第90話(第9章-最終話)
今日もとある喫茶店の日常が過ぎていく。
スリムなスーツを着た男性客からヨーコくんがオーダーを取ろうとしていた。
「それで良いリーダーの条件っていうのはさぁ、スピーディーに決めてくれることだと思うんだよね」
「そうですか〜。ところでオーダーはもうお決まりですかぁ?」
「うーーん、どうしようかなぁ……えーっと、じゃあ〜やっぱり紅茶で。あとは、部下のアドバイスにきちんと耳を傾け、決めたことをコロコロ変えたりしないってことなんだよ」
「かしこまりました〜。それでレモンとミルクはどちらになさいますか?」
「アッサムティーはある?」
「ございますよ〜。ミルクと合わせるのがお勧めですね」
「やっぱりカフェオレにするよ。とはいえ、良いリーダーは、自分が間違ったときは素直に非を認めて速やかに誤りを正すよね。下手に誤魔化したりしないで」
「え〜と……カフェオレはホットでよろしかったでしょうか?」
「あれ? さっき言わなかったっけ?」
「いいえ。伺っておりませんが」
「えーっ? そんなことないと思うけどなぁ」
「いえいえ。仮にもし言っておられたとしてもアッサムからコーヒーに変わった時点で聞き直しになりますよ」
「それっ! さっき『あーさむっ!』って言ったんだから当然ホットでしょ? 何だよ、も〜しっかりしてくれよ〜」
「マスター! ホットカフェオレひとつです」
――― カランコロン ―――
「お客さん、良いリーダーの条件はもう一つありますよ」
「うん? 何かな?」
「仲間を守ることです。どうぞお引き取りください」
ご来店いただき有難うございました。
次章でまたのお越しをお待ちしております。




