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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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186.ハーフエルフ問題②四分の一のエルフ

 ところで、エルフのお祖母様は、いわゆる父方の祖母である。

 お父様のお母様である。

 ということは、本来ならお父様がハーフエルフのはずなのだけれど、そんな特徴は微塵もなかった。

 わたしはずっと、レナードお父様は人間(ヒト族)なのだと思っていた。


 そうでなければ、亜人種をあからさまに毛嫌いして、()(ざま)(ののし)り、(おとし)めるようなことを言うわけがない。ましてや、違法な亜人種売買に手を染めることなどないはずだ、と。

(それに……お父様がハーフエルフだったなら、自分と同じハーフエルフの娘を嫌いになれるはずがないと思うの)


 もしかしたら、セレーナお祖母様とレナードお父様は血が繋がっていないのかもしれない。そんなことを考えたこともある。

(辺境に行ったら、それも含めてお祖母様に詳しいお話をお聞きしたいのよね……)


 ただ、レナードお父様がセレーナお祖母様と血が繋がっていない人間(ヒト族)だとすると、わたしにエルフの血は一滴も流れていないことになる。

 そうなると、わたしは突然変異しただけの、ただの人間だ。

 ますます、この集落で素性をバラすわけにはいかなくなった。


 わたしがヴェルメイリオ家の娘だと知られれば、両親が人間(ヒト族)であることに気づく者が出てくるかもしれない。これでもヴェルメイリオ家は、上位貴族として名が通っているのだ。王都では、知らない者はない名家である。

(内実がどうであれ……ね)

 家族構成を知っている人間は多い。

 そうでなくても、貴族の血統から亜人種は生まれないというのが常識だ。貴族の両親から、亜人種(ハーフエルフ)は生まれないのだ。

 つまり、わたしがハーフエルフではないという事実に気づかれてしまう。


 一方、クォーターであるという事実を知られても、いいことは起きない。

 エルフと人間のクォーターは、ほぼ人間である。

 クォーターまで血が薄まると、虹彩異色(オッドアイ)や長耳のように外見に現れることはない。人よりほんの少し長生きだったり、ほんの少し魔法が得意だったりするだけなので、人間(ヒト族)と言っても十分に通る。

 ハーフエルフという呼び名はあっても、クォーターエルフという呼び名が存在しないのがその証拠だ。


 わたしも流行病にさえかからなければ、クォーターであっても、貴族令嬢として普通の生活を送っていたはずだ。

 お祖母様がエルフだという話は、悪意のあるデマだとでも言って一蹴し、二度と祖母の名前は口にしなかっただろう。

 エルフの血は孫の代までは受け継がれないというのが定説だから、エルフを祖父母に持つ者は、必死にその事実を隠そうとする。目や耳の特徴でバレなければ、人間として迫害を受けずに生きていくことができるからだ。


 そのため生粋の亜人種は、あからさまに亜人種を下に見ている人間よりも、その人間の振りをして迫害を逃れようとする混血の亜人種を、卑怯な裏切り者として嫌う。

(これはクォーターでも人間でも、バレたら面倒なことになるわよね……)

 ここは、見た目と一致している“ハーフエルフ”で通すべきだろう。家名も、引き続き伏せておくのが無難だ。


 今までは、亜人種(ハーフエルフ)だと思われないよう必死で隠してきたのに、今度はハーフエルフの振りをしなければならないとは、皮肉な話である。

 刺客や追っ手以外にも、身元がバレないように警戒しなければならないとは、気疲れしそうだった。


 何より、わたしがハーフエルフではないとバレてしまったら、わたしのことを“恩人のハーフエルフ”と言って広めた族長(ノアさん)に迷惑がかかる。

 今、わたしたちがこの集落で歓待されているのは、わたしが族長の命の恩人という触れ込みであり、亜人種(ハーフエルフ)に見えるからだ。

 そうでなければ、一番大きな宿に貸し切りで泊まらせてくれたり、宴を開いてもてなしてくれたり、ということはなかっただろう。


 宿の旦那さんは、わたしたちに夜間の外出は控えるよう十分に注意を促した上で、実際に危害を加えてくる者はいないはずだと言っていた。

 それは、わたしたちが許可を得た上で集落の中に入れてもらっている招待客であるからだ。

 一番大きな宿を貸し切ってまで歓待する上客に対して、ヒト族が嫌いだからという理由で危害を加えては、亜人種とヒト族の溝が深まるどころの話ではない。

 ヒト族の中でも上客としてもてなされるのは、今までは特使を務める貴族や豪商など、集落にとって重要な人物ばかりだったはずだ。彼らに手を出せば、最悪、権力を笠に着て集落そのものを取り潰されかねないことは、村人たちもわかっているのだろう。


 けれどそこへ、ヒト族だけれど“ただの冒険者”であるわたしたちが来た。

 正確には、ハーフエルフと猫族の獣人奴隷を連れた、ただの剣士と魔法使い(リオンとクロス)だ。

 モントレーさんやイザークさん、ウランさんやマイアさんなどの一部の人は、族長が探していた“恩人”がわたしであったことを理解している。

 が、事情を知らない村人の目には、亜人種奴隷を連れた人間(ヒト族)のことを良くは思わないだろう。

 歓待の理由が伝わっていない者もいるかもしれない。

 知らされていても、納得していない者もいるかもしれない。


 集落の中には、獣人族とエルフ族がいることは聞いたけれど、もしかしたら他の種族もいるかもしれない。その全員が、同じ考えを持っているとは限らないのだ。──宿屋の旦那さんもそう言っていた。

“貴族や、町のお偉いさんではないから、少しくらい脅かしてやっても問題にはならないだろう”

 そんなふうに考える者たちがいないとも限らない、ということだ。

 いたずら程度に夜道で脅かして、怯えるヒト族を見られたなら、溜飲が下がるという者もいるかもしれない。

(外の広場で野営していたなら、こんな難しいことを考えなくて済んだのにな……)


 歓迎してくれているのだから、やっぱり外の野営広場のほうがよかった、などと思うのは我が儘が過ぎるし、わたしもノアさんやジャックさんと会って話がしたかった。シアンにも会いたかった。

 でも、わたしのせいでリオンとクロスが揉め事に巻き込まれるのは嫌だった。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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