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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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192.エルフになりたい③ 魔法学園の話

 わたしが亜人種(ハーフエルフ)として生きることを決めたと言えば、クロスも無理には魔法学園に勧誘してこないだろう。

 才能ある者を勧誘することが義務なのだから、ハーフエルフのような半端者を連れて行っては、客員教授であるクロスの恥になる。

 突然変異で虹彩異色(オッドアイ)になった貴族家の人間(・・)ではなく、エルフの混血なのだから。


 いくら“天属性”という珍しい属性を持っているとしても、それは珍獣としてである。学園から優秀な魔法使いを排出するという事業には貢献できない。

(わたしも珍獣扱いは遠慮したいし……)

無理して人間(ヒト族)を名乗るより、ハーフエルフでいたほうが、わたしにとっては安全だ。


「アリアちゃん……亜人種(ハーフエルフ)を名乗るなら、もう貴族社会には戻らないつもりかい?」

 わたしは頷いた。

「戻れないわよ、虹彩異色(オッドアイ)では」

 王都で暮らすのも厳しい。

 できれば、この村のような亜人種集落で、ひっそりと静かに暮らしたい。

 解体魔法は使えるから、罠を使った狩りと、畑と、薬草採取と、魔法薬の調合。そういうので、貧しくてもいいから穏やかに生きたい。

 もう、刺客を魔力暴走で焼き殺したり、毒で皆殺しにしたり、死体をスライムの溶解液で処理するようなことは、したくはない。

「イーリースお継母(かあ)様とシャーリーンを断罪して、アルトお兄様の安全を確認できたら、わたしは……」


 そこまで喋ったら、腕をつかまれて室内に引っ張り込まれた。

「立ち話で済ませるような内容じゃあないだろう。そこに座れ」

 魔法薬学大全を放り出したクロスに、空いている手前のベッドに座らされる。

 わたしの前にクロスが、右隣にリオンが当たり前のように座った。リオンとの距離が近い。クロスは膝詰め談判のようだ。

(わたし、何か(まず)いこと言ったかしら……?)


「ということは、兄貴の安全が保証された後は、魔法学園に編入できるな?」

(え?)

「リオン、さっさと解決するぞ。すぐに協力者《・・・》に連絡を取って、ヴェルメイリオ家の内情を探らせろ。徹底的に、だ」

 またもや、え? と思っている間に、クロスがわたしの手を取って、さも決定事項のように言ったのだ。


「継母と義妹を排除して、父親に爵位を返上させ、兄貴に家を継がせたいんだろう? オレたちでお前の望みを叶えてやるから、代わりに魔法学園に編入しろ。オレの弟子として師匠(メルローズ)に紹介する」

 助けを求めてリオンのほうを見ると、やんわりと見捨てられた。

 

「俺も、片田舎の集落で一生を終えるのはもったいないと思うよ。アリアちゃんが貴族社会に戻りたくないっていうなら、それは尊重するけど、他にやりたいことがないのなら、魔法学園には行ったほうがいい」


 リオンは、前にクロスが勧誘してきたときには味方してくれてたのに、今日は違うのかな──?

 そんな思いが伝わったのか、リオンは丁寧に付け加えた。


「何も、ハーフエルフだからって田舎の集落に隠れ住まなきゃいけない決まりはないんだ。魔法の勉強をして、魔法職に就いて、アレスニーアで暮らすっていう選択肢もあるんだよ。

 前は、クロスが暴走気味だったから反対した。今も、クロスの弟子にはならなくていいと思ってるし、クロスの師匠にも両親にも会わなくていいと思ってるけど──アリアちゃんは、絶対に魔法の勉強をしたほうがいい。将来の選択肢の数を増やすためにも」


 学校や学園という場所には行きたくない。

 ローランド寄宿学校には、嫌な思い出がたくさんある。

 どうせ、(まな)()というのはどこも同じだろう。

 少数派は徹底的に排除されるものだ。

 亜人種(ハーフエルフ)が編入したら、絶対に珍獣扱いされるに決まっている。

 ローランドでは髪で右目を隠して、認識阻害の魔法もかけて、目立たないように誤魔化していたけれど、魔法学園では同じようにできるかどうか、わからない。

(魔法使いばかりなのだから、見破られてしまうかも……)

 

 でも、全てが解決した後ならば、編入を断る理由がなくなってしまう。

 奨学金が出ると言われたら、拒否もできない。

 奨学金だけでは生活できないのは事実だけれど、それを言ったら我が侭だと思われそうだ。

(断り切れない……)

 

「アルトを引き合いに出すのは卑怯かもしれないけど、きっとアルトも、アリアちゃんが魔法学園で楽しく過ごしていると知ったら喜ぶと思うよ」


 隣に座ったリオンが、こちらをのぞき込みながらそう言うけれど、魔法学園に行くことと、楽しく過ごせるかどうかは別である。

 社交的で友人が多そうなリオンには、一生わからないだろう。

「全てが解決したら、それもいいかもしれないわね……」

 わたしは、うつむいて小さく呟いた。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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