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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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140.攻防①

「見えた! あそこだ!」

 リオンが地平線の彼方を指さした。

 猛スピードでこちらへ駆けてくる四騎の魔装兵が、肉眼でも見える距離にまでに近づいたということだ。

 わたしは、主な視界を左目に切り替えた。その左目にも、風になびく緑のマントが鮮やかに映っている。

(壮観だけれど、嬉しくはないわね)

 国防の要だというからには、味方であれば頼もしいのであろうが、今は敵である。


 わたしは魔力移譲(トス)を行うための魔法陣を宙に描いた。

 左手で握り混み、手のひらに定着させる。

「詠唱破棄、15エナから行くわよ」

「おい!」

 クロスが何か言いかけたけれど、聞く耳は持たない。四騎が迫り来るまで時間がないのだ。

 沼蜥蜴(リザード)の死骸を燃やしたときは、3エナのファイアバーストで火柱が上がったくらいだから、混合魔法でも十分に通用するはずだ。

 二属性の混合魔法と各種バフ、その他の常時展開している魔法の分も含めて、魔石5個分くらい渡せば足りるかなと思ったのだけれど、クロスは不満だったらしい。


(これだから魔法使いって……)

 魔力回復薬と違って、相手の持ち得る魔力の何割を回復するか、こちらから指定はできないのだ。

 見たところ魔力移譲の魔法陣は、安全上、渡す側から何エナジー分を通すか指定することしかできない構造になっていた。その上、一度に1エナジー以上は渡らないようにストッパーが掛けられている。

 相手魔力の何割を満たすように、という指定の仕方をしてしまうと、予想以上に相手の魔力量が多かった場合、渡す側が全部持って行かれて魔力枯渇に陥る危険があるからだ。


 それに対して魔法薬は、摂取した者の魔力や体力のだいたい何割を回復できるか、品質によって分かれている。魔力量が多い者なら、上級の魔力回復薬を使わなければ、全回復はできない。

 クロスが買っていたのは上級の魔力回復薬だった。

 たぶん、あの混合魔法を撃つには足りないとでも言いたいのだろう。

 魔法使いという人種は、魔力に関しては貪欲で口うるさい者が多い。


「足りなかったら追加で移譲(トス)するわよ」

 わたしは、問答無用でクロスの右手を握った。

 左利きなら、利き手が自由になるほうがいいと思ったからだ。

「そうじゃない、15エナは……ああっ、チクショウ! 借りは後で返すからな」

 わたしの魔力がほんの一握りほど、クロスに渡った。

 通常は魔石一個分=1エナジーしか通さないようになっていた魔法陣を、わたしは3エナジーまで通るように書き換えていた。それの五回分が、あっという間にチャージされる。


「圧縮詠唱! 風と火の一から八を展開! 焼き尽くせ!」

 チャージ完了と同時に、クロスが魔法を放つ。

 今度は熱風を伴った軌跡を描いて、爆裂系魔法が四騎の魔装兵に向かって放たれる。風魔法と火魔法の混合だった。さらに、追い打ちのように威力を上げるバフを魔法攻撃に添加する。

 炎を風で(あお)っているから、ただの爆裂魔法の比ではない威力だ。

 えげつない(・・・・・)というより、もはや大火力すぎてオーバーキルなのでは……と思った矢先。


「駄目だ!」

 レッドが叫んで前に出た。

 同時にクロスが広範囲に魔法結界を展開する。

 わかったのは、そこまでだった。

「クロス──!? レッド!!」

 リオンが二人の名前を呼んでいた。


 一瞬、意識が飛んでいた。

 気づいたのは、衝撃で吹き飛ばされて、地面に転がって痛みを感じてからだった。

 ──と言っても、わたしは軽い打ち身と擦り傷だけだ。

 全部、クロスの魔法結界と、結界が破れた部分をレッドが補って、二人が受けて防いでくれた。わたしが自身が自分を守るために張っていた薄い魔法結界は、意識が飛んだ瞬間に消失している。


 少し離れたところにいたリオンは、クロスの魔法結界に包まれた上、自分でも防御していたから無事である。駆け寄ってわたしを助け起こしてくれた。

「アリアちゃん、大丈夫!?」

「わたしより、クロスとレッドが……」

「オレは平気」

 いち早く起き上がったレッドが言う。

「あー、でも悪ぃ。リオンの短剣、刃こぼれさせちまった」

「そんなこと、気にするな」

 リオンは短剣本体も見ずに事もなげに言った。

 わたしは軽い治癒魔法を二人に掛けて、倒れたきり動かないクロスの様子を見た。

「クロス!? 生きてる!?」

 魔法結界が破られた反動を、もろに被っているのだ。この中で最も重傷なのは間違いない。


「勝手に殺すな」

 呼びかけに応え、クロスがゆっくりと起き上がった。

 わたしより激しい吹き飛ばされ方をしたようで、酷く土埃にまみれている。

 服の埃を払いながら立ち上がったクロスの顔を見て、リオンが血相を変えた。


「クロス、落ち着け。即死魔法だけはやめてくれ。あれでも一応、国防の要だから!」

 クロスの額には大きな裂傷があって、大量の血が流れ出ていた。

 端正な顔面を伝う血を乱暴に右手で(・・・)拭って、クロスは言った。

「あいつら、ぶっ殺してやる」

 左手の篭手の隙間からは、糸のように細く血が滴っていた。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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