第94話

　今日もとある喫茶店の日常が過ぎていく。

　大手メーカーの下請けをしている中小企業の社長が何故かお冷だけでくだを巻いていた。

「なぁマスターよ、カンバン方式って聞いたことあるかいな？」

「ジャストインタイムで在庫を持たない生産方式のことですよね？」

「そうや。でもな、あんなん自分らの会社のネームバリューで下請けに在庫を押しつけとるだけやで」

「まさしくカンバン方式ですね。ある意味」

「ホンマやで！　もう売れへんくなった在庫がたまってウチはもう倒産寸前や！　はぁ〜もう、お冷おかわり！」

　―――　カランコロン　―――

「あの……、そろそろ今日はカンバンさげたいのですが……」