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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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125.トラウマとフラッシュバック①

(ど、どうしよう!?)

 わたしは内心、パニックになった。


 治癒魔法を使って治すことは簡単だけれど、それをすれば、また“自分だけ”と言って怒られる。

“自分だけ、こっそり魔力回復薬(マジックポーション)を飲んでいる”

“自分だけ魔力回復して、小さな怪我まで魔法で治療している”

“パーティーの仲間にさえ、一本も魔力回復薬を融通しようとしないケチ”

 利己的で自分勝手。

 (ひと)()がりでワガママ。


 過去に入れてもらったパーティーでは、何度もそう言って非難されてきた。

(本当は違うのに……)

 魔力回復薬は、融通してあげたくても一本も持っていなかっただけだ。

 わたしは他人(ひと)よりも大幅に魔力量が多いらしくて、魔力回復薬というものを使ったことがない。とても不味いという、その味も知らない。

 常にギリギリのお金しかなかったから、必要ないものは買わなかったし、買えなかった。


 もう少しお金に余裕があったなら、一本くらい予備を持ち歩いていたかもしれない。人にあげるためと割り切って、買っていたかもしれなかった。

 たとえ一本しか持っていなくても、最期の一本だと言って差し出せば、感謝されることはあっても、(そし)られることはなかっただろう。


 けれど、生憎とそんな余裕はなかった。

 一回のご飯代よりも高い魔法薬を、他人にあげるためだけに買えるほど、懐は暖かくなかった。むしろ、常に寒々しかった。

 

(──だって“お互い様”という理屈が成立しないのだもの)

 わたしが、仲間に魔力回復薬を譲ってほしいと頼む機会は、きっと一生訪れない。わたしの魔力が枯渇することは、中級程度の冒険者をやっている間は、ないと言い切れる。

 昔、中級者向けのダンジョンで置き去りにされ、同じような境遇の冒険者と一緒になって脱出する羽目に陥ったことがあるけれど、瀕死の状態だった彼らを全快させてからの脱出行でも、わたしの魔力はほとんど減らなかった。

 途中で生活魔法も使いまくったけれど、半分も減らなかったように記憶している。たぶん、瀕死のドラゴンを全快させるくらいの魔法を使わなければ、わたしの魔力は枯渇しない。

 だから、あげた分の魔力回復薬を誰かから返してもらえる機会は、一生ない。


 魔力回復薬を持ち歩いていないせいで、仲間に譲ってあげることができないということ──それは冒険者として生きていく上では、コミュニケーションに重大な支障をきたす。

 仲間とアイテムを貸し借りできない=譲り合いの精神を持たない、性格に問題のある人物というレッテルを貼られることになる。

 そもそも、他人に魔力回復薬を(たか)らなくて済むよう、魔力残量を自己管理しろという正当な理屈は、すでに完成されたコミュニティーの中では通用しない。

 わかってはいても、仲間が困っていたら助け合うのが当然、という風潮が当たり前のように浸透している。


 魔力回復薬の件は、パーティーに入る前にリーダーに伝えてはいるのだけれど、聞き流されてしまって取り合ってもらえないことが多かった。

 人の話を聞かない人間は、どこにでもいる。──というか、人は基本的に人の話を半分も聞いていない。

 きちんと聞いてもらえるまで真剣に伝えようとすると、今度はうるさいと言われて倦厭(けんえん)される。


 つまりパーティーで冒険者をやる限り、わたしは常に“借りパク”されたままというか、(たか)られ続けるような状態になる。

 その事実に早々に気づいてしまったから、わたしはパーティーでの冒険者活動に見切りをつけた。

 一人では、安全な採取依頼くらいしか受けられないけれど、パーティーに入れてもらうために魔力回復薬を貢ぐくらいなら、護衛になる奴隷を買ったほうが費用対効果が高い。

(冒険者パーティーなんて、一時的な関係だもの……)


 いくら仲間に貢いだところで、裏切られるときには裏切られる。

 わたしは、仲間が望む魔力回復薬を譲ってあげられない代わりに、せめてもと治癒魔法以外の支援魔法は大盤振舞いしてきた。

 そのときのパーティーの仲間たちは全員、戦闘中は最初から最後まで攻撃力と防御力を上げるバフが掛かっていたくらいだ。

 治癒魔法は、掛けすぎると敵の目を引いてしまって、陣形が崩れる。作戦を台無しにしてしまっては怒られるから、回数は掛けられなかった。

 その代わり、強めの治癒魔法でどんな怪我でも一度で完治させてきた。

 あのときの仲間で、戦闘中の傷痕が残った者は一人もいないはずだった。

(そこだけは女子に感謝されたけど……)

 

 結局のところ、冒険者が魔法使いに求めるものは、強い属性魔法であって支援魔法ではない。

 攻撃力も防御力も、鍛えてレベルが上がれば自然と付いてくるものだから、バフもデバフも気休め程度にしか思われていないのが実情だ。

 そして回復役も、いざという時には攻撃に参加してもらわなければ困る。それができない魔法使い──治癒魔法と防御結界しか使えない魔法使いでは、どこのパーティーにも長居はできない。


 パーティーの固定メンバーとして、長く居させてはもらえないのだ。

 切られるときには、真っ先に切られる。

 目立った落ち度がなくても”回復だけなら魔法薬(ポーション)で事足りるから、お前クビな”というシチュエーションはよくあった。

(その上、わたしは寄宿学校を抜け出して来ていたから、ギルドにも毎日は顔を出せなかったし、どこに住んでいるかも言えなかったから、変な奴だと思われていただろうし……)

 とにかく、冒険者仲間と上手くコミュニケーションが取れなかった。仲間の信頼を得られなかったのだ。

 ──わたしも信頼していなかったけれど。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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