第95話
今日もとある喫茶店の日常が過ぎていく。
スーツにパンツルックの女性客が会社の上司の愚痴をこぼしていた。
「石頭な人っているじゃない?」
「意志の固い人ですよね」
「そうとも言えるけど、私の意思なんかどうでもいいって感じで全然取り合ってくれないの」
「何を言っても焼石に水ですか?」
「まあね。だから、石でも食ってろ! って飛び出して来ちゃった。石の上にも三年って言うけど、あんな上司の下じゃあ転職も考えちゃうわ」
「他山の石にしないよう気をつけます」
「だけど今のプロジェクトだけは石にかじりついてもやり遂げたいの。はぁ〜、でもこれでまた婚期が遅れちゃう。やれやれだわ〜」
「仕事とプライベートは一石二鳥とは、なかなかいかないですよね」
――― カランコロン ―――
「まぁ、私みたいな路傍の石なんて誰も見向きもしないけどね」
さっき入ってきた男性客が近づいてきて、女性客の横で立ち止まると言った。
「君は石でも宝石だろ? ......さっきは悪かった。戻ってきてくれ」
それから数ヶ月後、彼女の薬指に本物の宝石が輝いていた。
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