187.ハーフエルフ問題③旅程
わたし個人が嫌われるのは問題ない。
亜人種として人間に嫌われても、亜人種族に嘘つき呼ばわりされても、仕方がない。
愛玩用の奴隷と思われても仕方がない。
でも、リオンとクロスが誤解を受けたり、レッドが獣人族から嫌われたりするのは駄目だ。
(あーあ、どうしてノアさんもジャックさんも留守なんだろう)
族長であるノアさんの厳命により、恩人として特定されたわたし(と仲間たち)は歓待を受けることになった。
けれど、ウランさんやマイアさんから聞いた話によれば、ノアさんもジャックさんも仕事で遠出していて留守なのだという。
集落全体に出された命令は、自分たちが不在であろうと何だろうと、見つけたら必ず歓待しろ、できる限り便宜を図ってやれ、というものだったらしい。
(そこまで大袈裟にしなくてもいいのに……)
さらには、可能なら自分たちが戻るまで引き留めておけ、遠慮されても一歩も引くなという、いったい何と戦っているのだという強硬姿勢だったのだという。
さすがに、相手の都合もあるから、強引に引き留めるのは拙いだろうということで、ウランさんが命令を緩く修正させたらしいけれど。
ウランさんが、挨拶に来たときにそう言っていたのだ。
「ま、用事がないならノアたちが戻るまで、ずっと居てくれても構わないけどな!」
「ちなみに、いつごろ戻られるご予定なのですか?」
「ヴェルメイリオ卿の依頼で辺境まで行ったから、あと一、二ヶ月は戻って来ないだろうな。場合によっては、3か月くらいまでは延びるかもしれない」
と、ウランさんが豪快に笑いながら言っていた。
「そんなに長く……」
「王都のギルドに行っていたときは半年単位だったから、一、二か月なら短い方さ。傭兵稼業だったときは、年単位で放浪していたしな」
お祖父様を長く待たせるわけにはいかないので、のんびりはしていられない。
すでに、通常の旅程からはだいぶ遅れている。
たとえ貴族の贅沢な旅ではなく、平民の出稼ぎ旅だとしても、通常なら一か月程度で荒野を渡りきって大森林地帯に着くはずなのだ。
馬車を乗り継いで街道を進み、スムーズに荒野の谷を渡れた場合には。
ところが、わたしたちは街道を進んでいた馬車が強盗に遭ってからは、通常の旅程を大きく外れてしまっている。
レッドが倒れて街道沿いの村で長逗留してしまったし、今も追っ手を避けるために平原を突っ切って、辺境ではない別の町に寄ろうとしている。
荒野の谷を渡るためには、ランクAの冒険者が必要だということを、知らなかった事実は大きい。
もし、お父様がお祖父様宛てに、わたしを送り出した旨をしたためた手紙でも出していたら、手紙のほうが先に届いているかもしれない。
わりと移動速度が遅い郵便馬車でさえ、護衛を付けて真っ直ぐに荒野を渡るのだ。
手紙が先に着いてしまっていたら、到着が遅れていることで心配をかけてしまうかもしれない。
もしくは、遅い! と怒らせてしまうかもしれない。
(お父様が手紙を出しているとも思えないけれど……)
そんなワケなので、長期滞在は丁寧に辞退させていただいた。
ウランさんが言っていた“ヴェルメイリオ卿”とは、おそらくお祖父様のことだ。
前にリオンが、辺境にはヴェルメイリオ辺境伯のお屋敷と村しかないと言っていた。お祖父様のお屋敷と、部下や使用人の村しかないような、辺鄙な場所らしい。
そして、周辺には魔物や魔獣がたくさん出るという。
(そんなところにノアさんたちが呼ばれたということは、狂暴な魔物がたくさん出たとか、そういうことなのかしら……?)
辺境が今どういう状況にあるのか、わからないのでお祖父様たちが心配だ。
後でウランさんに詳しく聞いてみよう。
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