蛛のさらに上位種である、紫大毒蜘蛛の毒だったということは後から知った。


 以来、アイリスは売名中の毒薬使いであり、金のためなら何でもやる、あくどい女だと思われている。

 浮浪者や奴隷を、薬の実験台として使っているという噂まで立っていた。


 装身魔法で変えた容姿を、キツめの美人に設定したのも(まず)かった。

 一人でギルドに出入りしても舐められないように、近寄りがたい雰囲気をまとった大人の女性に見えるよう調整したかったのだけれど、知り合いのお姉さんをモデルにした結果、変態に絡まれるようになってしまった。

 靴でも足の裏でも舐めるから、お付き合いしてくれという類の変態だ。

 気持ちが悪いので軽い麻痺毒をぶっ掛けてやったら、(もだ)えながらも恍惚(こうこつ)としていた。

(麻痺毒に不純物でも混じっていたのだろうか……?)

 あれだけは今でも謎である。

 

(あとは、裏ギルドで依頼品を撒き散らしたのも原因の一つかなぁ……)

 裏ギルドで受けた納品依頼を果たすため、アイリスとして(おもむ)いたところ、こちらを若い女と見て舐めた態度を取ってきたので、反撃したのだ。


 納品した商品に難癖をつけて支払いを渋ったため、それならお代は結構、まがい物だと言うならその身をもって確認しろ、とその場で撒き散らして帰ってきた。

 依頼品とは当然ながら、毒薬の一種である。

 小麦粉のような粉末に加工したそれを浴びた者は、すべからく昏倒(こんとう)して動かなくなった。

 

 最初こそ苦しそうに(もだ)えるものの、最終的にはさほど苦しまず、眠るように()く。

 毒の影響で顔色が赤紫色に変わってから、すぐに手当をすれば助かるけれど、顔色が正常にもどるまで放置しておけば死ぬ。

 泡を吹いて転げ回ったりせず、死後は顔色も元に戻るため、すぐには毒殺だと気づかれにくい。

 その名を“永遠の眠り()”という。


 毒薬としては珍しくもない代物だけれど、屋内で使用する者は珍しい。

 なぜなら、風上と風下を分けにくい室内では、粉末状の毒を撒き散らせば、高い確率で自らも被害を(こうむ)る。

 本来、無人で作動するような罠に組み込んだり、密室で大量殺人を行うときに使われる毒なのだ。

 それをアイリス(わたし)は、至近距離で自分の目の前の相手に振り撒いた。


 にやにやと遠巻きに見ていた者たちは、その行為に一瞬“やはり偽物だったか”という表情をし、周りの者たちが次々に倒れる様子を見て、顔を青くした。

 倒れた者たちの顔色が、徐々に赤紫に変わってゆくのに対し、粉の直撃を免れた者たちが、次々に狼狽(うろた)えて青ざめてゆくのは愉快だった。

 

「解毒剤が欲しいなら、売ってあげてもいいわよ」

 アイリスとしてのわたしは、そう捨て台詞を吐いて裏ギルドを出た。

 そのときに告げた解毒剤の価格は、誰が聞いても“永遠の眠り()”の依頼料を上乗せしたとわかる、ぼったくり価格であった。


 追ってくる者は誰もいなかった。

 倒れた者たちがどうなったかは知らない。

 仮にも裏ギルドの職員なのだ。解毒剤くらい持っているだろう。

 

 アイリスを演じているときは、寄宿学校の高飛車な上級生を真似して、わざと高圧的に振る舞うようにしていたけれど、妙な二つ名をいただいてからは、その演技にも拍車がかかった。

 なぜか感情の起伏までもが(いちじる)しく平淡になるため、冷酷な振る舞いも簡単にできた。


 アイリス(・・・・)は彼らの生死に一欠片も興味がなかったし、振り返ることもなかった。

 解毒剤を売ってくれと追い(すが)られはしなかったので、その件はそれっきりだったけれど、以降、裏ギルドからの依頼は減った。

 減ったけれど、支払いを渋る者は皆無になった。

 同時に、件数が減った分を補うように単価の高い依頼が増えた。


 そんなものだから、クレイドール奴隷商会で門前払いや出入り禁止を言い渡されても不思議はなかったのだ。

 あのときは、奴隷商会の仕組みをよく知らなかったから何とも思わなかったけれど、後からレッドに聞いた話では、確かにそういう出禁システムがあったそうだ。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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